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日本初等理科教育研究会 編集
初等理科教育
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2013年8月号 No591
深い理解を促す活用型理科授業
8月号表紙
  • 8月の自然のたより 写真提供:増田和明
  • 特集キーワード 森田和良
  • インタビュー 鏑木良夫氏に聞く/わかってこそ,楽しい授業になる
  • 深い理解と表現を大切にした授業づくり
    ─認知心理学からみた活用型授業のあり方─ 植阪友理
  • つまずきを生かした活用課題の設定から学力保証へ 森田和良
  • 子どもが生きている形の知識を身につける活用型授業
    ─3学年「明かりをつけよう」の学習を通して─ 平澤林太郎
  • 活用課題による理解深化をめざして 川畑徹大
  • 身近な事物・現象と学びとのつながりに気づく児童の育成
    ─導入・活用に電気錠を用いた「電流の働き」の実践─ 下西秀樹

 


 新しい学習指導要領が実施されてから,「習得・活用・探究」「言語活動の重視」「学力保証」などのキーワードが出てきて,授業スタイルの見直しが図られようとしている。これは,従来の学習指導では十分とは言えない部分があるという実態の認識と,その改善策の開発・実行が必要であるという指摘であろう。

 教育改革や指導法の効果を検討する場合,これまでの多くの議論が「どのように子どもに学ばせるのか」という「入力」の部分に焦点を当てたものばかりだった。そこに,「子ども中心」の発想が重なり,子どもの主体性を重視し過ぎるあまり「教師が指導することを躊躇する」場面もあり,授業を受けても「わからない子ども」が数多くいるという学力低下の実態が明らかになった。このことの反省も,新学習指導要領への改訂には加味されていると捉える。

「入力のあり方」も大事だが,今,注目されているのは,学習したことがどの程度身についているのか,どのような場面で活用できるのかという,いわば「出力」の姿である。授業を通して子どもに「何が定着できたのか」が問われている。

 すばらしい授業だったと参観者から賞賛される授業があっても,その授業後に「定着できたものは何か」を個別に明らかにする理解度チェックなどは,ほとんどされてこなかった。これからの理科授業では,入力の仕方に工夫があるだけでなく,その授業によってどのような内容が,どの程度,定着できたのかについても,問われるようになったのではないだろうか。

 なぜならば,学習指導要領の内容は,どの子どもにとっても理解してほしい内容であると設定されているからだ。つまり,「最低基準」なのだ。すると,この「最低」が保証されたかどうかを把握するには,「入力の仕方」ではなく,「出力の結果」から判断せざるを得ない。学習した内容の出力場面の1つが,「活用」場面である。

 その活用を組み込んだ授業,つまり,「活用型理科授業」が,これからはよりいっそう必要になるのではないだろうか。児童が誤解しやすい内容,つまずきやすい場面などを意図的に設定して,児童の理解状況に揺さぶりをかける。このように,児童が自らの理解状況を見直す場が,深い理解に至るためには必要なのではないだろうか。ここには,教師の授業力や指導力などが求められるだろう。

 それでは,活用を組み込んだ授業を,どのように構成したらよいのだろうか。

 本号では,その具体的な「授業モデル」と,学習前と学習後で,どのように理解が深まったのか「児童の実際の変容」,さらに,活用を組み込んだ授業が成立するための「条件」なども紹介いただき,「活用型理科授業」の具体を明らかにしていきたい。

(担当/森田 和良)


  

