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日本初等理科教育研究会 編集 2008年3月号 No526 活用力を育てる授業 |
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学習指導要領の改訂に伴って,学習指導要領の理念を実現するための課題がいくつか提示された。その中には,「知識・技能を活用する学習指導を充実させる」ことが述べられている。このことは,今後の指導においても「思考力・判断力・表現力等の確かな学力を育む必要」を強く感じるからである。 従来の理科学習では,自然の事物現象とのかかわりを通して,子どものもった問題から,変化が生じる原因を追究したり変化のきまりを見出したりして,対象への理解を深めるという授業展開が一般的である。このことは,多くの理科教科書の紙面が,ほとんどのこのパターンで構成されていることからもわかる。 このタイプの授業では,結論がわからない問題を解決していくので,多様な条件を吟味しつつ追究する活動になり,解決への過程は試行錯誤的で時間も労力も多くかかる。したがって,学習内容の理解にたどり着くまでに多くの時間を割かざるを得ず,獲得した知識や技能をほかの状況下で活用する活動までにはなかなか至らなかった。 ところが,最近の「読解力」の調査などからは,習得したはずの知識や技能が,学習した文脈とは異なる状況では,意外なほど使いこなせない,理解内容が有効に機能しないことが明らかになった。つまり,すでに学習した内容であっても「わかったつもり」「できるつもり」のことが,数多く存在するということが明らかになったのである。 これは,学んで得た知識や技能を活用する機会が少なかったことはもちろんだが,学習者自身が,自分の理解を「わかったつもり」と気づいていないことが大きな原因の一つだと考える。「わかったつもり」かどうかを判断するためには,一度“入力”した知識を,自分の外に“出力”する必要がある。知識や技能を活用する場を設けるとともに,学習者自身が,自分の理解のあり方を見直し修正すことのできる活動を,これまでの学習活動に追加する必要性がある。 次に問題となるのは,知識や技能を出力する場としてどのような「発展課題」を設定すれば,知識・技能の理解や定着も深まるのかということである。習得した知識や技能を,学習した文脈のまま当てはめて解答が出るレベルの課題では,それほど大きな効果は期待できない。一方,あまりにも条件が複雑すぎる難解な課題では,適用させる知識や技能を子ども自身が選択・判断できず,学んだ知識や技能の有効性を感じることができない。これも学習効果は薄い。 課題を解決するために必要な知識や技能がある程度明確になり,さらに,それらを適用するのに必要な前提条件など,解決に至るまでに付随する知識なども意識して,取捨選択できる「判断力」も求められるような,応用レベルの「発展課題」が求められる。 ほかにも活用力を育てるのに必要な条件は,いくつか考えられるだろう。 |
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