「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」 機関誌
第36号:特集のねらい
◆「地域の水田農業の総合力」向上にむけて
平成16年4月にスタートした米政策改革は、「米づくりの本来あるべき姿」を目指して、この4月から第2ステージへ移行します。今回の特集は、前号(35号)で特集した「需要を伸ばす お米の売り方」に引き続き、「地域水田農業ビジョン」実現への第2弾として、水田の高度利用へ向けた「地域の特色を活かした水田農業の展開」の提言と実践事例をお届けします。
全国の多くの地域で「水田農業ビジョン」が策定されてから3年、小麦や大豆など転作作物の生産・販売が軌道に乗ってきている地域も出てきています。「なんで今さら鳥のエサを?」と言われた雑穀が、「いまや需要に追いつかない状態」だと嬉しい悲鳴をあげている岩手県花巻市水田農業推進協議会。外国産小麦頼りになってしまっている「さぬきうどん」を、「本物の『さぬきうどん』を復活させ、次の世代に残していきたい」と生産者と加工業者が力を合わせて、“さぬきうどんに適した”小麦の作付けを大幅に拡大し、定着させている香川県多度津町。「飼料イネは、いまや地域の農業に欠かせない」と、耕作農家と畜産農家が連携して新しい段階の地域農業を築きつつある宮崎県国富町等。いずれも「水田農業ビジョン」で明確に位置づけたことが力になって、地域としての取組みに拡がっており、「集落営農」等の担い手も育ってきています。
こうした先行事例に見られる豊富な創意工夫からなにか一つでもヒントやアイデアを得て、自らの地域の水田農業ビジョンを見直して豊かなものにし、地域の総意により産地づくり交付金の重点的活用を促進して、地域が元気になる「新たな産地づくり」を進めたい。
この特集では、消費者・実需者のニーズに的確に応えた転作作物の生産・販売をどのようにして実現するか、その提言と先行事例、基礎情報を紹介しました。「地域の水田農業の総合力」を向上させるために、そして「集落営農」等担い手の確保と経営の安定のために、この特集をお届けします。
〈主な内容〉
〇地域水田農業ビジョンの さらなる高度化・実現に向けて ビジョンの改訂と毎年度の振興管理を
農林水産省生産局農産振興課 /4
〇「地域の個性を活かした魅力ある水田農業」を どう展開するか
――その地でとれる小麦・大豆等を「農工商」連携で加工・販売するのが基本
中央農業総合研究センター 研究管理監 長野間宏 /10
〇埼玉県の学校給食は ごはんもパンもうどんもすべて県産
――地場産給食を進める埼玉県学校給食会から
財団法人埼玉県学校給食会事務局長 高鷲幸助 /18
<カコミ>おいしいパンの原料小麦を自信を持って供給(小麦栽培農家 原秀夫)/25
〇飼料米で拓く 二十一世紀型アジア水田農業の耕畜連携
東京大学大学院農学生命科学研究科教授 谷口信和 /26
〇「日本一の雑穀の里」花巻では さらに雑穀の付加価値を高める商品開発を展開
――岩手県花巻市水田農業推進協議会と、加工・販売を一手に引き受ける(株)「プロ農夢花巻」等の取組み /32
〇丸岡在来のソバにこだわった「十割そば」の魅力による地域づくり
――福井県丸岡町水田農業推進協議会と「丸岡そば振興会」の取組み /38
〇「地元の小麦でうどんを作りたい」をバネに さぬきうどん用小麦品種の作付けを拡大
――香川県多度津町の共同生産組合「豊原八幡会」と製粉業者の取組み /44
〇「子どもたちに安全な給食を」を合言葉に 地場産小麦・大豆等の加工品シリーズを提供
――市行政、学校栄養士会、JA、農産物生産者等が知恵を持ち寄る
高崎地域水田農業推進協議会・事務局長 田口豊(JAたかさき 営農部長)/52
〇“休止坑道”を活かした熟成味噌を核に 地元消費者との交流を深める
柵原地域水田農業推進協議会・事務局 鳥越 誠(津山農協南部営農センター)/58
〇地域連携型農業生産法人を核に 小麦・大豆・飼料米等の地産地消へ踏み出す
――北海道留萌市水田農業推進協議会と(有)緑萌の取組み /62
〇葉タバコ後作の飼料イネは いまや地域の農業に欠かせない
――民・民の連携で、地域の安定した資源循環を築き上げた宮崎県国富町 /68
〇畜産農家の協力で荒れた水田に和牛を放牧 集落の景観が蘇り、獣害にも効果
――広島市(旧湯来町)地域水田農業推進協議会と小多田集落の取組み /74
◆小麦・大豆・飼料イネの知っておきたい基礎情報 /80
◇<連載> 農林水産省の重点政策関連情報コーナー /86
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