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Ruralnet・農文協食農教育2001年10月号
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食農教育 No.16 2001年10月臨時増刊号より

地域の個性を引き出す8つのモデルプラン

町中のお年寄りに

シルククラフト作りを広める

新潟・朝日村立長津小学校の実践から


イラスト

地域マップの作り方

子ども直筆の招待状で学校に人を呼ぼう

 「それでも学校は敷居が高い」と地域の声が聞こえます。「開かれた学校」をいかに作るかが叫ばれるなか、肝心の地域にそれが伝わらない。この大きな課題に踏み込む第一歩が子ども直筆の招待状。学校行事や児童会行事などの案内を校区内の全戸に出してみましょう。

 下の図は、毎年行なっている祖父母学級(地域の人は「孫親学級」と親しく呼んでいる)への招待状。子どものいない家庭のおじいちゃん、おばあちゃんにも呼びかけます。水鉄砲とペン立て作りの先生役となる方を、お年寄り同士で誘い合って来てもらいました。授業参観のあと、20人以上の地域のお年寄りといっしょに作って遊んで、子どもたちは大満足でした。

 入学式や卒業式、秋遠足、マラソン大会なども同様に、地域の顔が増えてきます。子ども直筆の招待状を送って、少しずつ学校を賑やかにしましょう。

ナガツマップ
「ながつマップ」作り

「ながつマップ」作成手順

(1)職員作業で白ボール12枚分の広さに道路と長津川、小揚川を描く
(2)全校児童で自分の家の絵を描いて貼り付ける
(3)自分の住む地域の神社、公民館などの施設、用水、田んぼの生き物といった地域の自然を地区ごとに記す
(4)祖父母から、歴史や文化(炭焼き小屋、タケノコの缶詰工場……)など、家で取材してきたものを記す
(5)調べ学習などでわかったことを記す

地域マップを作ろう

 子どもたちが主体的に動き出す素材としては、生活に密着したモノ・コト・ヒトを取り上げるのが1番です。地域マップ作りをきっかけに、地域素材の発掘と教材化をしてみましょう。

 朝日村のような農村部でも、子どもは地域を知らないのが実情。それ以上に地域を知らないのが教師。まずは教師自身が地域に出向いて現地調査をしてみましょう。その上で教師と子どもがいっしょになって作った「ながつマップ」からいままで気づかなかった地域の素顔が見えてきました。

 取材対象は主に祖父母や地域のお年寄り。お風呂で昔語りを聞いた子もいました。「村上でとれた鮭と塩を積んだ馬がよく通った。この辺に殿様が休憩した小屋があった。この辺に追剥ぎ(盗賊)が出た」などなど。山形の小国町に通じる街道筋ならではの話です。普段関心のなかった祖父母の話に子どもたちも興味津々。地域の自然や歴史、文化を語らせるなら、お年寄りが1番です。

(朝日村立長津小学校の紹介) 朝日村は新潟県の北端、奥3面遺跡などで有名な3面川の支流長津川、小揚川の下流沿いに、山を背にして点在する4つの集落からなる。戸数は116戸、人口470名。全校児童は27名の極小規模校である。総合的な学習(長津タイム)は平成9年度から実践。今年度は70時間。毎週水曜日の午後と内容に応じて別に実施時期を決定する形。


カイコから学ぶもの

カイコを育てよう

カイコを育てよう
観察台に参考本を置いて、それと照らし合わせながらいつでも観察できるようにする

 カイコは、産卵から羽化して成虫になるまで40日。この間に4つのステージ(卵→幼虫→さなぎ→成虫)があるので昆虫の観察にはうってつけです。それだけでなく、絹糸をとったり、シルククラフトをしたりと、マユができてからの加工もバラエティーに富んでいるので、それを足がかりに地域に交流の場を求めることもできます。

 長津小学校では、6月初めに4齢になったカイコをJAにいがたあさひから譲り受けます。本格的に飼育を始めたのは平成9年度。12年度にはシルククラフトのことを考え、白、緑、黄色、および丸いマユを作るカイコの計4種類、2000頭を飼育しました。

▼飼育・観察のポイント

 観察台の上にモノサシと上皿天秤、観察用紙とともに、参考となる本(『科学のアルバム カイコ まゆからまゆまで』)を置いて、それと照らし合わせながらカイコの飼育・観察活動を行ないます。

 カイコは5齢になって約8日後にはマユになります。そこで温風乾燥して成虫になるのを防ぐ処理をするのですが、一部はそのまま羽化するようすや交尾、産卵を観察。交尾後すぐに卵を産んで死んでしまいますが、命のつながりを実感することもできます。

 温風乾燥してマユ染めの作業に入る際、「かわいそうだけどカイコの命をもらって、マユを大切に使いたいと思います」ともらした子どもの姿に、教師はもちろん指導にあたったJAや地域の方も感心するばかりでした。

▼餌やりのようす

 はじめは桑を食べる量も少なく、学校近くの野山から子どもたちが集めてきたもので十分に間に合いますが、5齢ともなると桑を集めるのに1苦労。それを聞きつけた地域の人が早朝に軽トラックいっぱいの桑の葉を届けてくれるようになりました。

 登校するとすぐに、すっかり食べ終わった桑の枝を取り除き、フンの始末。掃除して新しい桑をのせる作業をします。これを朝、昼2回します。  それにしても、日に日に大きくなるカイコの食欲はすさまじい。1枚の葉を上から下までまたたくまに平らげてしまいます。「キャベツを食べるみたいにパリパリと音がするよ」と飼育を続ける子どもたち。

課題別にグループ学習を 進めよう

 カイコを飼育しているうちに、子どもたちはどんどん疑問をふくらませます。「昔はどうやってカイコを手にいれたのかなあ」といった、教師にはお手上げでも、すぐに地域とつながっていける問いがいっぱいです。

長 津小学校での調べ学習は、発表会に向けていつごろどんな活動をするのか、教師側でおおまかな計画を立てて臨みます。その他アンケートの内容や協力のお願い、取材する場合の事前依頼(電話)や取材内容の事前連絡(ファックス)、お礼などをすべて子どもたちが主体的にやり遂げられるよう支援に努めています。

  
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