「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」 機関誌
第30号:特集のねらい
◆都市へ「農業・農村の魅力」を発信する
「地産地消」で肝心なことは、地域の生産者と消費者をつなげて、まずは旬の味を地元のみんなで楽しみ、その豊かさを共有すること。ここ数年、農産物直売所が各地に設立され「地産地消」は広がりをみせていますが、この「地産地消」について農林水産省の緒方弘志氏は、その提言で「消費者が生産者と『顔が見え、話ができる』関係で地域の農産物、食品を購入する機会を提供すること」とし、その取組みの範囲については「活動の広がりによって様々に判断していくことが必要」と述べています。
「農産物直売所こそ地産地消運動の主役」と述べる田中満さんは、「(農産物直売所の)近くに農家レストラン、農産加工体験施設を設けて地域食文化を提供し、農業・農村工芸等の体験施設で農業・農村の大切さを啓発し、グリーン・ツーリズムなどの地域活動や農村文化活動を紹介する」など、農村総合産業化を目指すことを提言しています。
実際、農村の現場では、地域の素材を活かしたその地域ならではの特産品や村々に伝わる郷土食など“地域の魅力”を都市の消費者に伝え、提供する取組みに励んでいます。農産物直売所や農村レストラン等を舞台に“農業・農村の魅力”を発信、村に人を呼び、注文に応えて都市の消費者にまで、新鮮な農産物等や懐かしい郷土料理を宅急便等で届けたりしています。
こうした「地産地消」の取組みを、「食と農と市民の健康をつなぐ」行動プランの中心に位置づけている京都府亀岡市や、20年以上も前から地場産給食を提案・実施し、食材を着々と地元産に切り替えてきている愛媛県今治市など行政の熱い支援があるところでは、その取組みに広がりと深化が感じられます。
「食を見直し、農との関わりを身近なものとして再認識させる絶好の機会である地産地消の活動を一層活性化」(農林水産省・緒方弘志氏提言)させることを期待して本号をお届けします。
〈主な内容〉
○多様化する消費者ニーズに積極的に応え「地産地消」の全国展開を
農林水産省生産局総務課 生産振興推進室・課長補佐 緒方 弘志 /4
○地場産給食二〇年の今治市から 「地産地消」推進への実践的提案
愛媛県今治市農林振興課 地産地消推進室長 安井 孝 /12
○新鮮な農産物を提供する段階から 加工・調理し地域の味として提供する段階へ
――「地産地消」の今日的意義と今後の方向
大阪府立食とみどりの総合技術センター・主任研究員 内藤重之 /22
○「地産地消」の推進は、農産物直売所のさらなる発展から
――つねに地元産の農産物・加工品にこだわり、農村総合産業化を目指す
株式会社 農村開発リサーチ 田中 満 /30
○「新しい食生活指針」の実現へ 食と農と市民の健康をつなぐ
――京都府亀岡市の「食・農・健康・にぎわい行動プラン」/38
○農業・農村の魅力を積極的に発信「体験交流型の直売所」
――秋田県大館市の「陽気な母さんの店」の取組み/48
○「黒」にこだわる健康食品と田舎料理で都会人の心をつかむバイキングレストラン
――農・工・商・役場が連携、佐賀県山内町「黒髪の里運営協議会」の取組み/54
○四万十川中流の村の安心野菜を高知市の消費者に届け、伝統食で人を呼ぶ
――高知県十和村「おかみさん市」の取組み/62
○安全で安心な野菜を将来を担う子どもたちに食べてもらいたい
――「食育」に力をいれる、福岡県朝倉町の「学校給食 竹ん子会」
「学校給食 竹ん子会」会長 久保ヨシエ(農業) /69
○旬の味・かあさんの味を届けたい 地元食材が詰まった「地場産弁当」を町民へ
――岡山県美咲町の加工グループ「さくら工房」の取組み/72
○少量多品目野菜の商品化をめざす 百匠一品の「こっぽい屋」
――福井県・池田町「一〇一匠の会(いちまるいちたくみのかい)」の取組み
(財)池田町農林公社 事務局長 間脇正博 /78
○米を作って安定的に売りたいと町内産米100%の健康食品「発芽玄米」とお粥を開発
――北海道鵡川町 (株)フラワーヒルズの取組み/82
地元十勝産の食材で盛り上がる「北の屋台」
――北海道帯広市・北の起業広場協同組合の取組み(坂本和昭)
地産地消の推進に一役買う郷土料理レシピ集「あまるめの美味いもの」
――山形県・余目町地産地消推進協議会の取組み(佐藤美穂)
給食の主食(ご飯、パン等)を県産米・小麦に切り替えた埼玉県学校給食会(千島宏一)
「食育」を重視した小浜市の「食のまちづくり」(中田典子)
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