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農文協増刊現代農業>金融危機を希望に転じる_編集後記

金融危機を希望に転じる ローカルの力で食料・雇用・家族の安心を自給

現代農業2009年2月増刊

【目次】

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●「一〇〇年に一度」の危機という。ならば一〇〇年単位で物事をとらえ直したらどうだろう。ちょうど一〇〇年前の一九〇九年に日本、朝鮮、中国の農村を旅した米国人土壌物理学者のF・H・キングは自国の文明をふり返り、『東亜四千年の農民』に「人間は、この世の中で最も法外な浪費の促進者である。人間は、その及ぶ限りの、あらゆる生物の上に破壊作用を振るい、人間自身もまたその災厄を免れまい」と記している(二二八頁)。この警告が生かされていれば、浪費大国米国の破綻はなかったのではないか。

 本誌はこれまでも農山村の祖父母世代の自給と相互扶助、そして持続的な暮らしの技と知恵に学んで循環型社会を切り開きつつある若者たちを紹介してきたが、来る二月二十八日、東京・明治大学にそんな若者や自治体関係者らが集まり、「若手集落支援員全国交流集会――若者が集落の元気をつくる」が開催される(主催・中山間地域フォーラム)。危機を打開するのは農山村に向かった若者たちと、彼らに知恵と技を伝えるローカルの人びとだ。(甲斐良治)

●九〇年代末に「パラサイト・シングル」という言葉が流行した。この言葉はわれわれオヤジ世代が「最近の若いもんはいい年をして、結婚もせず、定職にも就かず、親にたかってだらしがない」と居酒屋でクダを巻くときに好都合だった。そのころ宮本みち子さんは、「若者たたき」の風潮を危惧し、彼らが、恵まれた時代の「独身貴族」とはまったくちがって、九〇年代後半以降の雇用構造の転換=非正規雇用の拡大の影響を真っ先に受けた社会的弱者であると指摘していた(五八頁)。

 それから約一〇年、金融危機によってわれわれは、経済と生活スタイルのアメリカ化が暮らしのあらゆる局面からどれだけ「安心」を奪ったかを思い知らされた。いまになってはじめて、社会的弱者である若者のローカルな取り組みのなかに希望の光があることに気づかされるのである。(阿部道彦)

●巻頭カラーを利用した新しい試み、「危機を読み解く二〇のデータ」(二八頁)。わかりやすいデータが一連の危機について考え、他の記事を読むときの参考になれば幸いです。

 危機は新たな局面に移行し、内定取り消し、非正規雇用の首切り、町工場の休業、畜産農家の廃業など、社会への影響は深刻化しています。アメリカ依存の経済構造が傷を深くしています。

 私も就職氷河期世代。今またこの不況下で、まっとうな生き方を模索する若者がたくさんいると感じます。国家も企業もあてにならないと、新しい生き方を始める人も必ず出てくると。

 健康の罠(一二四頁)にもあるように、あてにしていると生存が脅かされる例もあります。それなら自分たちでつくろう。自給の提案の数々から、若者や多くの人に少しでも希望を感じていただけたらと思います。(馬場裕一)  

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