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食農教育 No.18 2002年1月号より 校区のドラマに迫る六つのポイント神奈川・南足柄市立北足柄小学校 早貸裕一
まち探検は、なぜするのだろう 通い慣れた通学路、遊び慣れた路地や空き地、秘密基地をつくった神社の境内、小銭を握りしめて何度も駆け込んだことのある近所のお店、そして、お気に入りの秘密のあの場所……。
地域を知るために、まず、次のような史料を集めました。 ・「わたしたちの南足柄」市教育委員会 学校独自の人材バンクをもとに地域の方から取材しておく このように資料がそろってきたからといっても、地域の方の生の声に勝るものはありません。一昨年、5年生でお米づくりを中心にした総合的な学習をしたときのことです。 「今年あのカメムシに一枚全部やられた田んぼがあるんだって」と、農家の人から直接聞いてきた児童の瞳は、とても輝いていました。地域の方との出会いが、児童の知的好奇心をさらに高め、自分の課題を追究する楽しさを実感することとなり、真の生きる力を育むことになっていくのだと思います。いわゆる脱サラをして古代米や無農薬米をつくっていられる方や、わらぞうりづくりの名人を子どもたち自身が探してきてくれ、ゲストティーチャーとして教えを乞うことができました。 「臨床の知」とも言うべき生きた知識がえられるように、また地域の高い教育力を生かせるように、本校では以前より教頭が人材バンクの名簿を作成し、いろいろな場面で活用させていただいています。学区探検に限らず、あらかじめ地域の方にお話をうかがっておくことが大切であると思います。
市役所からいただいた2500分の1の地図をもとに 探検で見てきたことを模造紙に大きく書いた地図にまとめるときには、できるだけ大きくて正しい地図をもとに書きたいものです。市役所でお願いして、模造紙の大きさの2500分の1の地図をいただいておきました。これは、一軒ごとの家もわかるような、適度の大きさの地図で、土地の利用のしかたや、この地区で発達している水路のようすなどもよくわかります。 これをさらに2倍に拡大して模造紙に書き、発見したことを書いた紙を貼っていきます。デジカメで撮影した小さな写真も貼るとさらにわかりやすくなりました。
台風の被害をキーワードにして地域の人にインタビュー 昔から、住みやすい場所を表わす『一、内山、二、山田』ということばがあるほどの内山地区には、酒匂川に注ぐ内川を見下ろす高台に家や小学校があります。金時山や矢倉岳を背にして、なだらかに蛇行する内川をはさんで広がる田畑の景色はいつ見ても美しいものですが、四角形ではない田や棚田もたくさんあります。早速、人力で耕している方にお聞きすると、アイオン台風で自分の田は削られ、今は土手や道路になっているとのことでした。だから田は一枚ずつが小さく 、棚田になっており、機械ではすみずみまでいかないので手でやらざるをえないのだそうです。
アイオン台風の被害が甚大であったことが子どもたちにもわかったので、地域の方への質問の中にキーワードとして入れるようにしたところ、意外にも、平野部だけでなくみかん山のほうでもその影響を聞くことができました。 ポイント(5) 保護者のご協力をえて有意義な校区探検 「足柄茶や足柄みかんのためのこの農道を、台風のあとに地元の私たちが舗装したんだよ」と、探検の中で教えてくださったのは学級の児童のおじいさまでしたが、孫の子どもたちもそれを聞くのは初めてでした。このときは、みかん畑の中のハチの巣箱は、ここよりも寒い御殿場の人が、蜜の少ない春先に置かせてもらいにきたもので、園主の巣箱ではないということや、みかんだけでなくキウイを育てるようになった経緯や、その後のこと、竹炭づくりのお話もうかがうことができました。 この日は、さらに別の児童の保護者の畑で茶摘みの体験をさせていただきながら、お茶の根が斜面の畑の土留めの働きもしていることもなどを学びました。 八十八夜のころで時期もちょうど良かったのですが、一家そろっての保護者のご協力は何よりありがたいものだと痛感いたしました。
季節がかわると、ちがったものが見えてくる イネの収穫を終えたころにも、ちがったものが見えてきます。このときもアイオン台風のことを川の近くの農家の方に聞くと、内川のゆるやかに蛇行した流れは工事で人工的につくり出したものであることがわかりました。また、休耕田の雑草を刈っている方からは、放置しておくと消防署から指導されることや、農家の厳しさなどを聞き、減反について考えるきっかけともなりました。 学区は、兼業農家が多いのですが、農業振興地域に指定されており、シイタケや長ネギを育てている方もあり、中国とのセーフガード問題やお米の減反、みかんやキウイの生産、食糧自給率の問題など、農業に関わる課題はたくさんみつけることができ、そこから学習を発展させることができます。 兼業農家が多いため、数少ない後継者の一人として休日に積極的に家の農作業を手伝う児童たちも、農業に関わる諸問題を切実なものとして意識できているようですが、これからも、食の問題を考えていかれるように、地域の方のご協力をもとに研究をしていきたいと思います。 (囲み) |