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日本初等理科教育研究会 編集
初等理科教育
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2008年10月号 No533
習得・活用・探究学習と子どもの思考
10月号表紙
  • 特集キーワード 田村高広
  • インタビュー 浜口哲一氏に聞く
    /「習得・活用・探究」は児童の思考に即しているか
  • 新指導要領における理科の学習と探究 平田昭雄
  • 「理科教育」と「習得・活用・探究」について 矢野英明
  • 子どもの思考に即した授業の実践
    ─4学年「走れ モーターカー」─ 上原美子
  • 主題研究を読んで 末永昇一
  • 理科学習における「習得」のあり方
    ─6学年「ものの燃え方と空気」の学習を通して─ 栗和田耕
  • 主題研究を読んで 藤間信夫
  • 問題解決をするために「習得・活用・探究」するためのねらいを明確にした手立てを打つ
    ─5学年「命のつながり『メダカの誕生と成長』」の学習を通して─ 橋本大一郎
  • 主題研究を読んで 田村高広

 習得型学習と活用型学習,探究型学習は時系列の上に並べられており,この順序が必要のように思われてしまいます。例えば,単元のはじめにまず知識や技能を習得し,次の段階でそれらを活用する。そして,終末段階で探究するというようにです。知識を活用して探究型の学習へと発展させるためには,まず,知識を教えなければならないという発想につながります。例えば,4年生の水の三態変化の学習を例にとって言えば,水が沸騰するときの泡を見せて,泡は水蒸気だと教えてしまいます。その後,水蒸気についての検証実験を行っていくということでしょう。このような学習でも泡は水蒸気だという言葉のうえでの知識としては覚えることができるかも知れません。しかし,水が気体に変化している実感がないため,温めた直後に出る小さな泡(空気)も水蒸気だと考えたり,水蒸気が変化して湯気になることが理解できなかったりすることがあったように思います。
 これは,これまで初等理科教育研究会が提唱してきた問題解決とは全く異なるものです。やはり,水から泡が出てきた事象に疑問を持ち,実験をしたり考えたりしながら,疑問を解決していくことが大切なのではないでしょうか。沸騰するとき,泡がたくさん出はじめると,湯気が多く出て,水が減り,温度が100度近くまで上がります。湯気を冷やすと水であることがわかり,泡を集めて冷やすと水になります。泡の出方やこれらの情報などから,泡は水が変化したものと気づいていきます。そして,それが水蒸気という水が変化したものであることを知るのです。初等理科では,子どもの思考に即した授業を考えてきました。泡を見た子どもは何を考え,どんな問題を持つのか。事象と出会った子どもの姿を見つめることから,授業がはじまるのです。知識・技能を習得しなければ学習がはじまらないという順序は,一考の余地がありそうです。
 そこで,本号では,以下の点について考えてみたいと思います。

  • 理科の学習で,習得・活用・探究をどのようにとらえると,子どもの生き生きとした問題解決が展開できるのか。
  • 「子どもの疑問から問題を醸成し,実験結果を考察していく」という学習(問題解決)を通して,知識や技能の習得をしたり,考える力を育成したりすることはできないのか。
  • 子どもの思考に即した授業という観点で見ると,まず習得型学習という考えはよいのか。

 教え込み教育がだめで,ゆとり教育もだめだから,その両方をやればよいという構図にも見えます。もう一度,子どもの思考に即するという原点にもどり,理科教育について論じていただければと思います。(担当/田村高広)