Back Number

2013年
7月号 考察,まとめ指導のあり方
6月号 B区分の問題解決はこれだ!
5月号 観察・実験の技能向上策
4月号 全国学力・学習状況調査を踏まえた授業改善
3月号 活用を促す課題のあり方とその効果
2月号 子どもの問いが生まれる導入の工夫
1月号 言語活動を生かした問題解決を考える
2012年
12月号 問題解決再考
11月号 学力調査から見えた理科の学力
10月号 言語力を鍛えるノート指導のアイデア
9月号 理科における言語活動
8月号 エネルギー・環境教育を考える
7月号 自然を体験して理科の楽しさアップ!
6月号 理科授業に生きるおもしろ観察・実験
5月号 理科の授業作りが楽しくなる3つの方策
4月号 「科学的な思考・表現」を評価する
3月号 外部との連携で理科の楽しさアップ!
2月号 評価の仕方で授業が変わる「思考・表現」
1月号 新単元の成果と課題
2011年
12月号 新単元の成果と課題
11月号 推論する能力を育てる
10月号 未来を拓く問題解決 第50回全国大会
9月号 子どもの思考を深める板書
8月号 ものづくりと問題解決
7月号 実感を伴った理解
6月号 子どもを引きつける新しい「終末指導」の考え方
5月号 イメージ化の有効性
4月号 新学習指導要領「理科」で育つ子どもの姿
3月号 活用型授業と理解深化
2月号 評価のしかたで授業が変わる―関心・意欲・態度
1月号 言語活動の「評価」
2010年
12月号 理科における言語活動の充実
11月号 系統性を重視した指導(生命・地球)
10月号 確かな学力を育む理科の系統性(エネルギー・粒子)
9月号 メディアと問題解決
8月号 教科をつなぐ理科
7月号 子どもの学びと実験・観察
6月号 「A区分」新内容・新教材 こう授業する
5月号 生命・地球「B区分」の魅力にせまりたい
4月号 新学習指導要領で授業はこう変わる
3月号 子どもの問いかけをどう組織化するか
2月号 理科と「言語活動」
1月号 学ぶ喜びのある授業
2009年
12月号 「理科離れ」の正体を探る
11月号 考察力を高める
10月号 実験結果のまとめと評価
9月号 活用できるものづくり教材
8月号 教師と子どもをつなぐ板書術
7月号 環境教育と理科
6月号 学ぶ価値を実感する授業
5月号 今こそ,自然観察力を育てたい
4月号 新学習指導要領をどう実践するか
3月号 科学史を授業に生かす
2月号 「生命」「地球」概念の授業
1月号 科学的思考力を育てる
2008年
12月号 実感を伴った理解
11月号 「伝え合う力」を育てる理科授業
10月号 習得・活用・探究学習と子どもの思考
9月号 活用力を高める「深化課題」の開発
8月号 人間力の向上
7月号 「エネルギー」「粒子」概念の授業を考える
6月号 「ことば」を重視する理科の授業とは
5月号 自然・科学・実感 はじまる新しい理科!
4月号 PISA型科学的リテラシー
3月号 活用力を育てる授業
2月号 意味の理解を伴った知識や技能の習得のさせ方
1月号 「子ども理解」を深めるために
2007年
12月号 研修・授業分析の生かし方
11月号 授業力を磨く
10月号 子どもの発達と問題解決
9月号 今,福島が熱い! 全国大会への道
8月号 授業が成り立つ問題が見えてくる
7月号 実生活と授業をつなぐ
6月号 授業がぐっと深まるこの発問
5月号 授業における子どもの「ひらめき」
4月号 “状況に入る学び”と“状況をつくる学び”
3月号 “読解力”を育てる理科授業の改善
2月号 「何を」かくか 「いつ」かくか
1月号 児童に考えさせる実験結果のまとめ方
2006年
12月号 今,単元構成を考える
11月号 教えて考えさせる授業と問題解決
10月号 話し合いを深めるキーワードとは?
9月号 感性をみがく理科教育
8月号 知識の差,経験の差を乗り越える理科授業
7月号 幼・小・中連携を踏まえた学習指導要領改訂のポイント
6月号 「表現力」を理科で鍛える
5月号 知的ボルテージを高める理科授業
4月増刊号 学力低下を克服する 小学校理科の新展開
4月号 こうすれば楽しくなる,理科の授業!!―若い先生方とともに育つために―
3月号 小学校理科はこれでいいのか―学習指導要領改訂への提言―
2月号 問題解決の力を育む
1月号 子どもが「わかった」と実感できる授業
2005年
12月号 子どもの見方や考え方をとらえる
11月号 見えない世界を楽しむ
10月号 他教科との関連を踏まえた新世紀型理科教育
9月号 こだわりを育てる理科授業
8月号 確かな学力に高める「説明活動」
7月号 子どもの出番! 教師の出番!
6月号 先行学習の有効性
5月号 教師を理科好きにする“新しい校内研修”
5月増刊号 「真の学力」を育てる 理科の学習指導案集
4月号 ふるさとの自然に自信と誇りを育てる授業
3月号 個の学びを生かした 練り上げのある授業
2月号 豊かな「挫折」がある授業
1月号 自然を豊かに感じ、確かな科学を築く
2004年
12月号 発展的な学習のアイデア
11月号 「問題解決」の原点
10月号 対話で変わる子どもの見方や考え方
9月号 わかる理科授業をめざして
8月号 21世紀型の教材研究
7月号 特集:子どものつくる「問題」、教師の考える「問題」
6月号 特集:みがけ! 感性
5月号 専門家の協力を得た授業
4月増刊号 小学校理科授業のレベルアップ読本
4月号 確かな学力を育てる理科授業
3月号 長期記憶に残る理科授業の工夫
2月号 「問題解決と学力」を問う
1月号 理科嫌いをなくす授業をめざして
2003年
12月号 予習と理科学習
11月号 「わくわく導入」のあり方
10月号 科学的思考を育てる「基礎・基本」
9月号 ポートフォリオを生かす
8月号 教師の指導力を問う
7月号 ものづくりで科学する力を
6月号 どうする? 発展的・補充的な学習
5月号 飼育・栽培の楽しみ
5月増刊号 楽しい理科の導入の工夫
4月号 ワンランク上の学力をつけたい
3月号 学習指導要領をみつめなおす
2月号 学力低下への緊急提言
1月号 理科から総合へ
2002年
12月号 海外の理科教育に学ぶ
11月号 絶対評価 私の実践
10月号 地域とつながる理科教育
9月号 わかる喜びをめざす理科の授業
8月号 教材化を図る教師の眼
7月号 自然体験活動のすすめ方
6月号 理科の授業と仲間づくり
5月号 センス・オブ・ワンダーの心を育てる
5月増刊号 理科に役立つ栽培植物
4月号 「豊かな心」にどこまで迫れるか
3月号 感動を表現する子どもを育てる
2月号 現代日本の理科離れの危機
1月号 子どもの仮説が生きる授業
2001年
12月号 IT革命と理科授業
11月号 子どもが協同しあう授業の創造
10月号 ものづくりをどう位置づけるか
9月号 理科で育つ学力
8月号 「わかる」授業から「わかりあう」授業へ
7月号 事実を大事にした授業
6月号 生命観を養う理科授業
5月号 地域の自然 目のつけどころ
5月増刊号 もっと活かそう学校環境
4月号 特集:私の考える「よい授業」
3月号 特集:心に残る授業
2月号 特集:理科で育つ資質や能力
1月号 特集:心の世紀と理科の教育

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