地域で、学校で
情報編集によるオンデマンド出版がスタート

 「オンデマンド出版始動」―こんな見出しで3月12日付「日本農業新聞」に、農文協のデータベースを活用したオンデマンド出版の取り組みが大きなスペースで掲載された。

  「出版界の新しい波として話題になっているオンデマンド出版が、農業分野でも動き出した。データベースから選び出した必要部分を自在に組み合わせ、自分好みの本に仕上げる。従来不可能だった少部数の個別 注文に短期間で応じられる便利な新技術だが、今後の農業情報界にどんな変化をもたらすのかーー」、こんなリードで始まる記事では、農文協が扱うオンデマンド出版の作品第1号として滋賀県の湖北農業管理センター(長浜市)が発注したダイズの冊子を紹介している。「昨年までは農機メーカーが提供する一般 的な栽培方法や管理機械の資料を生産者にくばっていたが、『より身近なものがほしい』という声にこたえた」もので、農文協発行の「現代農業」や「農業技術大系」「日本の食生活全集」などの記事の中から地元のダイス振興に役立ちそうな情報を選択してつくった。書名は「消費者ニーズに高い湖北産大豆を作ろう!」、60ページで費用は500部で45万円。栽培事例、大豆の機能性と豆腐加工などの記事とともに、大豆関連書籍一覧や、当管理センターがつくった栽培暦もついている。「よそでは手に入らない貴重な地元専用テキストだ」と農家にも好評で、当管理センターでは次の企画を練っているという。山形県でも同様の方法で冊子をつくった。

 学校での動きもでてきたという。2002年から始まる「総合的な学習の時間」の教材をオンデマンド出版でつくろうという取り組みだ。自然を相手にくりひろげられる農家の個性的な労働と技術、そして暮らしの知恵がつまった「現代農業」の記事16年分、農学・栽培研究の成果 と農家の技術を集大成した全103冊におよぶ「農業技術大系」「農業総覧」、さらに昭和初期の庶民の食と暮らしを聞書きによって記録した「日本の食生活全集」(全50巻)の膨大なデータベース「食と農 学習のひろば」(gakkou.ruralnet,or,jp)やCD―ROMから、地域や子どもたちにあった教材をつくる。たとえば、徳島県の小学校教師は、、ダイズを中心に、その栽培や味噌などの加工品に込められた農家の技術や知恵、発酵の不思議、さらにはダイズの自給率などの社会的な問題まで広がる授業展開を構想し、そのための導き手であり、また調べ学習の素材になるオンデマンド教材づくりを進めている。

 地域を元気にし、学校を元気にし、そして学校と地域をむすぶ、そんな地域の「情報革命」が始まった。