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効果あり! 排水をよくする明渠・暗渠のアイデア

縦穴暗渠 でアスパラガスの生育ムラが解消

熊本・安永昇平

ウネの両側面に縦穴暗渠を施工。直径10cmのドリル刃を使い、深さは約60cm。穴が埋め戻らないよう、掘り出した土は別の場所に移す

ハウスの東西で生育ムラ

 実家の農業を手伝っている時に、農業の楽しさを感じ、就農を決意。2016年に夫婦で新規就農して、今年36歳になります。

 翌年4月に、27aのハウスに、アスパラガスの苗を定植しました。圃場は前作にネギを栽培していた所で、暗渠はありませんが排水性は悪くなく、水源も近隣のダムの水を利用でき、条件は恵まれていました。

 しかし、定植から約1カ月後、アスパラガスの生育にムラを感じ、JAの職員に相談しました。職員と一緒に圃場を確認すると、ウネ間のぬかるみ具合などから、ハウスの東西で排水性が違うと気が付きました。ウネ間に埋め戻していた堆肥を一度掘り起こして調べてみると、ハウスの西側は土中に水が溜まっていることも確認できました。

最初はウネ間だけ施工

 排水性を改善することで生育ムラの解消ができるかもしれないと、JA職員のアドバイスを受け、エンジン式オーガ(携帯式穴掘り機)でウネ間に縦穴を掘ることにしました。もともとは排水不良の水田転換畑の対策がヒントになっている手法で、定植したアスパラガスに影響を与えずに行なえると教えてもらいました(元になった研究は122ページ)。

 オーガは購入すると1台10万円近くするそうですが、試験ということで県から借りることができました。ウネ間に深さ約60cmの縦穴を30cm間隔で開けていき、充填材として中にモミガラを詰めました。

 効果はたしかにあり、ウネ間にたまっていた水が抜けてぬかるみが減りました。しかし、ハウス東西での生育ムラは依然変わらず、東側は親株の丈が1m程度、西側は60cm未満と大きな差がありました。

 

縦穴暗渠施工前のアスパラガスの生育ムラ

排水のいいハウス東側のアスパラガス(右)は、親株の草丈が1m以上に生育しているが、西側の親株は60cmほど。さらに50cm未満の株もあり、排水性が原因で大きな生育差が出ていた

ウネの両側面にも施工

 そこで6月中旬、ウネの両側面にも縦穴を掘ってみようと考えました。試しに数カ所だけ縦穴を掘ってみると、中の土はドブ臭く、灰色の粘土状で、明らかに水が停滞して酸欠状態になっていることがわかりました。

 やはり、この状況を改善することが必要だと考え、ハウス西側のすべてのウネの両側面に70cm間隔で縦穴を開けていきました。水の溜まり具合を確認できるようにと、穴の埋め戻しはしませんでしたが、作業は約1週間かかりました。

生育ムラが見事に解消

 施工作業は苦労しましたが、効果はすぐに現われました。まず穴の中のドブ臭さが激減。圃場内もドブ臭さは一切なくなり、さらにアスパラガスの生育が早まりました。8月には東西での生育差がほぼ改善され、秋の養分転流期にはどの親株も十分に生長していました。

 かん水後に縦穴をのぞくと、いったん水が溜まりますが、30分程度で引いていく様子がわかります。ウネ間に水が溜まってぬかるむことが減ったため、非常に歩きやすく、台車の移動もスムーズで、作業性は格段に向上しました。

 生育ムラが見られた時、来年ちゃんと出荷できるだろうかと不安を感じましたが、排水改善に取り組むことで、その不安が解消できたことが何より嬉しい。また、アスパラガス栽培では、たっぷり水をかけ、その水がしっかり排水されることが重要で、圃場の排水性が生育を大きく左右することを身に染みて感じました。なお、縦穴は翌年以降徐々にふさがってきましたが、今のところ圃場の排水性に変わりはないようです。

(熊本県菊池市)

ウネ間に開けた縦穴は、歩行の邪魔になるので、モミガラを詰めて穴をふさいだ。その後、徐々に穴はふさがっていくが、排水性は変わらない

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2020年10月号
この記事の掲載号
現代農業 2020年10月号

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