現代農業 特別号
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別冊現代農業 2010年1月号
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農家が教える わが家の農産加工

B5版 196ページ 定価1200円

 ハム・ソーセージ,くん製,干物,もち,ケチャップ,ジャム,ジュース,梅干しほか

 これまで安くて美味しいと思わされてきた市販の加工品・・・でも,安全・安心に赤ランプ点灯! それだけではありません。おいしいと思ってきた味も,ちょっと待てよ? 素材の味よりも調味料などの味に慣れさせられてきたのではないか?
 今月号のテーマは,畜肉・魚肉の加工,油脂,ジュース,ジャム,菓子類などを中心に,素材の味を生かす,本当においしくて安全で安く楽しむ農家の手作り加工の技。子どもたちと一緒に楽しむ,アウトドア調理のヒントもいっぱいです。
 既刊別冊『加工・保存・貯蔵の知恵』『発酵食の知恵』の姉妹編として,ぜひ一冊!

はじめに目次編集後記購入する

別冊現代農業2010年1月号

はじめに

 今から50年ほど前は、子どもたちのごちそうといえば、ぼたもち、団子、羊羹、おやき、あんこもち、はったい粉など、祖母や母の手作りのおやつであった。おやつだけでなく、味噌、醤油、餅、漬物、干物、梅干など、ほとんどの加工品が、家庭で手作りされていた。
 それらは、忙しい農作業の合間や夜なべ仕事で作られたもので、素朴な味の食べ物であった。そのため、家庭で手作りされた加工品よりも、専門の業者が手間をかけて作り、商品として売られている加工品のほうがはるかに上等とされていたし、実際に美味であった。
 高度経済成長が始まると、家庭で加工食品を作る人はほとんどいなくなり、スーパーマーケットに大量の食料品が並ぶようになった。女性たちは、夜なべをする必要も無くなり、これを時代の進歩というのであろう。

 しかしながら、現在では、「上等」であったはずの、商品として売られている食品に対する信頼が、大きく揺らいでいる。賞味期限の偽装表示や、禁止されている原料の不正使用などが相次いだことが大きな原因であるが、実際にスーパーに並ぶ量産品を食べてみても、あまりおいしくない。さらに、加工食品のみならず、加工品の原料となり農産物自体も、昔の米や野菜ほどおいしくない。
 食品の品質や信頼が低下した背景には、市場での激しい競争がある。市場が成熟して需給量が拮抗してくると、類似商品との激しい価格競争が始まる、食料品というのは、昔から人が食べてきたものを基本としているので、パソコンや携帯電話など工業製品の市場のように、まったく新しい需要を生み出すことは用意ではない。
 商品価値が恒常的に低く抑えられるので、食品企業の経営者たちは、利潤を確保するために、生産コストの削減に向かわざるを得ない。すなわち、製造コストの削減と、原材料である農産物の価格低下が、生産現場に強く要求されるようになる。「安かろう悪かろう」の商品ばかりになってしまうわけだ。

 量産品に飽き足らない人々の多くは、オーガニック食品や有名店の銘柄商品を買い求めている。腕を磨いた職人が、厳選した素材を使い、手間をかけて作った加工品は確かに美味であるが、当然、価格も高い。一般の庶民が、ごまかしがない本物の加工品を、手ごろな値段で手に入れるには、自分で作るしかない。今日では、パン、ケーキ、燻製、味噌などを自分で手作りすることが見直され、さらに、菜園を借りたりベランダにコンテナを並べたりして、自分で野菜や果樹を栽培することが盛んになっている。
 本誌では、素材の味の薄さをごまかすような製造技術ではなくて、おいしい素材を使い、その素材の味や風味を活かすような、農産加工の知恵や技を収集しました。


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「田舎の本屋さん」のおすすめ本

 農家が教える わが家の農産加工

素材の味をごまかさず、その味その風味をいかす農産加工の知恵とワザを満載! 畜肉・魚肉の燻製や干物、米の加工(餅・米粉)、搾油、ジャム、ポテトチップス、さらには柿渋づくりの実際まで幅広く、多彩に収めた。 [本を詳しく見る]

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別冊現代農業 2010年1月号
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農家が教える わが家の農産加工

目次

〈カラー口絵〉

ソーセージ・ベーコン作り 新潟県荒川町 佐藤タヘさんら畜産農家

ハム作り/ソーセージ作り 協力・ミートパラダイスとんとん広場、南アルプスふるさと活性化財団、下妻の食と農を考える女性の会 撮影・小倉隆人

魚の保存食『聞き書 日本の食生活全集』より

アタッ(干し鮭)・鮭の開きの焼干し・やまべといわなの焼干し(『アイヌの食事』、撮影・中川潤)/かつお節(『栃木の食事』、撮影・千葉寛)/あさりの目刺し干し(『千葉の食事』、撮影・小倉隆人)/あゆの焼干し(『宮城の食事』、撮影・千葉寛)/いわしの塩辛(『熊本の食事』、撮影・千葉寛)/かつおのだぶ漬(『宮城の食事』、撮影・千葉寛)/いわしのおから漬(『愛知の食事』、撮影・赤松富仁)/あゆのなれずし(『鳥取の食事』、撮影・小倉隆人)/くさりずし(『千葉の食事』、撮影・千葉寛)/いかの赤づくり・黒づくり(『富山の食事』、撮影・千葉寛)

