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パート3

菌の入手から完成まで、納豆つくり指南

●編集部

原題「納豆つくり指南」1996年12月号69〜71頁

納豆菌の取り込み方、育て方

納豆を上手につくるポイント 納豆を上手につくるには、やわらかく煮た大豆に納豆菌をつけて、納豆菌が増殖しやすいよう40くらいに保温することが大切だ。

 大豆に納豆菌を付着させる方法は、おおよそ次の3つ。

 (1)イナワラを利用する方法

 (2)市販の納豆を利用する方法

 (3)納豆菌を利用する方法

 茨城県下館市の菊池よしえさんのやり方は、(1)のイナワラの納豆菌を取り込むベテラン向きの方法。保温には、イネの育苗器を利用しているから、納豆菌が繁殖しやすい温度条件をつくるのは比較的容易かもしれない。

 問題は納豆菌の取り込みだ。菊池さんは、外側のワラからだけでなく、つとの中に「仲人ワラ」を差すことで、納豆菌を外と内から取り込んでいる。つとの中の大豆へ、空気と納豆菌(仲人ワラについているもの)を取り込んで、大きなワラつとでも、中までしっかりと納豆菌を増殖させることができているのだろう。

 保温する器具として、納豆専用の恒温器も市販されている。例えば、「納豆名人」。生大豆1升分からできる納豆が一度につくれる。

市販の納豆に煮た大豆を混ぜる

 福岡県浮羽町の野上ヒサ子さんのやり方は、(2)の方法。市販の納豆をタネ菌として、煮た大豆に混ぜて納豆をつくる。

 納豆菌の入手法としてはいちばん手軽だが、保温は籾殻の山の中で行なうから、温度管理はけっこう技術と経験がいる。野上さんは、上にかける籾殻の厚さで温度を調節、納豆菌が増殖しやすいようにしている。

 (3)の方法は、市販されている納豆菌(粉末)を使う方法で、菌が全体にまわるので、その点ではいちばん失敗が少ない。

 納豆菌の入手法は、(株)成瀬発酵化学研究所で市販している。4gの粉末で納豆屋さんでは納豆六〇kgができるとのこと。

保温の仕方にこんな苦心

 納豆菌の繁殖適温は40〜45度ほどである。保温器具がない昔は、この温度を保つために農家の主婦は苦心してきた。

 例えば岩手県では雪納豆といって、「つとに入れたものを、ワラむしろにくるんでねかせるのだが、まず、雪を1尺ぐらい、厚くきっちりと踏み固め、つとをむしろにくるんで両端をしばり、雪を固めた上に置き、その上に雪をかぶせてきっちり固めていく。このとき、むしろのまん中に棒をさしておくが、この棒は、毎日降り積む雪の中で納豆のありかを示す目印となるばかりでなく、そろそろできたかなというころ、この棒を抜いて、細い穴から立ちのぼる匂いをかいでみるのである」といった雪の保温力を利用した方法がある。

 宮城県では土納豆といって「畑のすみに穴を掘り、稲束を焚いて土を温めてから、ワラを敷いて、つとをねかせ、またワラをかけて、土をかける。土の上からこもをかけて2日間ねかせ、夕方ごろ様子をみる。糸引きがまだなら、もう1日おく」という方法をとっていたところもある。この場合、同じ場所を何度も使うことはしなかった。

 以上の他にも、堆肥熱やこたつ、湯などを使って、さまざまな保温の工夫がなされてきた。

糸が引かない場合どうする?

 もっとも、保温に十分注意しても、失敗して糸が引かない納豆ができることがある。そんなときは加工して別のものに変えて、利用することができる。

 山形県では塩辛納豆といって、「失敗して糸を引かないときは、塩納豆にする。3升の納豆にこうじ1升、塩3合ほどを混ぜて、かめに入れてわかす(発酵させる)。これは農時のお菜に」していた。

 この他にも、こうじと塩、醤油などを納豆と合わせて発酵させて、保存食などにすることもできる。

小粒大豆がなくてもひき割り納豆がある

 さて、福岡の野上さんも言っているのだけれど、小粒の大豆のほうが納豆はおいしくできる。

 というのは、納豆菌は大豆の表面から中心部に向かって繁殖するので、小粒のほうが熟成が進み、味もよくなるのだ。

 小粒品種は各地で育成されているので、入手には農協、普及所に相談してほしい。入手できない場合は、国産大豆(タンパクと糖が多いので納豆向き)を使って、ひき割り納豆という手がある。

 ひき割り納豆は、「炒りなべで豆粒に横にひびが入るように炒ると、香ばしい味になる。次に、炒り豆を石の粉ひき臼でひき割る。それから水洗いして、豆がやわらかくなるまで4時間も煮る。(中略)ひき割ってあるためによく糸を引き、やわらかでねばりが強い。そのうえ、独特の香ばしさがあって、納豆の横綱級である」と『秋田の食事』にはある。

 ひき臼がなければ、箕やざるの中に炒った大豆を入れ、升の底でゴリゴリこすって、割ってやればいい。だいたい1粒が3〜4個のかけらになるように割ってやる。大豆の肉質が納豆菌は好きなので、熟成した横綱級のおいしい納豆ができるかもしれない。

(本文中の「 」の中は『日本の食生活全集』の各県版からの引用です。)

カコミ記事 菊池よしえさんのドでかい「つとっこ納豆」つくり

菊池よしえさんのつとっこは、イナワラの長さがほとんどそのまま生かされてるから、すごく大きい...

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