「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2010年7月号
 

食農教育 No.75 2010年7月号より

郷土料理の達人、奥住田美さん。現在は調理員を退職して、農作業や加工を楽しんでいる

大豆を食べるふるさとの知恵

打ち豆レシピ

新潟・上越市立春日新田小学校

栄養教諭 宮澤富美子

もどさず使えて火のとおりも早い!

 打ち豆は、大豆を石臼の上でつぶして乾燥させた、昔から伝わる保存食です。一度水分を含ませてから平らにつぶして乾燥させているので火のとおりが早く、さっと洗うだけで下処理がいりません。長時間水に浸したり、煮込んだりする手間がかからず、即調理できてとても便利な食材です。

奥住家に代々伝わる石臼。直径30pくらいの楕円で厚さ6pくらい、中央がくぼんでいるため豆が外に飛び出さず、とても打ちやすい

郷土料理に詳しい調理員さんから教わって

 一九九五年、給食数三〇〇食あまりの山間地にある給食センターに勤務しているときに、はじめて打ち豆を知りました。その給食センターには、地域の郷土料理に大変詳しい調理員さんがいました。奥住田美さん、郷土料理の達人です。

 毎日の業務のなかでわずかな時間を見つけては、その日の給食の反省点にアドバイスをもらったり、地元の野菜や郷土料理について教えてもらったりしていました。そんな田美さんとの会話のなかで、新潟の郷土食材である打ち豆を知ったのです。

ばあちゃんの手づくり打ち豆を給食に

 三世代が同居する奥住家のおばあちゃんは、代々家に伝わる木槌と石臼で自家用に打ち豆をつくっていました。ぜひおばあちゃんの打ち豆を子どもたちに食べさせたいと思いお願いしたところ、三〇〇食分くらいであれば、と引き受けてくださり、それ以後、給食で打ち豆を出すときはそのつど、地元産の大豆で打ち豆をつくっていただくことができました。一回にだいたい二kg、月に三回ほどお願いしていました。

 現在の勤務校の給食数は九二〇食で大量なため、手づくりをお願いすることはできませんが、打ち豆はメニューに取り入れ続けています。新潟県学校給食会は地産地消を推進して新潟県内産の農水産物と加工食品を取り扱っており、打ち豆も県内産の大豆を使ったものがあるので、それを使用しています。

和食が中心打ち豆メニュー

 月に二、三回は打ち豆を使ったメニューを出しています。打ち豆鉄火味噌、打ち豆入り煮なます、切りコンブの煮つけ、打ち豆入りけんちん汁など、和食が中心です。

 打ち豆には独特のコクと歯ごたえがあり、味噌汁や和風の煮物などに少しずつ入れると大豆のアミノ酸がうま味となって、全体がおいしくなります

 また、青大豆の打ち豆をカレーやミートソースの中に入れれば、グリーンピースのかわりの青みになります。

 打ち豆そのものは主役にはなれませんが、豆の味が他の材料となじむので、あちこちに少しずつ利用しています。

三年生で打ち豆づくり体験

 また昨年は、国語で「すがたをかえる大豆」を学習した三年生に打ち豆づくりの体験授業を行ない、つくった打ち豆は持ち帰って家の人と食べることにしました。

 新潟の郷土食材とはいえ、日ごろから打ち豆を料理に使っている家庭はほとんどありません。打ち豆をはじめて調理した家庭も多かったようですが、お母さんたちからは「簡単で手軽」「すぐ煮えて便利」「他にもいろいろつくってみたい」という感想をいただきました。

 いつもは「食べるだけ」の子どもたちも楽しんで打ち豆の調理を手伝ったという声も多く聞きました。ふだん食事づくりや食卓準備の手伝いをする子はとても少ないのですが、これがきっかけになり今後も食事づくりに関心を持つ子が増え、素材の持つおいしい味がわかる味覚を育てることができればと思います。



教室でできる!打ち豆づくり体験

1.準備するもの

■子どもが用意するもの

・給食の牛乳パックを縦に切って水で洗い、乾燥させる

■学校が用意するもの

・打ち豆用大豆 40g
熱湯に6分浸してざるにあげ、水気を切って一晩おいたもの(1kgずつまとめてつくり、あとで1人分に小分けした)

