- 特集キーワード 田村高広
- インタビュー 平野弘道氏に聞く/臨場感あふれる授業がおもしろい
- 「ものづくり」の意義 露木和男
- ものづくりを通して見えてくるもの 藤間信夫
- 「ものづくり」で生きた知識を獲得する
─3学年「電池の通り道」の実践から─ 原口淳一
- 創造力を発揮するものづくりの授業デザイン
─3学年「風のはたらき」の学習を通して─ 平澤林太郎
- ゴムの伸びと走る距離の関係性を捉えさせる学習 古屋皇
日本初等理科教育研究会副理事長の末永昇一氏は,著書『作り直しでアイデアがどんどんふくらむ楽しいモノづくり』の中で,理科の授業のものづくりによって,子どもたちに次のような学力をつけることができると書いています。
(1)生きた知識を身につけることができる
(2)考える力を養うことができる
(3)創造力を働かせることができるようになる
(4)集団の中で楽しく生きていけるようになる
一方,文部科学省は,「ものづくり教育・学習に関する懇談会」報告書の中で,ものづくり教育のねらいとして,次のような点をあげています。
○ものづくりの体験は,作る喜びや完成の達成感を味わうことができ,日常の教育・学習では得にくい驚きや感動を得ることができる。また,知識や理論を実感を伴って理解できる。
○専門分野に優れるということが社会人として重要であるとの理解を進めるとともに,技能者や技術者の社会的な役割の重要性の理解を深める。
○主体的に取り組む態度や創造力,ひとつのものに取り組む集中力や忍耐力,協調する態度を醸成することができ,望ましい職業観や勤労観を育成することが期待される。このように,「ものづくり」は「人づくり」とも言えるものである。
末永先生の考えと文部科学省のねらいは重なる点が多くあります。生きた知識,考える力,協調する態度など,ものづくりの教育のなかで,子どもたちが育つことがたくさんあるようです。単純にものをつくるというだけでなく,教師はその過程でのねらいを明確にして,学習を進める必要がありそうです。
そこで本号では,以下の点について考えてみたいと思います。
○ものづくりで育つ学力とは,どのようなものがあるのか
○具体的にどのようなものづくりの活動がどのような力を伸ばすのか
○ものづくりのなかで人間関係の力が育つとあるが,実践のなかでどのような変容が見られるのか
○ものづくりと問題解決の関係について
初等中等教育における理科離れが問題となって,久しくなりました。ものづくりは理工系の学生のための教材のように論じられることがありますが,そうではありません。子どもたちは,自分の頭の中でイメージしたことを実際に製作することが好きだと思います。実感を伴った理解とは,正にそのような学習のなかで生まれるのではないのでしょうか。すべての子どもたちが,自分で考えて作ったものやその過程には,問題解決する力に通ずるものがあると考えます。理科の学習で培ったものづくりの力は問題解決の力となり,さらには生きる力へとなっていくものと思います。
(担当/田村高広)
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