「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」 機関誌
第29号:特集のねらい
◆子どもたちや後継者にも魅力ある集落づくり
今回の特集では、2001年の本誌8月号(14号)で特集した「直接支払制度をどう活かすか」の第3弾として、「住み続けたい、戻りたくなる集落づくり」の提言と実践事例をお届けします(ちなみに第2弾は「高齢化集落を元気づけるために」)。
「中山間地域等直接支払制度」は、丸5年を経過し「将来に向けた農業生産活動等の継続に向けた動きや集落機能の活性化も見られた」とされる一方、「3割弱の集落協定においては将来に向け軌道に乗りきれない状況にあり」とされ、「将来に向けて農業生産活動を継続する前向きな取組を促す仕組みとする」(農水省「検証と課題の整理」)などの検証結果を踏まえて制度の見直しが行なわれ、この4月から継続実施されることになりました。
制度発足当時(2000年)から「5年先のことを考えると活動が継続できるか心配」と、制度利用を躊躇する人々・集落が少なくありませんでしたが、それから5年、東大の小田切徳美氏は「“平均年齢が5歳高齢化する”なかでの、新たな営農システムの意識的な構築が重要であることは間違いない」と指摘、「(集落協定において)女性や若者も含めた話し合いの場作り」に取り組むこと等を提言しています。農林水産省は「集落協定間の連携を推進することの必要性」をあげています。
現場では、「子どもたちが、集落に誇りを持ち、将来もここで暮らし続けたいと思ってもらえるよう……」(佐賀県七山村大白木集落)、「今は町にでている後継者たちが、定年後に『帰りたいなぁ』と思えるような、活気ある集落にしていきたい」(富山県氷見市岩ケ瀬集落)、「帰郷者の中に余生を生地の竜口で送りたい希望があれば区を挙げて助成したい」(三重県名張市竜口区)など、集落の今後の担い手を迎えるための取組みに励んでいます。新たな営農システムが構築され始めた集落等も、少ないが散見されます。定年帰農者や新規就農者が活躍できる場づくりにも中山間地域等直接支払制度は大いに役立っています。
「今後、新たな仕組みの下で、さらに多くの集落に地域農業全体の課題の解決に自らが取組んで頂き、充実した五年間の活動を実施されることを期待」(農林水産省・野原弘彦氏提言)して本号をお届けします。
〈主な内容〉
○「中山間地域等直接支払制度」新対策のとらえ方・活かし方
――いま地域では、何をすべきか―
・・・東京大学大学院助教授 小田切 徳美/4
○もっと広域での集落協定を目指し 県下市町村に「一協定一農場」を提案
――「あり方検討会」の検討結果を踏まえ、マニュアル作成などにより地域への浸透をはかる新潟県
・・・新潟県農林水産部農政推進課 白井 敏彦/16
○「知恵袋」「かわら版」等で悩みと情報の共有化を
――旧対策からHPに「集落協定の『知恵袋』」を開設、「集落協定『かわら版』」を発行しつづける山口県
・・・山口県農林部農村振興課 井上 興/24
○新対策で必須要件となった保全マップの作成に力を入れる熊本県
マップづくりの現場・山都町からの実践レポート
・・・熊本県山都町農林振興課 伊田隆信/30
○将来に向けて農業生産活動を継続できる仕組みづくりを
――この4月にスタートの「中山間地域等直接支払制度」新対策の概要
・・・農林水産省農村振興局 中山間地域振興室・課長補佐 野原 弘彦/32
○町に出ている後継者たちが、定年後に「帰りたい」と思える集落にしたい
――富山県氷見市岩ケ瀬集落と営農組合の取組み/44
○子どもから高齢者まで全員が参加 集落の子どもたちが住み続けたくなる地域づくり
――佐賀県七山村大白木集落の「夢プラン」/50
○定年帰農者を中心にサル害防止対策、「ふるさとの会」が“里帰り”の呼びかけを
――三重県名張市竜口区の取組み
・・・竜口区区長 谷川 正行/58
○新規就農者が直接支払制度の取組みに大活躍 高齢化等で耕作放棄された農地も引き受ける
――群馬県倉渕村木ノ下榎ノ木集落の取組み/64
○全戸アンケート実施で、活動内容を徹底的に協議 体験農業、グリーンツーリズム、直売を実施
――北海道長沼町六区集落の取組み/70
○将来に向けての話し合いのなかから地域の担い手として農業法人を設立
――島根県日原町堤田集落と「農事組合法人つつみだファーム」の取組み
・・・益田農林振興センター農業振興グループ 笠松 真美/76
○直接支払制度を活用し、大型機械の共同利用で三集落一体の農場を目指す
――岩手県宮守村・宮守川上流生産組合の取組み/80
○畑地の耕作放棄地解消の取組みから、水田の集落営農実現に向け、水稲の刈取り等の作業受託を計画
――福島県三春町貝山集落の「プロジェクト21」
・・・明治大学農学部専任講師 橋口 卓也/88
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