現代農業 特別号
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別冊現代農業 2009年7月号
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農家直伝 豆をトコトン楽しむ─食べ方・加工から育て方まで

B5版 198ページ 定価1200円

 豆はコメや麦と並んで、世界で最も古い作物の一つ。色も形もさまざまな地豆は直売所でも人気を呼んでいます。本書では、伝統的な豆の加工法、例えば「味噌玉製法」、「八丁味噌」、「白山の堅豆腐」、「たまり醤油」、「雪納豆」、「塩納豆」、テンペ、湯葉などの加工法を詳述。もちろん、ご飯にあう「おかず味噌」や手作り加工法、さらには豆の育て方から食べ方まで、農家とこだわり加工業者の技を結集しました。あんの上手な煮方の原理も魅力的です。
 取り上げた豆の種類は大豆、黒大豆、小豆、ササゲ、エンドウ、ソラマメ、ラッカセイ、ナタマメ、フジマメ、ライマメなど。

はじめに目次編集後記購入する

別冊現代農業2009年7月号

はじめに

 豆は、麦や稲と並んで、最も古い作物の一つだ。豆は根粒菌と共生して空中窒素を固定するので、窒素の少ない土壌でも育ち、麦や稲と輪作することで地力を維持することができる。日本列島でもきわめて古い時代から豆が利用され、近年の研究では、在来種の黒大豆や小豆の原産地は日本列島という説が有力である。味噌、醤油、納豆、豆腐など、豆が日本人の食生活に重要な食材であることはいうまでもない。

 ところで、現在、世界の大豆生産量は年間約二億トンで、生産量が多い国は、アメリカ、ブラジル、アルゼンチン、中国の順である。アメリカやブラジルで生産されている大豆の多くは、油脂に利用され、搾り粕の「大豆ミール」は、家畜の飼料にされる。BSEの発生によって肉骨粉を家畜に与えることができなくなったため、大豆ミールの需要が高まり、世界の大豆生産量は年々増加している。

 日本の年間の大豆消費量はおよそ五三〇万トンで、六割以上はアメリカ産である。国産大豆の生産量は約二〇万トンで、自給率はわずか四%である。大豆は日本人にとっては主食の一つであり、小豆も行事食や菓子作りには欠かせない。いくら自給率が低くても、大豆や小豆が、日本人にとってきわめて大切な作物であることには変わりはない。

 本誌では、大豆をはじめ、小豆、エンドウ、インゲンなど、豆の食べ方や栽培についての知恵や工夫を収集しました。


小正月の小豆がい
 一月十五日は小正月。前日むら(集落)で神さんのしめ飾りを燃すとんど(どんど焼き)があり、その火種をとって帰って小豆がい(小豆がゆ)を炊く。小豆がいは、かやでつくったはしを使って食べることになっているが、長くて食べにくいので、一口だけ食べるまねをして、実際にはふつうのはしで食べる。ひるまには、病気にならないといって油揚げ飯や揚げのおかずを食べる。添えてあるかやのはしは、四月の御田祭のとき、杉の葉とともに水口に立てて豊作を祈る。吉野郡吉野町 (『聞き書 奈良の食事』より、 撮影 小倉隆人)


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「田舎の本屋さん」のおすすめ本

 農家直伝豆をトコトン楽しむ

豆はコメや麦と並んで,世界で最も古い作物の一つ。直売所でも大人気のいろいろな豆の育て方から,味噌・醤油・納豆・テンペ・豆腐・湯葉などの加工の技,さらには食べ方まで詳述。 [本を詳しく見る]

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別冊現代農業 2009年7月号
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農家直伝 豆をトコトン楽しむ─食べ方・加工から育て方まで

目次

〈カラーページ〉

在来種の豆を作る 佐藤禮子さんの豆料理/レストランの豆料理
福島県北塩原村から(撮影 倉持正実)

大豆栽培のこつ 新潟県・遠山恵美子さん

味噌作り 『聞き書 愛知の食事』より(撮影 千葉寛・赤松富仁)

醤油作り 『聞き書 群馬の食事』より(撮影 小倉隆人)

雪納豆作り 『聞き書 岩手の食事』より(撮影 千葉 寛)

塩納豆作り 『聞き書 高知の食事』より(撮影 千葉 寛)

豆腐作り 『聞き書 山梨の食事』より(撮影 小倉隆人)

