新連載 儲かる イチジク 45段どり
テント張りマルチで細根がびっしり
愛知・天野 亘
テント張りマルチをしたイチジク。9月30日、収穫終了直後のようす(赤松富仁撮影、以下断りのない限りすべて)
登校前にイチジクの手伝い
私は1973年に愛知県碧南市のイチジク農家の次男として生まれました。小学生の頃から畑の手伝いが日課で、朝は収穫した果実を荷台に載せ、トラクタで牽引して作業場まで運んでから登校していました。愛知県立農業大学校に進学し、卒業後は地元の企業で3年間営業職として働きました。98年に結婚し、妻の実家の愛知県田原市でビニールハウス2棟20aからイチジク栽培を始めました。
筆者(右)と妻の千栄子(写真提供:田原農業普及指導センター)
妻の実家ではデルフィニウムを栽培していましたが、春先に収穫や管理が集中して手が回りきらない実情がありました。また、私のイチジク栽培にかける思いも理解してもらい、一部のハウスを譲ってもらう形で、イチジクの面積を徐々に広げてきました。もともと基本的な栽培技術は身に付けていましたが、地元の碧南市と現在の田原市では同じ愛知県でも土質や気候が異なるため、大玉できれいな納得のいくイチジクがとれるようになるまで10年はかかりました。
加温ハウスで反収600万円
これまでに重油高の影響で加温から無加温栽培に切り替えたり、丸型ハウスが台風で倒壊し、やむを得ず露地栽培も試しました。しかし、収益性の高さでは加温ハウス栽培が一番だと実感しています。
軒高3mの加温ハウス
私の場合、軒高3mの加温ハウスでは、各結果枝を縦に長く伸ばして45段どり(一文字仕立て)。軒高2・3mの鉄骨丸型ハウスでも30〜35段どりしています(一般的には22〜23段)。高軒高の加温栽培なら反収は600万円以上になりますが、無加温だと300万円、露地ではよくても200万円程度です。台風の通り道となる渥美半島の場合、露地ではもろに被害を受けるデメリットもあります。
加温栽培だと3月10日頃から収穫を始められ、5月連休までは1パック(350g)3〜4玉で1200円の高値がつきます。その後無加温ハウス栽培が出始める7月中旬までは600円前後となり、8月に露地物が出てくると高くても350〜400円です。連休までが大勝負で、出荷が始まると4月中に一山当てる気持ちでがんばります。
就農当初は洋花との複合経営も模索していましたが、2016年に県の農業改良普及課で経営診断していただいたところ、施設花卉が赤字部門だと判明しました。それを機にイチジク専作農家となることに決め、現在は無加温ハウス8a、加温ハウス81a、自家用の水田40aを義父と私たち夫婦、長男の家族4人で経営しております。 主要な栽培品種は「桝井ドーフィン」で、病害虫に強く、より大きな玉でさわやかな甘みのある新品種の「サマーレッド」を1棟10aで栽培しています。
新品種の「サマーレッド」。色づきがよく、さわやかな甘みがある
この記事には続きがあります。本誌174〜181ページをぜひご覧ください!
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