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医療再生 脱「医療の商品化・患者の消費者化」

現代農業2008年8月増刊

【編集後記】

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 農文協は、医食農想(想は思想・教育・文化・伝承)の四領域をおもな活動領域としている。この四領域は、市場原理に支配されてはならない社会的共通資本=生存財であり、この四領域から、農家・農村に学んだ「自給と相互扶助の思想」で自然と人間が調和する社会をめざして活動をすすめてきた。

 ところがいま、この四領域において「医療崩壊」「食の崩壊」「農の崩壊」「思想・教育の崩壊」というべき現象が起きている。その崩壊をもたらした原因は、それらが商品化=市場財化され、利用する一人ひとりが、たとえばモンスターペアレント、モンスターペイシェント、モンスターファミリーの言葉に象徴されるように、一方向的な「消費者」と化してしまったことにある。だが崩壊のより大きな原因であるグローバリズム・新自由主義の信奉者たちは、それに対して、市場原理のさらなる導入=さらなる商品化・消費者化が解決策であるかのように主張する。

 だがこうした「崩壊」現象は、社会的共通資本=生存財を利用する一人ひとりが、消費者ではなく「当事者」として問題を根本からとらえ直すチャンスでもある。「県立柏原病院小児科を守る会」による「コンビニ受診を控えよう」などのキャッチフレーズは、消費者から当事者への自己変革を象徴しているのではないだろうか。同様に、この4月からの「後期高齢者医療制度」によって、国民皆保険の意義を当事者としてとらえ直す人びとが増えている。また後期高齢者医療制度への拠出金と連動する特定健診・特定保健指導の問題からも、食をはじめとする生活習慣を当事者としてとらえ直す人びとが増えるだろう。「医は食に、食は農に、農は土(自然)に学べ」は熊本県菊池市の公立菊地養生園診療所・竹熊宜孝名誉園長の言葉だが、農文協も、医食農想の再生は、地域の医食農想が連携し、地域の自然・歴史などの個性に根ざした社会的共通資本としての医食農想の地域資源を生かしつつ、医食農想を市場化・営利化しようとする勢力とたたかうことから始まると考えている。

(甲斐良治)

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