日本列島の食と大豆 日本の食生活全集より

ずんた汁・ねぼこ・豆腐のでんがく(青森)/豆しとぎ(岩手)/醤油もろみ・納豆づくり(宮城)/豆こづき・みょうがのぬたあえ・納豆漬・豆の保存漬(山形)/しみつかれ・とき納豆・豆料理のいろいろ(栃木)/干し納豆(茨城)/とうぞう(千葉)/堅豆腐(石川)/豆板・豆腐のぼっかけ(福井)/凍み豆腐(長野)/打豆・煮豆(滋賀)/豆腐の笹焼き・ゆず味噌(島根)/ぬたあえ(兵庫)/うちご(鳥取)/うちご汁・呉汁・ひしお(岡山)/うちごだんご(広島)/冷や汁(愛媛)/豆腐八杯(徳島)/金銀豆腐・すぼ豆腐(山口)/干しこる豆(熊本)/つし味噌(高知)/豆腐の料理・豆腐のからす(沖縄)

Part1 豆の食べ方

【図解】ヨーグルトと味噌の健康漬け 竹永幸子(え 近藤 泉)

【図解】コールラビの味噌・粕漬け 高森 勍(え 近藤 泉)

味噌玉製法 伝統的製法による味噌作り 唐沢尚之

米味噌 風味づけに種味噌も活用 小清水正美

八丁味噌 豆麹で仕込み、二夏二冬熟成させる 浅井信太郎

手作り米味噌 石野十郎

塩分2% 低塩味噌の作り方 太養寺真弓

熟成が進んだ味噌は、変わり味噌に 野口忠司

農家レストランで好評な変わり味噌 今田みち子

ご飯に合う「おかず味噌」 竹永幸子

たまり醤油の醸造法 井上 昂

手作り醤油 石野十郎

毎日かき回して一年半、べっこう色の醤油ができる 佐賀県・森田キトさん

【図解】納豆のべっこう漬け 中島民子(え 近藤 泉)

手作りの発酵槽で納豆を作る 新潟県・斎藤剛さん 満子さん

〈かこみ〉プロの納豆屋さんに聞いた納豆の作り方 協力 長野市・村田商店

〈かこみ〉世界の豆料理と加工

テンペの作り方 小清水正美

湯葉の作り方 松永 隆

【図解】豆腐のもろみ漬け 藤崎誠子(え 近藤 泉)

白山の堅豆腐 川嶋正男(羽二重豆腐株式会社)

生搾りで作る堅豆腐 石川県・上野 太(上野とうふ店)

失敗しない豆腐作り 豆乳とニガリの濃度 山形市・仁藤 齊さん(仁藤商店)

じっくり煮た呉で作る木綿豆腐 鎌田重昭(奈良屋本舗)

米ぬか栽培大豆で、美味しい豆腐 秋田県・(有)エスエスフーズさん

もやしにはまってます 奥薗壽子

あんの作り方 早川幸男

とっておき 僧堂の大豆料理をお教えしよう 藤井宗哲(不識庵)

