● 伝統芸能の保存活動は、「結い」の精神を地域に復活させる

 ―「農業法人おくがの村」代表理事・糸賀盛人さん

 住民の心をつなぎとめ、集落に活気を呼ぼうとしたのが田植え囃子保存活動のねらい。「皆さんから浄財もろうて太鼓作ったら、わしらががんばらないけんな、という気になるじゃろ?」と糸賀さんは言います。伝統芸能を引き継ぐことは、趣味や好き嫌いをこえた住民の義務みたいなもの。田植え囃子の練習や準備が、世代や業種の違いをこえた住民の結びつきを強め、他集落との交流も深めました。
 保存活動をきっかけに共同意識と連帯感が強まり、かつての「結い」が集落営農の法人化へと発展。お年寄りが生涯現役で働ける「農業法人おくがの村」が設立されました。転作田などでも、お年寄りや女性が中心になってピーマンやカボチャを共同栽培。法人の設立以降、集落には耕作放棄地が出ていません。