現代農業 特別号
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別冊現代農業 2011年1月号
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農家が教える 米粉 とことん活用読本

B5版 196ページ 定価1200円

農家のみなさんの新規需要米への取組は,これまでの和菓子を中心とした米粉の世界を大きく変えようとしてる。
本書は,米粉パンや米粉麺,さらには洋菓子への米粉利用など,かつての伝統的な和菓子を中心とした米粉利用の世界を大きく広げていくための一冊。
米粉利用の面白さや楽しさ,おいしさなど,農家の米粉利用はレシピ集にとどまらない米粉利用の世界の可能性を開いていく。
ネックとなる米の製粉方法,最新の米粉製粉機情報,続々開発される米粉の商品など満載。

はじめに目次編集後記購入する

別冊現代農業2011年1月号

はじめに

 米粉は庶民にとって贅沢品だった。せいぜい、うるち米を粉にした上新粉で、もち米を原料にした白玉粉など、めったに口にすることはできなかった。それはきっと、米粉が、大切な主食である米(粒)を、わざわざ手間をかけて粉にした特別のものだったからだろう。

 今、米粉は変貌を遂げようとしている。ほとんどが和菓子の世界で利用されてきた米粉が、米粉パン、米の麺、米粉をつかった洋菓子、お総菜など、これまで小麦粉がつかわれていた食品に利用され、米粉ブームを生み出しつつあるからだ。背景に、いわゆる「新規需要米制度」があることは間違いないだろうが、本書に登場していただいた農家は、もっとおおらかだ。「くず米がもったいなくて、それを粉にしてパンを焼いてみた」と規格外の米を有効利用する人や、「パンが好きなら、ご飯をパンにすればいい」と小麦粉にご飯を加えてパンを焼く人、もちろん本格的に新規需要米の米粉を核に、製粉業者や製パン・製麺・菓子業者と連携して展開する人たちも各地に生まれている。

 下の図は、昭和初期の佐渡における米の利用法を整理したものだ(『聞き書 新潟の食事』より)。「年間に使う米粉はかなりの量にのぼり、粉を石臼で挽くことは主婦の大事な役目になっていた。米の粉は寒中にすっておくと、虫がつかないということで、冬の間に一年分を考え大量にすられたという。また、この佐渡では、芸術的ともいえる「しんこだんご」(うるち白米の粉七にもち米粉三を混ぜてつくるかただんご)もつくられていた。」とある。
 米は粉の世界が加わることで世界が大きく広がる。

 本書は、月刊『現代農業』、『食品加工総覧』に収録された米粉利用にかかわる論文を中心に、各地で広がる米粉を利用した食品づくりの取り組みと、様々な米粉利用の技、製粉の方法や米粉に適した品種、さらには畜産物への利用など、「米粉」の分野から、米をより豊かに食べていくための最新情報をまとめました。

農山漁村文化協会


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別冊現代農業 2011年1月号
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素晴らしき 米粉の世界

目次

〈カラー口絵〉

どんどん広がる米粉の世界 撮影 田中康弘ほか

米粉食品開発先進地に学ぶ 米粉食パンづくり/米粉の天ぷら粉/米粉の麺 岩手県 原体ファーム?(撮影 黒澤義教)

くず米を生かして農家ならではのパンをつくる 新潟県 遠藤昌文さんご夫婦

続々登場! いろいろな米粉パンとお菓子

グルテン不要のラブライス
白神こだま酵母で一〇〇%米粉パン
炒りヌカ入り米粉パン
発芽玄米粉入り米粉パン
黒米入り米粉パン
玄米プチロール
コメワッサン
米粉のシフォンケーキ
米粉のロールケーキ
米粉のコロッケとロースサンド
米粉でお手軽グラタン

番外編 炊いたご飯でご飯パン 福岡県 船越美治代さん

【カコミ】小麦粉だけのパンより、ご飯を混ぜたほうがよく膨らむのはなぜか? 奥西智哉 食品総合研究所

台所の道具で米を粉にしてみる フードプロセッサー/ミキサー/ミル 実験・写真・文 小倉かよ

【カコミ】最新式の製粉機 ピンミル式製粉/気流式製粉 写真提供 新潟製粉

伝統的な米粉と季節の和菓子 写真提供 全国穀類工業協同組合

代表的な米粉
和菓子のルーツ干し菓子
春 草もち・桜もち・花見だんご・ちまき・柏もち
夏 あじさいもち・フルーツ白玉・氷白玉
秋 月見だんご
冬 花びらもち・豆大福

