「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2009年1月号
 

食農教育 No.66 2009年1月号より

どこでもだれでもできる
種からの野菜づくり・イチゴ編 前編

ペットボトルの鉢づくりと定植

原案・文 竹村久生/絵 橋本洋子

 十月から三月は、作物の栽培には適さない時期なのだが、この時期におすすめの活動がイチゴのペットボトル栽培である。「種からの野菜づくり」という連載タイトルからはややそれるが、コンテナや発泡スチロール箱の「マイ畑」同様、子どもたちが身近なところで、手軽に栽培できる方法として紹介したい。
 いつもなら捨ててしまうペットボトルを加工して鉢をつくり、飾りつけをし、イチゴの苗を植えつけて、収穫まで育てる。今回はその植えつけまでの方法を紹介する。
 イチゴは、スーパーで見られるいちばんポピュラーで身近な果物であり、時期になると店頭を飾る人気商品である。

 味だけでなく、見た目やにおいもよいから、イチゴを嫌いな子、食べられない子どもは少ない。イチゴ狩りなどのイチゴの収穫体験をして「いい思い出」をもっている子が多い。そのうえ、生食以外にもイチゴショートケーキやジャムなどのお菓子・加工食品としても利用できる。
 そういうわけで、子どもたちの旺盛な意欲を引き出すことができる。
 苗についていえば、イチゴの苗は病気に強く、育てやすい。黒ポット苗で栽培(保存)ができ、予備苗が確保できる利点がある。
 苗を学校で一括購入するときはJAや野菜育苗の専門農家に相談するとよい。
 十月〜三月と約半年という長期にわたって、一つの作物を教室のなかで栽培できる。子どもたちはじっくり観察や世話ができ、愛着をもつことができる。

 お茶などの入っている、二リットルのペットボトルを利用する。自分の飲んだものを使用し、資源の再利用も意識させたい。二本持ってこさせ、一本は予備苗として、教師が植えておく(苗は児童数の一・五倍程度は用意したい)。また、小ペットボトル(五〇〇ミリリットル)に水やり用の水を温めておく。
 加工は簡単で、ハサミやペットボトル専用ハサミで切れる。一部、口の部分は、かたくて切りにくいので、教師(大人)がカッターや糸のこ盤などで切っておくとよい。
 不織布と組み合わせることで、根が守られ、不織布を伝って下に貯めてある水が吸い上がるので、水やりが二〜三日に一回ですむ。
 ここまでの加工・組み立ては一〇分ほどでできる。二時間続きの授業なら、ペットボトル鉢の飾りつけに十分時間がとれるだろう。

 ペットボトルの鉢ができたら、それぞれ自分が好きなデザインで飾りつけよう。
 シール、折り紙、模造紙、包装紙、英字新聞などを貼りつける、リボン、モール、毛糸、色のついた糸などをまきつける、プラスチック専用のマジック、ポスターカラーなどで書き込むなど、飾りつけの方法や材料も自分で考え、工夫する。
 紙粘土を貼りつければ、ビーズや貝殻などの飾りを埋めこめるし、直接絵を描くことができ、全体の安定感もよくなる(次頁の図)。
 完成したら、クラス全体でデザイン・工夫の品評会をしよう。発表するときは、イチゴを育てるのに、なぜこのような鉢をデザインしたのか、思いや考えを述べさせたい。
 鉢は一度つくれば、腐ることがないので、苗を植え替えれば毎年使うことができる。

 ぺットボトル鉢が完成したら、イチゴの苗を植えつける。土(市販の野菜用培養土)をペットボトル鉢に三分の一ほど入れ、苗をのせてすきまにも土を入れる。ランナーの位置に注意し、根鉢が少し土の上に出る程度の浅植えにする。
 鉢は窓際などの日あたりのいい場所に置く。毎日、目にふれることで、成長や変化にしぜんに気づき、水やりや観察をすすんでやるようになる。
 ペットボトル鉢は、定期的な観察や世話のさい、自分の机にもっていって、じっくり見たり触ったりできるという利点がある。並べて置いておけば、苗の様子の違いや育て方の違いに気づき、互いに良いところを取り入れて工夫するようになる。
 また屋内に置くため、虫がつきにくく、虫や病気があったとしても、すぐに手で退治したり、切りとったりできるので、無農薬で栽培できる。

 教室の窓側に緑がずらっと並ぶと、ホッとする「いやし」の空間がつくられる。実のなる時期ともなれば、甘い匂いで教室が満たされる。
 ペットボトル鉢のイチゴ栽培では一人ひとりに苗が任されるので、子どもたちは「自分がやらなければいけない」という気持ちをもって取り組むことができる。
 それでもなかには、枯らしてしまう子もいるが、そのときは予備苗でフォローしてあげれば、その子は感謝の気持ちをもって取り組み、二回目に枯らすことは決してない。それを見ている周りの子も責任感をもって取り組むようになる。
 イチゴが学校で自分を待っていると思うと、子どもたちは登校が楽しみになる。実際、子どもたちが連休明けの月曜日に早く登校するようになったり、不登校の子どもが、登校するようになったりした例もある。

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田舎の本屋さん 

農文協食農教育2009年1月号

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