- 4学年「金属,水,空気と温度」の教材活用 教材提供:株式会社 内田洋行
- 特集キーワード 前川良平
- インタビュー 加藤久佳氏に聞く/化石研究の魅力
- 実感を伴った理解をめざす学習指導とは 安彦忠彦
- 実感を伴った理解への近道を,子どもの思考の道筋に学ぶ
─4学年「人の体のつくりと運動」の学習を通して─ 澤柿教淳
- 観察・結果を共有化し,実感を伴った理解を図る指導法の工夫
─6学年「植物の水の通り道」の実践を通して─ 杉野義明
- 主体的な問題解決の活動で実感を伴った理解を
─5学年「物のとけ方」の実践を通して─ 橋健一
- 「活用」させることで「実感を伴った理解」を目指す授業
─6学年「電気の利用(発電)」の実践─ 田中秀明
実感を伴った理解を目指した学習をすることにより,子どもは主体的に考えるようになり,発見したきまりのよさを感じたり,より深く理解したりすることができるようになることがわかってきた。「実感を伴う理解」について,次の3つの側面から説明されている。
学習指導要領解説理科編
1.具体的な体験を通して形作られる理解
2.主体的な問題解決を通して得られる理解
3.実際の生活や自然との関係への認識を含む理解
6学年「てこのはたらき」を例に,どういうことなのか考えてみたい。
1.具体的な体験を通して形作られる理解
5kgの砂袋が2人の体重とつり合っているよ。 |
この学習では,モーメントを導き出すことをねらいの1つとしている。実験用てこだけで学習すれば,子どもは簡単にきまりを導き出せるだろう。しかし,てこを使うことのよさに気づくだろうか。実用てこを使い,「60kgもある砂袋でも指一本で持ち上げられる」「たった5kgしかない砂袋でも,自分の体重を支えられる」など,具体的な体験を通すことで,はじめて子どもはてこを使うことのよさに気づけるのではないだろうか。問題を解決したいという子どもの主体性は,諸感覚を通して得た体験がもとになって生まれるのである。そうした体験が,問題解決への見通しにつながるのである。
2.主体的な問題解決を通して得られる理解
棒の重さが左右で違っているのが問題なんだね。 |
実用てこで,手ごたえが変化する事実を体感させることは大切である。しかし,手ごたえという曖昧な感覚を数値化する必要が出てくる。例えば,子どもは次のような発想を出す。(1)手で押していたのをおもり(砂袋など)にして数値化する,(2)モデルを使って確かめる(写真参照)。このように,問題を自分ごととして捉え,その解決に向けて実験方法を考えながら学習していく。このような過程を経てこそ子どもは真に納得し,深い理解へ至るのである。
3.実際の生活や自然との関係への認識を含む理解
てこを利用した道具は身の回りにたくさんある。はさみや栓抜き,トングなど,枚挙に暇がない。こうした道具を使ったときに,てこのきまりをもとに,どうしたらうまく使えるか考えることで,生活との結びつきが意識できるようになるのである。
このように,実感を伴った理解を目指すことは,子どもにとっての理科学習が充実することである。子どもが「わかった」「学んでよかった」と感じられる理科学習について,みなさんとあらためて考えていければ幸いである。
(担当/前川 良平)
|