現代農業 特別号
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パート2

栄養に富むインディオたちの秘宝

●岩手県経済連農産技術課 古沢典夫

原題「雑穀・豆健康食 インディオたちの秘宝キノア」1989年3月号214〜215頁

アカザのそっくりさん

右上:果実断面
右中:種子 右下:でんぷん粒
(「食用作物」星川清親による)

 畑にキノアを播いておいたところ、雑草のアカザが残され、キノアが抜き捨てられていた……。その失敗、農業試験場の専門家がやったというから面白い。それほどまでに、この作物はアカザに瓜二つである。

 アカザ科には、ホウレンソウ、オカヒジキ、マツナ類などの葉菜があるが、雑穀としてのキノアは珍らしい。もっとも、子実を食べるアカザ科の作物としてはほかにホウキギ(地膚)があり、多少はコアカザに似ている。

 ホウキギは、若葉は葉菜となり、子実は秋田県ではトンブリとか、魚卵に似た食味からグリーン・キャビアなどとも愛称されている。

 キノアの子実もアマランサス(仙人穀)と同様に輸入されていて、東京などでは市販されている。やはり全くの無農薬栽培で、アトピー性の小児病などに有効とされているようである。

 寒冷、干ばつ、極端な痩せ地への適応性が高くて作りやすいうえに、栄養に富むことから、人口の急激な増加のなかで、人類の未来を救う可能性がある有望作物として期待されているように思われる。

イモ類を補う高タンパク

 キノアは、コロンブスの新発見以前からインディオたちによって開発されていた作物で、ペルーやボリビアでは現在、各2万haほど栽培されているという。標高3000m以上になるともうトウモロコシは無理で、ジャガイモなどイモ類が主食となるが、これだけではでんぷん食に偏ってしまう。これを補うのにキノアの存在価値があるのであろう。

 キノアのタンパク質はアマランサス並みの14〜15%と極めて多く、脂肪4%、炭水化物51〜58%と栄養に富んでいる。

表 キノアの調理・加工食品への利用法キノアの特性と栽培法

 キノアの反収は50〜80kgだが、300kgの多収例もあるという。条播での播種量は反当200gほど。1000粒重は2〜4gくらい、径は2〜3mmで、アカザよりは大粒、偏円形である。

 青森県畑作園試の成績によると、5月7日播きで発芽は同13日、開花は8月1日で成熟期は9月27日。草丈は1mを超え、分枝数は42本ほど、57kgの収量だったという。もっとも、バラバラな個体で成熟期が揃わず低収だったとしており、このキノアは花穂、茎葉、子実とも色も豊かで、紫から緑白まで、ずい分と不揃いなのが一般的なのである。

 筆者の栽培経験ではアブラムシ以外は無防除でよく、薬害に弱い傾向がある。ただし、成熟期以後はスズメの害を受けるといわれる。

 霜には弱く、倒伏しやすいので培土を要しよう。枝はやや裂け易い。成熟期以後は長雨による穂発芽も生ずるという。

 一つの目安として青森県畑作園試の栽培法を紹介すると、うね幅70cm、株間10cm、施肥量はチッソ3、リン酸4.5、カリ2(各10a当たり成分kg)としている。

食べかたにはひと工夫

 栄養に富む穀物であり、製粉してパンやビスケットにし、あるいは粒のままスープ(かゆ)にして食べられる。

 問題は苦い成分を含んでいることだが、これはサポニンであるとされている。アルカリ水で繰り返し洗うことで除去される。ときには粉末を使うこともあるという。

 食べかたについてはアマランサスよりも工夫を要するようで、つくるのも最初から量産でなく、試作段階から手をつけるほうが無難のように思われる。



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