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日本初等理科教育研究会 編集
初等理科教育
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2011年7月号 No566
実感を伴った理解
7月号表紙
  • 4学年「金属,水,空気と温度」の教材活用 教材提供:株式会社 内田洋行
  • 特集キーワード 前川良平
  • インタビュー 加藤久佳氏に聞く/化石研究の魅力
  • 実感を伴った理解をめざす学習指導とは 安彦忠彦
  • 実感を伴った理解への近道を,子どもの思考の道筋に学ぶ
    ─4学年「人の体のつくりと運動」の学習を通して─ 澤柿教淳
  • 観察・結果を共有化し,実感を伴った理解を図る指導法の工夫
    ─6学年「植物の水の通り道」の実践を通して─ 杉野義明
  • 主体的な問題解決の活動で実感を伴った理解を
    ─5学年「物のとけ方」の実践を通して─ 橋健一
  • 「活用」させることで「実感を伴った理解」を目指す授業
    ─6学年「電気の利用(発電)」の実践─ 田中秀明

 実感を伴った理解を目指した学習をすることにより,子どもは主体的に考えるようになり,発見したきまりのよさを感じたり,より深く理解したりすることができるようになることがわかってきた。「実感を伴う理解」について,次の3つの側面から説明されている。

学習指導要領解説理科編

1.具体的な体験を通して形作られる理解
2.主体的な問題解決を通して得られる理解
3.実際の生活や自然との関係への認識を含む理解

 6学年「てこのはたらき」を例に,どういうことなのか考えてみたい。

1.具体的な体験を通して形作られる理解

5kgの砂袋が2人の体重とつり合っているよ。

 この学習では,モーメントを導き出すことをねらいの1つとしている。実験用てこだけで学習すれば,子どもは簡単にきまりを導き出せるだろう。しかし,てこを使うことのよさに気づくだろうか。実用てこを使い,「60kgもある砂袋でも指一本で持ち上げられる」「たった5kgしかない砂袋でも,自分の体重を支えられる」など,具体的な体験を通すことで,はじめて子どもはてこを使うことのよさに気づけるのではないだろうか。問題を解決したいという子どもの主体性は,諸感覚を通して得た体験がもとになって生まれるのである。そうした体験が,問題解決への見通しにつながるのである。

2.主体的な問題解決を通して得られる理解

棒の重さが左右で違っているのが問題なんだね。

 実用てこで,手ごたえが変化する事実を体感させることは大切である。しかし,手ごたえという曖昧な感覚を数値化する必要が出てくる。例えば,子どもは次のような発想を出す。(1)手で押していたのをおもり(砂袋など)にして数値化する,(2)モデルを使って確かめる(写真参照)。このように,問題を自分ごととして捉え,その解決に向けて実験方法を考えながら学習していく。このような過程を経てこそ子どもは真に納得し,深い理解へ至るのである。

3.実際の生活や自然との関係への認識を含む理解

 てこを利用した道具は身の回りにたくさんある。はさみや栓抜き,トングなど,枚挙に暇がない。こうした道具を使ったときに,てこのきまりをもとに,どうしたらうまく使えるか考えることで,生活との結びつきが意識できるようになるのである。

 このように,実感を伴った理解を目指すことは,子どもにとっての理科学習が充実することである。子どもが「わかった」「学んでよかった」と感じられる理科学習について,みなさんとあらためて考えていければ幸いである。

(担当/前川 良平)


  

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5月号 イメージ化の有効性
4月号 新学習指導要領「理科」で育つ子どもの姿
3月号 活用型授業と理解深化
2月号 評価のしかたで授業が変わる―関心・意欲・態度
1月号 言語活動の「評価」
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10月号 確かな学力を育む理科の系統性(エネルギー・粒子)
9月号 メディアと問題解決
8月号 教科をつなぐ理科
7月号 子どもの学びと実験・観察
6月号 「A区分」新内容・新教材 こう授業する
5月号 生命・地球「B区分」の魅力にせまりたい
4月号 新学習指導要領で授業はこう変わる
3月号 子どもの問いかけをどう組織化するか
2月号 理科と「言語活動」
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8月号 教師と子どもをつなぐ板書術
7月号 環境教育と理科
6月号 学ぶ価値を実感する授業
5月号 今こそ,自然観察力を育てたい
4月号 新学習指導要領をどう実践するか
3月号 科学史を授業に生かす
2月号 「生命」「地球」概念の授業
1月号 科学的思考力を育てる
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12月号 実感を伴った理解
11月号 「伝え合う力」を育てる理科授業
10月号 習得・活用・探究学習と子どもの思考
9月号 活用力を高める「深化課題」の開発
8月号 人間力の向上
7月号 「エネルギー」「粒子」概念の授業を考える
6月号 「ことば」を重視する理科の授業とは
5月号 自然・科学・実感 はじまる新しい理科!
4月号 PISA型科学的リテラシー
3月号 活用力を育てる授業
2月号 意味の理解を伴った知識や技能の習得のさせ方
1月号 「子ども理解」を深めるために
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7月号 実生活と授業をつなぐ
6月号 授業がぐっと深まるこの発問
5月号 授業における子どもの「ひらめき」
4月号 “状況に入る学び”と“状況をつくる学び”
3月号 “読解力”を育てる理科授業の改善
2月号 「何を」かくか 「いつ」かくか
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8月号 知識の差,経験の差を乗り越える理科授業
7月号 幼・小・中連携を踏まえた学習指導要領改訂のポイント
6月号 「表現力」を理科で鍛える
5月号 知的ボルテージを高める理科授業
4月増刊号 学力低下を克服する 小学校理科の新展開
4月号 こうすれば楽しくなる,理科の授業!!―若い先生方とともに育つために―
3月号 小学校理科はこれでいいのか―学習指導要領改訂への提言―
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1月号 子どもが「わかった」と実感できる授業
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10月号 他教科との関連を踏まえた新世紀型理科教育
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8月号 確かな学力に高める「説明活動」
7月号 子どもの出番! 教師の出番!
6月号 先行学習の有効性
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4月号 ふるさとの自然に自信と誇りを育てる授業
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6月号 特集:みがけ! 感性
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2月号 「問題解決と学力」を問う
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10月号 地域とつながる理科教育
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7月号 自然体験活動のすすめ方
6月号 理科の授業と仲間づくり
5月号 センス・オブ・ワンダーの心を育てる
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3月号 感動を表現する子どもを育てる
2月号 現代日本の理科離れの危機
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9月号 理科で育つ学力
8月号 「わかる」授業から「わかりあう」授業へ
7月号 事実を大事にした授業
6月号 生命観を養う理科授業
5月号 地域の自然 目のつけどころ
5月増刊号 もっと活かそう学校環境
4月号 特集:私の考える「よい授業」
3月号 特集:心に残る授業
2月号 特集:理科で育つ資質や能力
1月号 特集:心の世紀と理科の教育

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