- 特集キーワード 丸山典雄
- 座談会 現代の理科教育に息づく『自然の観察』の価値を語る
日置光久,露木和男,一寸木肇,村山哲哉,丸山典雄
- 『自然の観察』は教育の原点 武村重和
- 『自然の観察』が語りかけるもの 菅井啓之
- 「感じる」心を育てる
─季節遊びと野菜作りの実践から─ 吉澤良子
- 主題研究を読んで 露木和男
- 「わからなさ」に向き合う心の醸成
─子どもに学ぶ教師の生き方を通して─ 恒川徹
- 主題研究を読んで 木村健治
- 自然観察を楽しむために 鷲見辰美
- 主題研究を読んで 一寸木肇
理科は,自然を扱い,自然から学ぶ教科です。やはり,自然を見る力,自然を感じる力が子どもに必要です。そのためには教師にも,自然を見る力,自然から感じとる力が必要になります。
そして子どもには,暗記させた知識ではなく,実感し,自らが見出した知識を身につけさせていくことが,求められています。
日本人は,昔から,自ら見出した自然のしくみを活用して生活してきました。自然と一体となり自然を感じ,そのことから見出した自然のしくみが,どのように利用されているのか,どのように活用していけるのか,あるいは活用していくべきなのかを考えることが大切です。そして,自然とどのように関わっていくのか,といった自然観を,今の子どもたちにも育てていきたいものです。
今月号では,昭和16年に発行された『自然の観察』という理科の教師用書の復刻版の出版に関わられた先生方に,『自然の観察』の理念などについて,お話を伺いました。この『自然の観察』という70年前の教師用書には,すでに新しい時代の新しい理科教育の姿が語られています。子どもは,自然という環境を介して,自ら育つ力を持っているのです。
『自然の観察』は,子ども用の教科書ではありません。子どもにとっての教科書は,自然そのものであり,直接,子どもが自然に親しむことが,何よりも大切にされなければならないとされています。子どもが自然に親しみ,主体的に観察を行っていくための「教師用書」が『自然の観察』なのです。
内容の一つに,「花摘み」「オオバコの相撲」「ナズナの穂のがらがら」などのように,草木と遊んでいるうちに子どもが自ら気づくという活動があります。この内容には,「野山の自然に接しさせ,自然とともに遊ばせる」ことと「教室や校庭に閉じこもらせないで,広い野山を学習の場とする」といった大きな意味が込められています。
体験的な学習が重視されてきている今,『自然の観察』に示されているこれらの内容は,不易なものであり,現在の自然観の原点と言うべきものです。
理科は,自然を対象にして学ぶものであり,まず,自然を観察する力からはじまると言えます。今月号では,理科の本質である自然の中で子どもに育つ力について考えてみたいと思います。
(担当/丸山 典雄)
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