役用鴨品種の研究、利用の試論沈暁昆(鎮江市科学技術委員会) 王志強(鎮江市科学技術委員会) 戴網成(鎮江市水禽研究所) 謝桐州(丹陽市延陵鎮農技普及所) 一、 水稲栽培と水禽養殖の新しい道を切り開く合鴨水稲同時作 現代の水稲栽培においては、農薬や化学肥料、除草剤を使用せずに安全な米を生産することは非常に困難ですが、合鴨水稲同時作技術はこれを可能にしました。合鴨水稲同時作は、古代の"稲田養鴨"を継承し新たに発展した、伝統的農業と現代的農業の結合した技術なのです。 合鴨水稲同時作技術は日本において10数年の研究を経て発展してきたものであり、日本全国に普及しているだけでなく、韓国やベトナム、フィリピンなどのアジアの稲作国家においても重視され発展しています。 合鴨水稲同時作は水田の生産能力や養殖能力、生態能力を大いに発揮させます。これは水稲栽培の全面的な革新であるとともに、水禽養殖の全面的な革新でもあります。水稲栽培について言えば、化学肥料や農薬、除草剤に依存する現代の水稲栽培を水田の総合的な生態能力を発揮させるものに転換させることができます。また、水禽養殖について言えば、まだ知られておらず利用もされていない水禽の多くの潜在的能力を発揮させ、現代の大規模集約的養殖から水禽の生態的条件に適した自然環境での養殖へ転換させることができます。このように飼育された鴨は消費者の要求に、より適したものとなるでしょう。合鴨水稲同時作は、高品質の米と鴨という完全に安全な緑色食品を生産し提供することができます。この技術は水稲栽培と水禽養殖の持続的発展の道を切り開いたのです。合鴨水稲同時作には素晴らしい将来性がありますが、そのポイントは役用鴨の選別育成にあります。 二、 役畜利用の長い歴史 役用鴨について論じる前に、役畜の歴史について簡単に振り返ってみる必要があるでしょう。 残念なことに、この十数年、役畜の研究と利用は人々からほとんど無視され、基本的には全く進展していない状態にあります。また、別の面では伝統的役畜の多くは畜類であり、禽類は少ないと言えます。つまり、多くは体の大きい動物であり、小さい動物は少ないのです。これも現代農業における役畜の発展を妨げています。 21世紀はバイオテクノロジーの時代になるでしょう。1999年にノーベル特別賞を受賞したホルマン・シャール(ドイツ)氏は以下のように述べています。「バイオテクノロジーとは簡単に要約すれば人類や動植物の遺伝制御であり、生物本来の現実的可能性からかけ離れたものにするだけである。」しかし、「バイオテクノロジーの主要な役割と目標は、生物が有している潜在的能力や、それの継続的な利用可能性を研究することでなければならない。」 伝統的農業の精華を受け継ぎ、生物の潜在的能力を掘り起こすことは、大いに進めるべきことです。この方法は多くの現代農業技術より優れているのです。合鴨水稲同時作は極めてよい例でしょう。 三、 役畜の継承と発展につながる役用鴨の研究 水田は主として水稲栽培のためにあります。水田の作業は田に水が有るか、水を含んだ状態で行います。この特殊な条件に制約されるため、水田内で作業できる役畜は水牛だけでした。ただし、水牛は体が比較的大きいため水田での作業は耕起や地ならし、代かきなどに限られてしまいます。水田での水稲栽培には耕作作業以外に、除草、除虫、施肥、中耕や撹拌、生長促進などの多くの作業が存在します。鴨は水禽であり、その小型性、雑食性、採食性、群生性などの特徴によって水田の様々な作業をこなすことができるのです。 合鴨水稲同時作は、水稲栽培と水禽養殖を有機的に密接に結びつけ、鴨はその生物学的特性と潜在的能力を利用して水稲のために除虫や除草、施肥、中耕や撹拌、生長促進を行い、水稲は鴨のために仕事や生活、休憩の場所を提供するのです。つまり、充分な陽光、空気、水、そして豊富な動植物性の食物です。雑草や害虫は鴨の飼料となり、それは鴨の肉や卵となって人々の食卓にのぼります。 合鴨水稲同時作の発展過程の中で、鴨の数多くの能力や効果が次々と証明され、役用鴨の役畜における地位と役割が確立されてきました。現在に到るまで、鴨と同様に除草や施肥、中耕、撹拌、成長促進といった多様な作業を一身に引き受けて完全にやりこなせるものは、農業機械にもありませんし、人類が飼い馴らしてきたその他の家畜にも存在しないのです。 四、 役用鴨の五大能力・効果 合鴨水稲同時作には、まとめてみると以下のような五つの大きな能力と効果があります。
