● 伝統的な民家は高柳町の象徴

 ―「水曜会」メンバー・門出和紙工房・小林康生さん

 高柳町の門出地区にある茅葺き家の宿泊施設「門出かやぶきの里」は、この地方で本家を意味する「おやけ」と、分家の「いいもち」二棟からなり、どちらも農村の生活が体験できる交流の場として好評です。高柳町が整備し、地域住民の共同出資で設立された「門出ふるさと村組合」が管理・運営するという公設民営の施設ですが、「おやけ」はもともと、門出地区の青年を中心としたグループが、取り壊し寸前の茅葺き家を自発的に修復したものです。その「伝統的な民家は高柳町の象徴」と考えた若者たちのグループが「水曜会」です。
「過疎化が進んで、若者たちがどんどん町を出ていく。同時に、自分たちが生まれるずっと前からあった茅葺き家が、目の前で次々となくなっていく。何かせずにはいられない気持ちに突き動かされた」門出地区で紙漉き工房を営み、水曜会の中心メンバーとして茅葺き家の修復に力を注いだ小林康生さんは、地域おこしに立ち上がったときの思いをそのように話しています。
 また、小林さんは、地域おこしには町の内側に目を向けるだけでなく、都市との交流が必要だといいます。「人も物の流れも、農村から都市へと一方通行だが、都市も農村から学ぶことはたくさんあります。農村と都市が交流することで、お互いが理解を深め、それぞれの役割を自覚する。それが高柳町民の誇りにつながると思ったのです」と小林さん。
 こうした思いが、「高柳を都会の人に知ってもらう」ための朝市や、交流拠点「門出かやぶきの里」につながっていったのです。