「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」機関誌
第41号:特集のねらい
◆市民の参加で、都市に農業・農地を残す取組みも
都市住民(市民)にとって身近なのに関係が浅かった都市農業が、いま新たな展開を見せています。都市農業・農地は、新鮮で安全・安心な農産物を供給するだけでなく、市民に楽しみや生きがいを提供し、健康の維持にも役立っているのです。各地に広がる農産物直売所、市民農園、農業体験農園、地場産給食等の取組みを通し、農業者と消費者の交流が深まっています。市民のいのちと暮らしを支える都市農業・農地の時代になってきたのです(後藤提言)。やりがいを求めて、市民が都市農業へ積極的に参加し始めました。
都市農業においても、農業に従事する人たちの高齢化が進み、しかも固定資産税・相続税など農業を継続する際の不安(支障)も大きく、後継者難という問題を抱えています。こうした農家と農業との触れ合いを求める市民をつなぎ、都市に農業・農地を残す取組みも始まっています。この号で紹介した秦野市の「はだの都市農業支援センター」、札幌市の市民農業講座「さっぽろ農学校」、町田市のNPO法人「たがやす」などは、農作業をしたい市民と農地の管理が困難になっている農家とを結ぶパイプ役となり、都市農業を支援して地域に活気を呼び戻しています。
いま市民のニーズに応えて人気なのが農業体験農園。農家が開設して経営・管理するもので、利用者(市民)は農家の指導を受けながら作付けから収穫までの農作業を体験。利用者と農家、利用者同士がコミュニティーを形成。農業体験農園で農業への理解を深めるとともに農のある暮らしを求めて、郷里等農村へ定年帰農する人も出てきています。
本号では、消費者にとって身近な存在であるという都市農業の特性を活かして、「都市住民が農業に親しみ、農的暮らしが味わえる場づくり」を目指し、その実現に向けた「提言」と先行的に取り組んでいる事例を紹介しました。
いまある都市農地を「農地としていかに活用するか」が、これからの都市政策「ゆとりあるまちづくり」のコンセプト。都市住民のニーズに応えた住民も参加した「農あるまちづくり」「都市農業振興計画」策定の素材として本号をお届けします。
〈主な内容〉
○都市住民のニーズ等を踏まえた 都市農地の保全と都市農業の振興を
農林水産省農村振興局農村政策課 都市農業・地域交流室 /4
<農林水産省提言関連資料>都市農業の振興に関する平成20年度予算 /12
○いのちとくらしを支える都市農業の展開をいかに進めるか
武蔵大学経済学部教授 後藤光蔵 /14
○新たな都市農業のグランドデザインを描く
――都市農業の維持・振興と進むべき方向性
(株)農林中金総合研究所・特別理事 蔦谷栄一 /20
○災害発生時に市民の安全確保と円滑な復旧活動に役立てる
――全国で最初に創設した横浜市の「防災協力農地登録制度」から
横浜市環境創造局 農地保全課 /26
○都市農地を活用したまちづくり
国土交通省土地・水資源局 土地政策課土地市場企画室&土地情報課 /30
○タケノコや米粉パンの販売で地域の消費者と交流、地産地消を実現
――福岡県北九州市「合馬農産物直売所」「大地の恵み1号店」などの取組み /34
○地元市民に農業の楽しさ伝授、農産物の生産から販売まで“協働”で実践
――神奈川県秦野市の「はだの都市農業支援センター」と農産物直売所「はだの じばさんず」等の取組み /42
○身近なレクリエーションの場・障害者等もホッとできる「ゆとり空間」を提供する「フォレストガーデン市民菜園」
――大阪府堺市とNPO法人「堺フェニックス21」&地元生産者の取組み /50
○全国に広がる消費者参加型の農業経営「農業体験農園」 農業理解者の裾野も広げる
――東京都練馬区と農業体験農園「緑と農の体験塾」等の取組み /56
○人手がほしい農家と市民が手をつなぎ、都市に農地を残す
――東京都町田市、農業者と消費者が共同で設立したNPO法人たがやすの取組み
NPO法人たがやす理事長 奥脇信久 /62
○農作業ボランティアや農業と市民をつなぐパイプ役「農業体験スタッフ等」を育てる
――札幌市の市民農業講座「さっぽろ農学校」とNPO法人「さっぽろ農学校倶楽部」の取組み /68
○地場産農産物を使った学校給食実現に「力」 新たな地域連携ネットワーク
――愛知県「大治町地産地消学校給食会」の取組み /76
○<ビデオ紹介>農ある都市こそゆとりあるまち
――DVDビデオ「都市農業の応援団を育てよう」取材レポート
全国農村映画協会 森田久雄 /84
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