これら五大能力の総合的、累積的効果によって、合鴨水稲同時作技術は完全に化学肥料や農薬、除草剤を使わずに通常技術の収量に近い、あるいはそれに達する高品質米を生産できるのです。自然災害の年でも収量はより優れています。水田の経済的効果は明らかに向上する上、環境保全や社会的利益については言うまでもありません。 五、 役用鴨に要求される能力 合鴨水稲同時作の成否の鍵は鴨にあります。鴨の主な能力は役用にあり、役用鴨の選別育成は水禽育種の全く新しい課題です。役用鴨の選別育成は現代の鴨育種において然るべき地位を得るべきでしょう。現代の家禽養殖業は鴨品種の特徴や特性、経済的用途に基づいて、鴨品種を肉用型、卵用型、兼用型に分けています。現代の鴨品種選別育成は産肉性、産卵性に偏っていて、役用としての能力については無視しています。現有の家鴨品種を直接合鴨水稲同時作に応用してもむろん不可能ではないけれども、役用能力はあまり理想的ではありません。日本はすでにこの分野において深く研究していますが、わが国では現在まだ空白です。現有の鴨品種は人類による長期の選別によって、活動の機敏性や夜行性、警戒性、食物の雑食性、雛の早熟性などの面で全て若干低下しており、役用能力を主目的にした役用鴨品種の選別育成を進める必要があります。 役用鴨に必要とされるものは、小型であること、抵抗性が強いこと、水田での活動時間が長いこと、野生植物を好んで食べることなどであり、これらと同時に品質の高い鴨肉を産し、繁殖力も高いことが望まれます。わが国は鴨養殖の大国です。その歴史は古く、経験も豊富であり、品種資源も十分にあります。豊富な鴨品種資源を利用し、現代の家禽育種の理論を使えば、優秀な役用鴨品種の選別育成が完全にできるでしょう。役用鴨は、それ専用の品種であってもよいし、交配したものでも可能です。 六、 役用鴨研究の進展 日本の鹿児島大学、宮城大学、岡山大学などが展開している役用鴨の研究と利用は、日本とアジアにおける合鴨水稲同時作の発展を押し進めました。鹿児島大学は役用鴨の選別育成という目標に基づいて、水田での作業能力や適応性が高く、生長も早く、繁殖力も強い役用鴨専用品種―――薩摩鴨をすでに選別育成しています。 中国国内の役用鴨選別育成もすでに始まっています。2000年、私たちは国内初の役用鴨品種―――役鴨1号を選別交配し、合鴨水稲同時作に使用しました。試験の結果、この鴨は生活力が旺盛で、水田での生存率は98%以上、水田作業時間は普通の家鴨より2時間以上も長いという成果が得られました。また、水稲は化学肥料や農薬、除草剤を全く使用しないという状況で、1ムー(6.67a)あたり446.5kg、品質は国家優質米2級のレベルに達しましたのです。日本の合鴨水稲同時作専門家萬田正治教授や古野隆雄先生もこれを高く評価して下さいました。2001年、わが市(鎮江市)は合鴨水稲同時作面積を更に拡大します。役用鴨品種の選別育成のために、わが市は水禽研究所を設立、現在すでに以下のように主要な活動を展開しています。
![]() 【ガチョウ−−牧草】同時作の光景 役用鴨の選別育成や研究、利用は、現代の鴨育種の理論と実践を豊かにし発展させるとともに、合鴨水稲同時作を支える最も重要で堅固な技術を提供し、わが国の水稲栽培、水禽養殖を持続的に発展させると考えられます。 戻る |