梅の活用法 和歌山県みなべ町 梅研究会 撮影・松村昭宏

青梅醤油/ハニーブラム/青梅味噌/梅びしお/生のまま冷凍保存/梅を使った調理の数々

桃のアイスクリーム 静岡県掛川市 金原ようこさん 撮影・小倉隆人

いちごのアイスクリーム 静岡県掛川市 金原ようこさん 撮影・小倉隆人

メロンのアイスクリーム 島根県出雲市 三浦美代子さん 撮影・小倉かよ

農家が作るトマトジュース 北海道北村 廣川丈夫さん・秀子さん 撮影・小倉かよ

町の搾油所 あぶら工房共同製油(福島県浅川町)撮影・倉持正実

ニホングリの焼き栗加工 兵庫県 小仲教示さん 撮影・赤松富仁

はじめに

PART1 肉、魚

ベーコン、ソーセージは、自分で作るに限る 新潟県 佐藤タヘさん・宮下綾子さん・佐藤キノさん

燻製・スモークの方法 太田静行

【かこみ】一斗缶スモーカー 長野県 服部正利さん

簡単手作りソーセージ 瀧田勉さん

燻製作りの基本技術 佐多正行、矢住ハツノ

魚の扱い方 佐多正行、矢住ハツノ

魚の干物の作り方 川崎賢一

スモークサーモン 二村明

PART2 穀物、油脂

冷めても硬くならない持ちの搗き方 川村恵子

五平餅もち、たんぽ 『聞き書 日本の食生活全集』より

米粉 町田榮一

あんの作り方 早川幸男

小豆羹 絵と文 もとくにこ

菓子作り 早川幸男

コクと風味が違う、自家製菜種油 青森県 沖津俊栄さん

椿油は万能油 長田勝也

アケビ油、70年ぶりに復活 高橋新子

グレープシードオイルを絞ってみた 鹿児島県 神之田益一さん

超人気! エゴマ 広島県 福富物産しゃくなげ館

植物油の搾油と生成について 鈴木修武さん

廃天ぷら油からディーゼル燃料 秦秀治さん

【かこみ】手作り搾油機/手作りろ過装置 福島県 渡辺一久さん/青森県 沖津俊栄さん

PART3 果樹

青みかんジュース 村上浮子

さわやかな香りの摘果みかんジュース 小清水正美

りんごジュース作り 小池手作り農産加工所 小池芳子さん/本田耕二

未熟果実でりんごジュース 城田安幸

【かこみ】りんご品種の加工特性 田中敬一

河内晩柑のゼリーが大好評 ななみかん園 川田洋子

【かこみ】ゼリーの作り方 小池芳子

素材の香りと色を活かしたイチゴジャム 小清水正美

自家栽培した果実で手作りジャム 神奈川県 井上節子さん(ふるうつらんど井上)

ジャム作りんお原理と加工方法 津久井亜紀夫

減塩梅干し 前年の梅酢で下漬け 西村自然農園 西村文子

カリカリ梅漬の作り方 小清水正美

失敗しない梅ジャムの作り方 小清水正美

【かこみ】ペクチンテストのやり方 梅味噌ドレッシング 長野県 小池芳子さん

梅の種取り機、シソもみ機 永石さと子

ニホングリで焼き栗に挑戦 長野県 小仲教示さん

【かこみ】家庭で焼き栗を作る方法 菜園の果実を冷凍保存して、アイスやジャー別途に 金原ようこ

〈産地農家の食卓レシピ〉果樹

りんごおこわ 武田安藝

熟下記のはったい粉混ぜ 福元千鶴

柿渋の作り方、染め方 萩原さとみ

【かこみ】米袋のむら染め

PART4 野菜、山菜、きのこ、海草

【図解】大根のべったら漬 八木公子/竹田京一(絵)

トマトケチャップ 小池手作り農産加工所 小池芳子さん/本田耕二(文)

トマトジュース 小池手作り農産加工所 小池芳子さん/本田耕二(文)

メキャベツのピクルス 小清水正美

【図解】きゅうりのピクルス 生活環境教育研究会

のらぼう菜の浅漬 小清水正美

阿蘇たかな漬 阿蘇丸漬本舗 徳丸和也さん/堤えみ(文)

【図解】ポテトチップス 生活環境教育研究会

〈産地農家の食卓レシピ〉野菜

ナスそうめん(福岡県)/キムチオクラ、たたきオクラ(秋田県 東海林聡)/里芋のオランダ煮(富山県・嶋晴美)/そばポテくん(鹿児島県・中久保要滸)/ゴーヤー唐揚げ(福島県・加藤勝子)/メロンのアイスクリーム(島根県・三浦美代子)/じゃがいももち(長野県・沢木三千代)