なつかしい米粉の料理とお菓子 『日本の食生活全集』より

あさづけ(秋田)
かや巻きだんご(新潟)
三日の味噌汁だご(富山)
かただんご(新潟)
寒ざらしの粉のだんご(長野)
いりぼら焼き(和歌山)
やきんぼう(岡山)
粉ものをつくるねばり臼(石臼)(山口)

PART1 広がる米粉の世界─輸入小麦に替えて新しいパン・麺・菓子の創造

米をとことん食べつくす!もち米、玄米、クズ米も粉にして 山口県 木村節郎

家庭用製粉機三回通し 米粉で食パンも焼ける 新潟県 遠藤昌文

先輩に学ぶ米粉パン・米粉の天ぷら

岩手県 原体ファーム
【簡単米粉利用メモ1】米粉は吸水量が多い
【簡単米粉利用メモ2】米粉パンのおいしい食べ方─熱を加える
【簡単米粉利用メモ3】製粉のしかたと米粉加工

子育て中の主婦五人で米粉食堂 開店! 長野県 吉森里和 こめのこ工房なごみや

【カコミ】米粉入りプリン 岩手県 齋藤貞二さん

新規需要に向く多収米品種情報 太田久稔 農業・食品産業技術総合研究機構作物研究所ほか

米の機能性に着目すればもっともっと広がる米粉の可能性 大坪研一 新潟大学

PART2 米粉パン、米の麺、米のお菓子

超簡単、?玄米粉パンのつくり方 長崎市 ウィルキンソン五月

うちのお米でパンを焼く 山形県 小野寺律子さん

私のパンは地元の米屋さんが強ーい味方 青森県 古舘留美子さん

第二の人生「お米のパン屋」 山形県 高橋隆一さん 田中康弘

グルテン不要! 米粉一〇〇%パンができた  ─もう輸入小麦は食べません 宮城県 星 陽子

グルテンいらず 白玉酵母で一〇〇%米粉パン 大塚せつ子

グルテン不要のラブライス 東野真由美

炒りヌカ入り米粉パン 小出静恵

【カコミ】「ごはんパン」小麦粉パン以上の膨らみ・もちもち・しっとり感 奥西智哉 食品総合研究所

黒米入り米粉パン 佐藤昌枝

米粉のコロッケとロースサンド 岐阜県 堀田茂樹 米粉食品開発研究会

わが家で楽しむ 米粉うどんのつくり方 貞広樹良 美唄こめこ研究会

高アミロース米「越のかおり」?の米麺 農商工連携で新しい麺を開発 新潟県 所山正隆さん、小酒井武夫さん 西村良平

米麺?「もくべい」?押し出し方式でできた米粉一〇〇%の麺 米屋武文 ?静岡文化芸術大学

身体にいいお菓子 玄米粉シュークリーム・カスタードクリーム・タルト ウィルキンソン五月

ふかふかシフォンケーキのつくり方 菅原啓子

お米大好き母ちゃん 米粉料理レシピ 撮影・調理 小倉かよ

ゴボウとニンジンのかき揚げ(東京都 馬込雅子さん)
こまち焼き(秋田県 山田アイ子さん)
?もちもちサバギョーザ・米粉でお手軽グラタン(福井県 田中滋子さん)
みっこちゃんの米粉シナモンポテト(千葉県 石井美枝子さん)
フライパン米粉ピザ(宮城県 菅原啓子さん)

『日本の食生活全集』?にみる お米を大切に食べてきた母さんたちの知恵

しとねもの(秋田県)
あさづけ(秋田県)
ねっけ(宮城県)
かや巻きだんご(新潟県)
やせごま(新潟県)
かただんご(新潟県)
三日の味噌汁だご(富山県)
寒ざらし粉のだんご(長野県)
いりぼら焼き(和歌山県)
よむぎもち(和歌山県)
ぼうりだんご(大阪府)
やきんぼう(岡山県)
粉もの(山口県)
いりこもち(宮崎県)

【カコミ】農家が教える 寒ざらし粉づくり 藤田秀司/高田美枝

米粉および米粉加工品製造の取組みと入手法

PART3 米を粉にする技術─家庭用製粉機から本格派まで

めざすは村の粉屋 青森県 平川百合子さん

コメ農家が高性能製粉機を導入 福島県 新田球一さん

【カコミ】発芽玄米粉入り米粉パン 馬込雅子

挑戦!「うちのお米」?を自分で米粉に 小倉かよ

【図解】コメと小麦の粉の違い

米粉Q&A 製粉方法と粉の違い

米粉パンに適する米粉の特性は? 品種はなにがいい?
荒木悦子/芦田かなえ/青木法明/高橋 誠 近畿中国四国農業研究センターほか

【カコミ】デンプン損傷と粒度の関係早わかり

米粉の製粉方式と製粉方法  パンや麺に向く米粉をつくる 吉井洋一 新潟県農業総合研究所

和菓子に使われてきた 伝統的な米粉とつくり方 町田榮一 五百城ニュートリイ(株)

