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巻頭特集

売り先がなくなった
観光農園に人が来ない

イチゴの「お家で食べ放題セット」を4kg 1万円で提案

福岡・桒野くわの由美

筆者。イチゴのハウスは30a。品種はすべてあまおう。他にキャベツやイネにも力を入れている

休園で予約90件をキャンセル

 春先の収入源になればと2012年からイチゴの収穫体験を本格的に始めました。

 体験は毎年3月1日から始めて、イチゴの様子を見ながらゴールデンウィーク前後まで開催します。今年も4月中旬まですでに予約が入っていました。しかし、4月1日に県から二度目の外出自粛要請が出されたのを機に、休園を決め、その日の夜すぐに約90件の予約者へお断りの電話をかけました。大変でしたが、半分以上がリピーターで、休園のお知らせも優しく受け入れてもらえました。逆に、イチゴだけでも販売してほしい、来年度の予約もしたいというお客さんもいたことは本当に嬉しかったです。

自宅で楽しんでもらう食べ放題セット

 収穫体験がなくなったため、残ったイチゴは、ネット通販を強化して売るしかありません。そこで、こういう時こそ、自宅でおいしいイチゴをこれでもかと食べて楽しんでもらおうと考えたのが、送料込みで1kg 4000〜4kg 1万円の「お家でいちご食べ放題セット」です。

 収穫体験がなくなり、作業に慣れたスタッフだけで収穫したため、例年より傷みの少ないイチゴをたくさんとれた点もプラスになりました。お客さんからも好評で、価格設定もわかりやすいと喜ばれ、80セット売れました。

ジャム作りの動画配信

 知人からは、私がいつもお客さんに紹介している簡単ジャムの作り方(作り方は本誌2020年5月号で紹介しました)を撮影して、SNSで動画配信しようと提案されました。ちょうど加工用イチゴの出荷も増える時期で、自粛中の方が気軽に楽しんでくれたらいいなと配信にチャレンジ。これもネット通販の売り上げアップにつながり、動画を見たよ、『現代農業』を買ったよ、ジャムを作ったよと報告をいただくのが嬉しくて、自分にとってもたいへん励みになりました。

 4月下旬からは、急に暖かくなったこともあってイチゴが小さくなり、数も減ったため、予約注文を終了し、出荷できる時だけSNSでお知らせして売り切りました。

ジャム作りの動画配信の様子。最初はイチゴだけを煮詰める手軽な方法で、短時間で誰でもおいしいジャムが作れる

今こそ消費者への発信を「密」に

 消費者への情報発信は、SNSもまだない20年以上前にホームページやブログを自分で作って以来、ずっと取り組んできたことです。今回は、それを見てくれていたお客さんが、逆に私たちを励まし、応援してくれました。とても感謝しています。また、今ならお客さんともじっくり話す時間がとれるはずなので、今まで以上に積極的に情報発信に励もうと思っています。

 4〜5月は経費の支払いが多い時期で、収穫体験の収入減は大打撃でした。その代わり、家庭での自炊が増えた影響かお米の注文が増え、減収分を多少挽回できました。このことは、農業こそが地域の基幹産業なんだということを自分自身が振り返る機会にもなりました。

 自粛要請が出されても、畑の農作物は待ってくれません。タネを播いたら、翌日すぐに収穫できるわけでもありません。社会がどんな状況でも地道に日々農作業をするのが農家です。これからも、たくさんの方のお腹を満たして、子どもたちが笑顔で過ごせるように農業を頑張って続けていきます。

(福岡県福津市)

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2020年7月号
この記事の掲載号
現代農業 2020年7月号

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