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2008年
9月号 活用力を高める「深化課題」の開発
8月号 人間力の向上
7月号 「エネルギー」「粒子」概念の授業を考える
6月号 「ことば」を重視する理科の授業とは
5月号 自然・科学・実感 はじまる新しい理科!
4月号 PISA型科学的リテラシー
3月号 活用力を育てる授業
2月号 意味の理解を伴った知識や技能の習得のさせ方
1月号 「子ども理解」を深めるために
2007年
12月号 研修・授業分析の生かし方
11月号 授業力を磨く
10月号 子どもの発達と問題解決
9月号 今,福島が熱い! 全国大会への道
8月号 授業が成り立つ問題が見えてくる
7月号 実生活と授業をつなぐ
6月号 授業がぐっと深まるこの発問
5月号 授業における子どもの「ひらめき」
4月号 “状況に入る学び”と“状況をつくる学び”
3月号 “読解力”を育てる理科授業の改善
2月号 「何を」かくか 「いつ」かくか
1月号 児童に考えさせる実験結果のまとめ方
2006年
12月号 今,単元構成を考える
11月号 教えて考えさせる授業と問題解決
10月号 話し合いを深めるキーワードとは?
9月号 感性をみがく理科教育
8月号 知識の差,経験の差を乗り越える理科授業
7月号 幼・小・中連携を踏まえた学習指導要領改訂のポイント
6月号 「表現力」を理科で鍛える
5月号 知的ボルテージを高める理科授業
4月増刊号 学力低下を克服する 小学校理科の新展開
4月号 こうすれば楽しくなる,理科の授業!!―若い先生方とともに育つために―
3月号 小学校理科はこれでいいのか―学習指導要領改訂への提言―
2月号 問題解決の力を育む
1月号 子どもが「わかった」と実感できる授業
2005年
12月号 子どもの見方や考え方をとらえる
11月号 見えない世界を楽しむ
10月号 他教科との関連を踏まえた新世紀型理科教育
9月号 こだわりを育てる理科授業
8月号 確かな学力に高める「説明活動」
7月号 子どもの出番! 教師の出番!
6月号 先行学習の有効性
5月号 教師を理科好きにする“新しい校内研修”
5月増刊号 「真の学力」を育てる 理科の学習指導案集
4月号 ふるさとの自然に自信と誇りを育てる授業
3月号 個の学びを生かした 練り上げのある授業
2月号 豊かな「挫折」がある授業
1月号 自然を豊かに感じ、確かな科学を築く
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12月号 発展的な学習のアイデア
11月号 「問題解決」の原点
10月号 対話で変わる子どもの見方や考え方
9月号 わかる理科授業をめざして
8月号 21世紀型の教材研究
7月号 特集:子どものつくる「問題」、教師の考える「問題」
6月号 特集:みがけ! 感性
5月号 専門家の協力を得た授業
4月増刊号 小学校理科授業のレベルアップ読本
4月号 確かな学力を育てる理科授業
3月号 長期記憶に残る理科授業の工夫
2月号 「問題解決と学力」を問う
1月号 理科嫌いをなくす授業をめざして
2003年
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11月号 「わくわく導入」のあり方
10月号 科学的思考を育てる「基礎・基本」
9月号 ポートフォリオを生かす
8月号 教師の指導力を問う
7月号 ものづくりで科学する力を
6月号 どうする? 発展的・補充的な学習
5月号 飼育・栽培の楽しみ
5月増刊号 楽しい理科の導入の工夫
4月号 ワンランク上の学力をつけたい
3月号 学習指導要領をみつめなおす
2月号 学力低下への緊急提言
1月号 理科から総合へ
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11月号 絶対評価 私の実践
10月号 地域とつながる理科教育
9月号 わかる喜びをめざす理科の授業
8月号 教材化を図る教師の眼
7月号 自然体験活動のすすめ方
6月号 理科の授業と仲間づくり
5月号 センス・オブ・ワンダーの心を育てる
5月増刊号 理科に役立つ栽培植物
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3月号 感動を表現する子どもを育てる
2月号 現代日本の理科離れの危機
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10月号 ものづくりをどう位置づけるか
9月号 理科で育つ学力
8月号 「わかる」授業から「わかりあう」授業へ
7月号 事実を大事にした授業
6月号 生命観を養う理科授業
5月号 地域の自然 目のつけどころ
5月増刊号 もっと活かそう学校環境
4月号 特集:私の考える「よい授業」
3月号 特集:心に残る授業
2月号 特集:理科で育つ資質や能力
1月号 特集:心の世紀と理科の教育

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