・木槌の代わりに金槌にさらし布を2枚きっちり巻いて輪ゴムで留める

・音と衝撃の緩衝材として、新聞紙1枚

2.つくり方

牛乳パックに大豆を1粒ずつ入れて、さらしを巻いた金槌で3、4回くらい打つ。ペチャンとつぶれたらできあがり

1限45分間で40〜50g(家庭で約1回分の料理の量)がちょうどよかった


打ち豆レシピ

 打ち豆は、水かお湯でさっと洗ってから水気を取る。下処理はそれだけ!(お湯だと乾きが早い)

打ち豆 鉄火味噌

白いごはんがおいしく食べられ、打ち豆を炒めることで大豆が香ばしくなります。

材料(1人分)

打ち豆…12.5g/サラダ油…1.25cc
味噌…3.75g/みりん…1.25cc
砂糖…3.75g/白いりごま…3.75g

つくり方

(1)厚手の鍋にサラダ油を入れ、打ち豆をよく炒める。
(2)味噌、みりん、砂糖を混ぜ合わせ、調味料をつくる。
(3)(1)に調味料を入れて水分をとばしながら味をからめ、ごまを入れる。

打ち豆入り けんちん汁

細切りコンブを入れてコンブも食べるのがコツ、ほかに里芋、しいたけ、豆腐、油揚げなど入れてもおいしい。味噌適量をとき入れた中に、2〜3種類の具と打ち豆を入れてもOK。おいしい打ち豆味噌汁になる。

材料(1人分)

こんにゃく…10g/にんじん…5g/打ち豆…5g
だいこん…25g/サラダ油…0.5cc/ごぼう…5g
じゃがいも…20g/だしコンブ…0.75g
だし汁…150cc/味噌…7.5g/ねぎ…5g

つくり方

(1)材料は食べやすい大きさに切る。
(2)鍋に油をひき、こんにゃく・にんじん・だいこんを炒める。
(3)(2)にじゃがいもを入れて炒め、小さく切っただしコンブ・ごぼうをいれ、だし汁で煮る。
(4)材料が柔らかくなったら打ち豆を入れ、味噌とねぎを入れて仕上げる。

打ち豆入り 煮なます

つくりたてよりも30分くらいあとのほうが酢の味が柔らかくなじんで、やさしくおいしい味になります。だいこんを下塩して水分をとることで歯ざわりがよく、打ち豆の香ばしさとよく合います。滋養の味です。

材料(1人分)

だいこん…50g/にんじん…50g/ひじき…0.2g
干ししいたけ…1枚(小さめのもの)
打ち豆…5g/油揚げ…1/4枚/サラダ油…1.25cc酢…3.75cc/砂糖…2.5g/醤油…1.25cc

つくり方

(1)だいこん・にんじんは千切りにして下塩をふり、しばらくして水が出てきたらしっかり水気を絞る。
(2)しいたけ、ひじきはもどし、油揚げは油抜きをして、しいたけと油揚げを細切りにする。
(3)酢、砂糖、醤油を合わせて調味料をつくる。
(4)なべに油を入れて打ち豆を炒め、(2)を入れ、最後に調味料を入れる。
(5)しっかり水気を絞ったにんじんとだいこんを入れて混ぜ、味をからめてできあがり。

切りコンブの煮つけ

沖縄のコンブ料理にヒントを得て考えたレシピです。子どもには「コンブは体がよろこんぶのもと」と話すと喜んで食べるようになりました。

材料(1人分)

細切りコンブ…2g/打ち豆…5g
豚細切り肉(または油揚げ)…10g
サラダ油…0.6cc/だし汁…100cc/酒…3.75cc
みりん…3.75cc/醤油…2.5cc

つくり方

(1)コンブはもどして7mmくらいに切る。
(2)肉に酒をふり、下味をつけておく。
(3)鍋に油を薄くひき、肉を炒め、コンブも軽く炒めて、だし汁でよく煮る。
(4)みりん、醤油、打ち豆を入れて煮る。薄味でしっとり煮るとおいしくできあがる。



「田舎の本屋さん」のおすすめ本

この記事の掲載号
食農教育 2010年7月号(No75)

◆特集1 おもしろ野菜で"緑のカーテン"/自然薯、ユウガオ、カボチャ、エアーポテト、シカクマメ、パワーリーフ、ゴーヤー・ヘチマレシピ/栽培の基本、涼しさのヒミツ
◆特集2 お豆をたくさん食べさせる/粒を砕く お豆を発芽 打ち豆レシピ 豆イメージアップ作戦 ほか。 [本を詳しく見る]

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