「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」 機関誌
第20号:特集のねらい
今では広く使われている「食農教育」という言葉は、農山漁村文化協会(農文協)が編集・発行している雑誌の名前『食農教育』(今から5年前、98年8月創刊)で初めて世に出ました。食と農をつなげた「食農教育」は、新しく農文協が造語した言葉です。
「『食農教育』を地域で支援する」、この特集号には、三つの思い(こころざし)があります。
(1)食と農の乖離(かいり)を縮めること。
農業とは「いのちを育てる仕事」だと、体験するなかで感じさせたい。いのちを育てて、いのちをいただく。「いただきます」とは、いのちをいただくことへの感謝の言葉。田んぼの泥の感触は、縄文の時代から続く人の暮らしの土台。子どもたちに、生きる原点としての食と農への感性を育てたい。そのためには、学校の先生も変わらなければならないと、本号で埼玉県総合教育センター・蕪木豊所長が「提言」しています。
(2)地域に教育をとりもどすこと。
農家が「地域の先生」として、学校の先生を応援し、農業のやりがい・楽しさ、地域に根ざした食の豊かさを子どもたちに伝えたい。農家だけでなく、地域を支える多様な人が子どもたちとかかわり、地域の担い手をみんなで育てたい。今「ジジやババ」の世代の出番であることを、農民作家・山下惣一さんが語っています。
(3)「学校区」から地域コミュニティの復興を。
地域の農家と学校がつながれば、学校給食にも地域産物を提供して、地場産給食にも発展します。さらに農家と子どもの親がつながれば「学校区内自給」が広がります。都市化地域でも過疎地の農村でも、食農教育の輪から、再び「学校区コミュニティ」が盛り上がります。「食農教育」支援の取組みは、これからの心豊かな地域コミュニティづくり、地域自給的ライフスタイルの再興にもつながっているのです。
「食農教育」は今、農水省・文科省の重点事業になっています。本号では、各担当課から支援事業への思いと事業の内容をご紹介いただきました。あわせて各地の「学校と地域を変える」支援実践事例を紹介し、さらなる広がりを応援する特集号としました。
〈主な内容〉
●子どもたちの「生きる力」をはぐくむには大人が変わらなければならない
――総合教育センター&農業教育センターの小中学校の先生への食農教育支援の取組みから
・・・埼玉県総合教育センター・農業教育センター長 蕪木 豊/4
●ジジの刷り込み効果は、孫を変える
・・・農民作家 山下惣一/12
●勤労生産体験としての農業体験の大切さ
――「豊かな体験活動推進事業」の目指すもの――
・・・文部科学省初等中等教育局 児童生徒課長補佐 新山雄次/16
●子どもたちの農業体験学習の目指すもの
――文部科学省との連携を強化して――
・・・農林水産省経営局 女性・就農課長 野村文昭/22
●「食育」(食に関する教育)を推進する
――「食を考える月間」を制定――
・・・農林水産省総合食料局 消費生活課長 齋藤京子/28
○都会育ちの先生へ最初の一歩をアシストします
――お米屋さんが、農業を知らない先生を支援――
・・・ 東京・入谷 金澤米店 砂金健一/34
○東京都区内の小学校にも学校農園を
――東京都板橋区立赤塚小学校の学校農園確保を支えた板橋区産業課――
・・・ (フリーライター)酒井喜久子/42
○小学生が「なにわの伝統野菜」をドラム缶で育てる
――大阪府立食とみどりの総合技術センターの支援で広がる――
・・・ 大阪府立食とみどりの総合技術センター 森下正博/48
○スローフードでいこう
――JA秋田やまもと版地産地消の食農教育支援活動――
・・・ 秋田やまもと農業協同組合 企画管理課 泉牧子/56
○ふるさと農業学習(特産果樹・野菜の栽培・加工体験)が地域を変える
――JA和歌山中央会「和歌山県農業教育賞」の受賞事例から――
・・・ (フリーライター)種森ひかる/62
○「屋根のない学校」が地域の子どもを育てる
――三重県藤原町の地域自然を丸ごと教育の場とする取組み――
・・・ (農業資源研究会)西村良平/70
○地場産学校給食を入り口に幼稚園も小学校も積極的に食農教育
――地場産野菜にこだわる島根県八雲村学校給食センターの取組み――
・・・(フリーライター)おおい まちこ/78
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