● 参加するすべての人が楽しめる新しい祭り

 ―「ふるさと開発協議会」がきっかけで生まれた自主グループ「ゆめおいびと」

 「狐の夜祭り」は狐づくしです。起点の栃ヶ原で畳1枚分の大油揚げをつくり、夜祭り神事と称して神主のお祓いを受けます。油揚げを掲げた行列が歩く道のりは約2km。到着した漆島で油揚げを分け合い、「狐の踊り」を披露します。平成元年に始まった新しい祭だとは思えない凝りようです。
 この祭りは、「ふるさと開発協議会」に所属していた米山秀基さんや平沢文康さんが、「何かおもしろいことやろう」と自主的なグループ「ゆめおいびと」を結成して始めました。
「毎年9月に入ると、町の総合センターにメンバーが集まり出す。小物や衣装を作ったり、祭りの演出を考えたり、みんなそれぞれできることをやっているんです。特に会員や会則や会費なんか決めてなくて、学園祭のノリですね」と米山さん。祭り当日は、友人に声をかけ、世話役のスタッフが60人にもなるそうです。集まる理由はみな「おもしろいから」。
 平成元年に始めたときは祭ではなく、知人の画家、古川道泰氏の狐の絵をはさにかけ、ピアノ演奏を聴くスタイルでした。しかし、その「個展とピアノコンサートの夕べ」当日は雨。1枚1,000円のチケットを、友人、知人に売りさばいて資金づくりをしましたが、義理でチケットを買ってくれた人はいても、会場に足を運んだ人はわずかでした。「まったく散々な思いをした」といいます。そこで「自分たちも参加する人も、もっと楽しめるものを」とみんなが考えた結果、町に伝わる「藤五郎狐」にちなんだ狐の嫁入り案が生まれたのです。
 狐の面は高柳町の木彫師、牧野廣圓さんの作。行列が持つちょうちんは、小林さんが漉いた和紙。踊りは地元の盆踊りをアレンジし、音楽も盆踊りをベースに、ロックバンドを率いる米山さんが編曲、シンセサイザーで演奏したものです。油揚げづくりは知り合いの豆腐屋さんが力を貸し、衣装も手づくりです。
 回を重ねるごとに参加者は増加し、行列は、事前に申込みをして衣装をつける人が約70人。当日、飛び入りで提灯を持つ人が約250人。スタッフも入れて合計350人程度となります。会場となる漆島、栃ヶ原両地区は、行列や出店などで住民が全員参加するそうです。
 動員数も大幅に拡大し、最近は町内、町外から約3,000人が集まります。