「顆粒大豆」にして、いろんな料理と組み合わせる! 國分喜恵子

Part2 豆の栽培法

おばけ枝豆栽培のコツ 新潟県・遠山恵美子さん

根粒菌「まめぞう」で大豆増収 宮城県・品川忠夫さん

黒大豆の簡単豊作栽培法 赤木歳通

大豆 うね間灌水と追肥流し込みで安定三〇〇kgどり 長野県・大沼昌弘さん

〈かこみ〉刈り払い機で枝豆摘心 菅野美紀夫

大豆の起源と栽培のポイント

ダイズの安定多収栽培技術 有原丈二

ダイズ 二つの問題点をクリアした二つの方法 深層施肥と根粒菌接種
大山卓爾 ティワリカウサル 高橋能彦

ダイズの根粒菌接種 中野 寛

加工から見た大豆品種選び 喜多村啓介

アズキの起源と栽培

行事食と結びついたアズキ栽培 岩手県・松村チヨさん 藤村 忠

ササゲの起源と栽培 成河智明

エンドウの起源と栽培

エンドウの開花促進処理 藤岡唯志

エンドウ 疎植、深層施肥、根粒菌接種で反収二五〇〇キロ
鹿児島県・藤園健一さん 久留須清孝

ソラマメの起源と栽培

主要品種と作型 中島 純

催芽、播種、育苗、定植 三角洋造

摘花・摘莢 大江正和

摘心 大江正和

ソラマメ 一節一莢で良品多収 鹿児島県・山崎克大さん 厚ヶ瀬英俊

〈かこみ〉ソラマメの三本仕立て 赤木歳通

インゲンの起源と生理 鈴木芳夫

インゲン 緑肥、被覆、緩効性肥料で反収四〇〇〇キロ
福島県・長峯主昭さん 佐藤睦人

ラッカセイの起源と栽培

栽培の実際 高橋芳雄

茹でておいしい ジャンボラッカセイ 古谷政江

ベニバナインゲンの起源と栽培 有馬 博

〈かこみ〉花豆の甘納豆 南本とみ子

ナタマメの利用と栽培 村上光太郎

ライマメの起源と栽培 村松安男

フジマメの起源と栽培 成河智明


あっちの話 こっちの話

味噌のカビをワサビで予防/焼酎で手作り味噌はカビ知らず

味噌作りの秘訣は塩の重石/塩分をなるべく使わず味噌のカビを防ぐ法

魔法びんで豆を煮る方法/インゲンの葉っぱで、おむすびが美味しく変身

南部藩には六〇種以上の大豆品種があった/しっかり糸のひく納豆は電気毛布でできる

豆腐作りの消泡剤に米ぬかを使う/花豆はヘソを下にして植えるといいんだよ

ナメクジはソラマメの莢が大好き/メロンハウスのソラマメはおとりだった


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編集後記

◆大豆を毎日のように食べる日本人にとっては、大豆は血肉であり文化でもある。一方、欧米人にとっては、大豆は安価な油脂原料であり、家畜の飼料である。日本人が米と大豆に敏感であるのと同様に、欧米人は小麦と牛乳に敏感である。

 以前、遺伝子組み換え大豆に反対するアメリカの大豆農家(ノースダコタ州・ネルソン農場)を訪ねたことがある。経営面積は三六〇〇haで、家族農場としては大きな農場だ。冬が厳しいため一毛作で、春小麦、大豆、ビートを年ごとに輪作している。春小麦には窒素肥料のみを施し、翌年の大豆は無肥料で栽培する。それでも、大豆の収量は反当三〇〇kgを超える。世界で最も肥沃な土壌の一つとされるプレーリー土は、そのくらい土が肥えている。

 栽培している大豆の種は、日本の商社を通じて入手した日本の大豆品種だ。そして生産した大豆は、日本の商社を通じて日本に輸出されている。言うなれば、我々日本人の身体の一部は、プレーリー土に堆積した燐やミネラルからできている。

 我々は、自国の農業のみならず、他国の農業の現状にも無関心ではいられない時代に生きている。(本田進一郎)

◆直売所を訪れると、その土地に作り続けられてきた、名前も大きさも色も形もとりどりのいろんな豆に出会えるようになってきた。そんな豆たちに目をグーッと近づけると、彼らの色や形が自分の生い立ちを語りかけてくるようで楽しい。さらに、地域の豆を味噌や納豆、醤油、豆腐などさまざまな食品に加工し、保存食として、また日常の食材として食べ続けてきた豆たちの世界をお届けしたいと願って本書のテーマとした。

 巷に豆料理の本は溢れている。健康食として豆料理をアピールした本、美しい写真を駆使した洒落た本…しかし、この本は、先人たちが創りあげてきた加工の知恵をできるだけ緻密に、またその知恵に見事な科学が活かされている技にこだわった。

 また、直売所で売られている地豆は、まけば立派に発芽してくる。在来種なら自由に育ちから楽しむことができる。そんな楽しみもお伝えしたくて、本書では土の中で豆を支えてくれる根粒菌に注目して、豆の力を十分にいかした育て方にも頁を割いた。

 豆の楽しみは本当に奥が深い。ぜひ、直売所の豆に目をこらし、自分で育てる楽しみも加えて加工や料理を楽しみたい。それが日本の豆を豊かに守っていく道の一つだと思います。(西森信博)

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

 農家直伝豆をトコトン楽しむ

豆はコメや麦と並んで,世界で最も古い作物の一つ。直売所でも大人気のいろいろな豆の育て方から,味噌・醤油・納豆・テンペ・豆腐・湯葉などの加工の技,さらには食べ方まで詳述。 [本を詳しく見る]

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