お米の製粉機情報  家庭用から地域の加工所用本格派まで

米粉は、小麦粉の代替だけの原料ではないのだ 米粉を語る渡部五十八さん 全国穀類工業協同組合

米粉″。昔物語 町田榮一 五百城ニュートリイ(株)

【カコミ】ご飯でパン・うどん 最新事情 「GOPAN」登場/「ごはんうどん」も

【カコミ】米粉づくり 安全と衛生管理のポイント 吉井洋一 新潟県農業総合研究所食品研究センターと

PART4 畜産飼料としての米粉利用

黄身はレモンイエロー 肉もおいしい 籾米与えて 鶏も元気 人も元気 青森県 常磐村養鶏農業協同組合

飼料用米だからこそ高品質に結びついた「こめ育ち豚」 池原 彩 平田牧場生産本部

液状飼料に、籾ごと米を粉にして混ぜ「米仕上げ」?豚完成 イナ作・畜産農家・市の連携プレー 千葉県旭市

飼料米で遊休湿田復活! 牛・豚・鶏の米 すべて地域内自給 青森県 沼山喜久男さん

【カコミ】飼料米の畜産利用 最新情報 福岡県 城井ふる里村/茨城県 ドリームファーム+菅生農園/熊本県 JA菊池


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編集後記

◆おいしい酒を飲んで秋の夜を過ごした。相手は漢文の先生だった。
  つねづね思っていたことを尋ねた。

――取材記事で「おいしい」とつい書いてしまいます。もっといい言葉があると思うんですが、締切りに負けて「おいしい」「おいしい」の連発です(=言い訳)。日本の言葉では、おいしさを伝えるものが少ないようです。中国ではどうなんですか。

「中国でも同じで、少ないですよ。」

――では、おいしいことを伝えるのに、いい方法がありますか。

「中国では、「メタファー」を使います。日本でも同じでしょう。」

「メタファー」なんて中国語で言われても困る、と思っていたら英語だった。「たとえ」ということのようだ。例えば「○○の味」というもの。

 そこで思い出したのが「初恋の味」。甘くてすっぱいカルピスのキャッチフレーズだった。ほかに「おふくろの味」「ほっぺたが落ちそう」なんていうのもあったな。
米粉を使ったパンやうどんのおいしさを「もちもち」「もっちり」という。これはたくさん見かける。実に多い。さて、それ以外にどんな言葉があるのだろう。「たとえ」でいうと「○○の味」の○○はどんな言葉になるのかな。

 一方、「米粉パン」「米粉麺」では、小麦食品「パン」「麺」のイメージから離れて新たな名前で魅力を伝えるものが各地から登場してくるのを期待したい。
おいしい酒の席での話から、想いが米粉へと広がっていく(酒のおいしさを気のきいた言葉で書きたかったけれど、締切りとなりました)。(西村良平)

◆本書を編集するまで、米というと粒で食べるご飯のことを思い浮かべるだけで、米粉は遠い存在だった。編集しながら、子どものころ、母が、お祝い事のときお団子をつくってくれていたことを思い出した。母は「上新粉」と書かれた和紙の袋から真っ白な粉を出して、それを練って丸く形を整えてからお湯の中に入れた。「浮いてきたらすくうんだよ」。湯気が沸き立つ鍋の中を食い入るように見つめながら、団子が浮き上がるのを待った。浮き上がった団子にはあんをかけてもらい、フーフー息を吹きかけて冷ましながら食べた。その白い粉が米粉の一種だったことを知ったのは、ずっとあとになってからのことだ。

 戦後すぐ、主食の米が不足していた時代、日本には米粉に回すだけの米のゆとりはなかった。昭和四〇年代に入って米の過剰が問題となると、過剰米処理の一環として米の加工が検討され、米粉の利用が進められた。昭和五九年、米不足による突然の韓国米輸入騒動の時、再び「米粉製造に回す米はない」と言われた。そしてまた、米の消費量が減り、減反した田んぼが荒れていく中、米の新規用途(小麦原料の代替など)を目的とした新規需要米の作付けが一〇a当たり八万円の交付金付きですすめられる。

 過去の米粉利用の歴史はともかく、本書に登場する人たちはとても元気。パン、麺、お菓子から米粉食堂まで、米粉を使った米加工の動きは、製粉機メーカーや食企業も巻き込んで展開している。昔ほどご飯を食べなくなった「今」という時代、心境はちょっと複雑だが、米を自在に使える時代が来たことを素直に喜びたい。(西森信博)



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