● 幼いころの記憶がよみがえる


 朝市がピークをむかえるころ、栃餅保存会の店先にも人だかりができています。常連さんもできてお互いに会えることが楽しくなり、さらに儲かれば楽しさは倍増します。
「朝市に来れば栃餅もなれずしも必ずお店に並べられている。村の伝統の味をいつ来ても楽しめるという安心感があるからこそ、常連さんが増えてきたんでしょうね」と栃餅保存会会長の河井さん。
 つきたての栃餅にはあんがまぶされ、パックに詰めるさきから飛ぶように売れていきます。つき上がるのを待ってましたとばかりに購入した女性は隣町に住んでいる人で、朝市には毎週来るそうです。
 「栃餅はこの朝市で初めて食べてからファンになっちゃったんです。この独特の風味がいいですよね」
 栃餅のファンも徐々に増えているようですが、河井さんによると常連の大半は昔、栃餅を食べたことがある人たちだといいます。幼いころの記憶を懐かしく思い出しているのかもしれません。つきたてを食べると、栃の実の香りがふわっと口の中に広がり、あんとの相性もピッタリ。「おいしい栃餅はいかがですかあ」と声を上げる栃餅保存会の人たち。この味は彼らの誇りでもあるのです。