● 歴史と文化が交差した「鯖街道」


 若狭の国・福井県、小浜城下から京の出町柳辺りまで、約80kmの街道は古くから「鯖街道」と呼ばれてきました。これは13世紀の初期にできた若狭街道のことで、戦国時代から江戸時代にかけ、若狭の海でとれたサバがこの道を通って京へ運ばれたことから、「鯖街道」の名で呼ばれるようになりました。
 渓流魚の佃煮、鯖のなれずし、栃餅など朽木の自然の中から生まれた品々がこの街道筋で売られました。また、奈良時代、朽木谷から「朽木の杣」、材木を東大寺の建築用材として筏で搬出した記録や、貝原益軒の『諸国めぐり』に、朽木を材木の名所として記されていることなど、朽木は木工品の産地としても昔から知られ、塗物の椀や盆などもこの道を通っていきました。
 このように鯖街道は、京都をはじめ各地へ朽木の産物が流通し、同時に都の文化・技術も行き来した歴史と文化の交差点だったのです。