「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」 機関誌
第25号:特集のねらい
◆農家は、使えるITを待っている
「毎日パソコンを見ないと落ち着かん」という八三歳の農家のおばあさんがいます(詳細は八〇頁)。見ずにいられない魅力的なコンテンツとは、自分の出荷成績。「山の葉っぱをお金に換えた産地」として知られる徳島県上勝町の「つまもの事業」の参加農家には、毎日「どこの市場に、いくらで、どれだけ売れたか」のデータと売上順位情報が送られてきます。今後の「販売動向予測」や「明日の出荷目標数値(予約制)」も届き、農家はそのデータを分析して明日は何をどれだけ出すか、一人ひとりが経営者として「ゲートボールよりよほどおもしろい」とやる気をふくらましています。
農家のやる気を引き出す、役に立つ「IT(情報通信技術)システム」なら、お年寄りでも孫に教わりながら自分のものにします。町の第三セクターが高齢者でも使いやすいソフトと専用端末を提供していますが、それが「月二万円のリース」でも、見ずにいられないものなら利用が定着します。
「直売所での売れ行きが家にいてもわかればいいのに」という出荷農家のニーズに応えて「双方向FAXシステム」を実現した愛媛県の「内子町フレッシュパークからり」(詳細は二九頁)、携帯電話の画面から自分の出荷物の一時間ごとの残量がわかる岩手県の「江刺ふるさと市場」の「地産地消システム」(詳細は六八頁)。いずれも、ITの活用が農家のやる気を高めています。
◆情報の受信者から発信者へ
ITの活用は「本来の農業のポテンシャルを何倍にも増幅することができる」(一七頁、北海道大学山本強教授)。農家を情報の受信者だけでなく、発信者にもするからです。
いま、農家の主体的な「IT活用」として注目されているのが「農家のインターネット産直」です。「売れるホームページづくり」で成果を上げている実践農家とそのサポート役の行政マンとNPO主宰者の座談会(詳細は四九頁)は、都市の消費者に「写真を活かして農家の暮らしと思いを丸ごと伝える」ことの大切さを語り合って、サポートのあり方にも深い示唆を与えてくれます。
地域に根ざした「IT活用」の支援へ、本号をご活用ください。
〈主な内容〉
○IT活用による農山漁村の活性化
――「e−むらづくり計画」の策定とモデル地区の支援
・・・農林水産省農村振興局農村整備課・総合整備事業推進室 課長補佐 熊谷 徹/4
○ITのための農業でなく農業のためのITを
――IT化で強くなれる農業とは?
・・・国立大学法人 北海道大学情報科学研究科教授 山本 強/10
○IT活用で農村定住者を増やす
――就業機会を創造する農村型テレワークセンター(IT拠点施設)
・・・国立大学法人 熊本大学 教育学部 教授 山中 守/18
○農村の直売所をITでさらに活気づける
――愛媛県内子町の「内子フレッシュパークからり」のIT活用を中心に
・・・元「内子フレッシュパークからり」企画情報部長 森本純一/28
○農山漁村からの情報発信はここがポイント
――グリーン・ツーリズムポータルサイトへのアクセスの傾向から
・・・(財)都市農山漁村交流活性化機構 情報交流推進部長 茅原 裕昭/38
■実践提案座談会
「売れるホームページづくり」で 農業も農家も元気が出る
・・・(朝倉 雪/橋本 守/角井洋美/池上健一/月岡 徹/冨田きよむ)
今やっていることとインターネット産直――出席者の自己紹介/インターネット産直を始めたきっかけは?/農家の暮らしと思いを丸ごとホームページに/売れるホームページを作るには/福井県内のメーリングリストが威力/対人販売であることの面白さと責任の重さ/新しい普及活動のかたちが見えてきた/全国にアグリコを網目状にはりめぐらす――残された時間は少ない/48
○ITの活用で「地産地消」を実現
――「地産地消システム」で急成長の岩手県江刺市「江刺ふるさと市場」の取組み/68
○高齢農家のやる気を引き出すITシステムを開発
――年商二億五千万円の「つまもの」ブランド産地に成長した徳島県上勝町/78
○IT活用による在宅健康管理システムの充実で「老後の心配がいらないまちづくり」
――「一〇〇歳への挑戦」をテーマにトータル・ケアのまちづくりを進める福島県西会津町/86
●原稿を募集しています
「過疎地に人を増やすには」、「都市近郊農業をどうするか」など、ご意見などお寄せ下さい。
ご寄稿は、「ご意見記入フォーマット」への入力か、1000字を超える場合にはEメールか郵送で下記へお送り下さい。
●定期購読者募集中です
農業・農村の役割を多角的に考えようという「行動」をご支援いただくため、定期購読者を募集しています。希望号よりの誌代(1年分<年4回>1600円)を前納いただいた方には送料サービスで、発行のつど直送いたします。
†お申し込みは下記へ。
(事務局) 農文協提携事業センター 「行動」機関誌係
〒107-8668 東京都港区赤坂7−6−1
TEL 03-3585-1144 FAX 03-3585-6466
Email kurita@mail.ruralnet.or.jp
トップに戻る