- 特集キーワード 田村高広
- インタビュー 浜口哲一氏に聞く
/「習得・活用・探究」は児童の思考に即しているか
- 新指導要領における理科の学習と探究 平田昭雄
- 「理科教育」と「習得・活用・探究」について 矢野英明
- 子どもの思考に即した授業の実践
─4学年「走れ モーターカー」─ 上原美子
- 主題研究を読んで 末永昇一
- 理科学習における「習得」のあり方
─6学年「ものの燃え方と空気」の学習を通して─ 栗和田耕
- 主題研究を読んで 藤間信夫
- 問題解決をするために「習得・活用・探究」するためのねらいを明確にした手立てを打つ
─5学年「命のつながり『メダカの誕生と成長』」の学習を通して─ 橋本大一郎
- 主題研究を読んで 田村高広
習得型学習と活用型学習,探究型学習は時系列の上に並べられており,この順序が必要のように思われてしまいます。例えば,単元のはじめにまず知識や技能を習得し,次の段階でそれらを活用する。そして,終末段階で探究するというようにです。知識を活用して探究型の学習へと発展させるためには,まず,知識を教えなければならないという発想につながります。例えば,4年生の水の三態変化の学習を例にとって言えば,水が沸騰するときの泡を見せて,泡は水蒸気だと教えてしまいます。その後,水蒸気についての検証実験を行っていくということでしょう。このような学習でも泡は水蒸気だという言葉のうえでの知識としては覚えることができるかも知れません。しかし,水が気体に変化している実感がないため,温めた直後に出る小さな泡(空気)も水蒸気だと考えたり,水蒸気が変化して湯気になることが理解できなかったりすることがあったように思います。
これは,これまで初等理科教育研究会が提唱してきた問題解決とは全く異なるものです。やはり,水から泡が出てきた事象に疑問を持ち,実験をしたり考えたりしながら,疑問を解決していくことが大切なのではないでしょうか。沸騰するとき,泡がたくさん出はじめると,湯気が多く出て,水が減り,温度が100度近くまで上がります。湯気を冷やすと水であることがわかり,泡を集めて冷やすと水になります。泡の出方やこれらの情報などから,泡は水が変化したものと気づいていきます。そして,それが水蒸気という水が変化したものであることを知るのです。初等理科では,子どもの思考に即した授業を考えてきました。泡を見た子どもは何を考え,どんな問題を持つのか。事象と出会った子どもの姿を見つめることから,授業がはじまるのです。知識・技能を習得しなければ学習がはじまらないという順序は,一考の余地がありそうです。
そこで,本号では,以下の点について考えてみたいと思います。
- 理科の学習で,習得・活用・探究をどのようにとらえると,子どもの生き生きとした問題解決が展開できるのか。
- 「子どもの疑問から問題を醸成し,実験結果を考察していく」という学習(問題解決)を通して,知識や技能の習得をしたり,考える力を育成したりすることはできないのか。
- 子どもの思考に即した授業という観点で見ると,まず習得型学習という考えはよいのか。
教え込み教育がだめで,ゆとり教育もだめだから,その両方をやればよいという構図にも見えます。もう一度,子どもの思考に即するという原点にもどり,理科教育について論じていただければと思います。(担当/田村高広)
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