漬け物作りの基本 岩代由子

〈産地農家の食卓レシピ〉山菜

菜花とぜんまいのナムル(千葉県・斎藤恵里子)/簡単メンマ(青森県・仲野ハナ)

山菜の下処理の方法 佐竹秀雄、矢住ハツノ、山田安子、岩城由子

たけのこの水煮 小池手作り農産加工所 小池芳子さん

きのこの保存法 佐竹秀男、矢住ハツノ、山田安子、岩代由子

ところてん 海草の加工法 佐多正行、矢住ハツノ

あっちの話こっちの話

味噌味の塩でおいしい浅漬け/おやつにピッタリ素朴なおいしさ「けいもち」/ねぎ坊主の酢味噌あえ

やかんで石焼き芋/サクサクおいしい長芋の中華風漬け

たった2分でうまみ凝縮トウモロコシ/玄米のおいしい炊き方 冷凍現場委にする(島根県・森谷公昭)/コーヒー粉と塩を入れる(茨城県・宮本トシ江)

小豆あんとの相性ばっちりニラまんじゅう/子芋を活かす里芋まんんじゅう/きな粉を天ぷら粉に混ぜて揚げ物上手

皮だけで作るぶどうジャム/干し柿のワイン漬け/白菜の熟柿漬け

梅酢と米酢は相性がいい/簡単 梅シロップ/美味 梅酢漬けのシソおにぎり

ラッキョウ酢でたくあん長持ち/ほろ苦さがおいしいフキ菓子/熱湯できゅうりの漬物はおいしくなる

かつお風味の大根漬/きゅうりのビール漬け

麹の甘みがおいしい三五八漬け/ノカンゾウでフキのあく抜き/ワラビのあく抜きは籾殻くん炭で


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編集後記

◆かつての日本人の日常の食事は、簡素なものだ。だいたいは、ご飯、焼き魚、漬物、味噌汁という組み合わせで、それで十分ごちそうだった。一方、正月や冠婚葬祭などのハレの日には、何日も前から手間をかけて、豪華な料理が用意された。

 現代では、ハレとケの境界がほとんど無くなり、普段の日でも豪華な料理を食べるし、逆に、ハレの日にはそれほど豪華な食事を求めなくなっている。

 元々、食べ物の調理や加工には、「おいしく食べる(=効率よく摂取する)」という2つの目的がある。現代の一般の家庭では、保存のために加工食品を作る必要はほとんど無い。スーパーマーケットに行けば、新鮮な肉、魚、野菜をいつでも入手できるし、どこの家にも冷蔵庫がある。さらに、総菜など調理済みの食品が豊富に並んでいて、「おいしく食べる」ために加工するという目的も希薄になっている。

 しかし、手間をかけて作った料理を家族でにぎやかに食べたり、手作りの品を贈り物にしたりするのは、とても楽しいことだ。本来ヒトは社会的な存在であるが、現代では、個人的価値が相対的に強まっており、逆に、個人の社会的存在意義が脆弱になっている。

 「食べ物を他に与える」という行動は、最も根源的な社会的行動の一つであり、おいしい食べ物を他の人に供することは、自分の社会的存在意義(人の役に立っているということ)の確認につながっている。だからこそ、どんなに時間がかかっても、「楽しい」とか「嬉しい」とは「誇り」とかを感じる。(本田進一郎)

◆テレビでは、高価な食材、珍しい食材をもとめて東西奔走して食を演出する、そのカラー映像は圧倒的で、香り以外はすべて伝えようという思いは感じるものの、最近、私自身は少々食傷気味だ。

 先日、息子が、俺が作ったんだと、ベーコンの塊を自慢げに持ってきてくれた。かなり塩がきつく、お世辞にもウマイとはいいがたいのだが、妻と2人、あいつものこんなことやるようになったんだと、そのしょっぱいベーコンをいただいた。しょっぱさもまた味のうち。しょのしょっぱさがつまみになり、わが家の食卓に幸せを運んでくれた。

 今回の別冊の表紙を飾ってくれた佐藤タヘさんのことを思った。畜産農家のお母さんたちが、一生懸命育てても一般の流通に乗ることができなかった豚たちを、家族と仲間のためにハム、ソーセージ、ベーコンなどに加工した。お母さんたちの笑顔がいい。

 今回の別冊には「わが家の農産加工」という何の変哲もないタイトルをつけた。その思いは、「あたりまえ」の日常の食べ物を、加工の側から追ったから。中身は農家の人たちが育てた命の素、つまり「素材」を、より楽しく、人を幸せにする食べ物に育て上げる技です。別冊「加工・保存・貯蔵の智恵」「発酵食の智恵」とともにご活用ください。(西森信博)

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

 農家が教える わが家の農産加工

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