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スローフードな日本! 地産地消・食の地元学

現代農業2002年11月増刊

【編集後記】

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 「地域社会というのは、つまるところ『共生共死』ということではないだろうか?

 共死があって、はじめて共生がある。共死を伴わない共生というのは、どこか信じられない。都市に共生がなじまないのは、やはり共死がないからだろうと思う」

 都会暮らしが長くなったせいか、山形県長井市の菅野芳秀さんの「共生共死」という言葉を今回の原稿で読んだとき、とくに「共死」の意味が、すぐにはわからなかった。

 わからないまま、水俣市に行った。本誌では何度も取り上げているが、私自身は初めてである。行ってみていちばん感じたのは、「水俣には完結した水系がある」ということだった。昨年の『地域から変わる日本』で、吉本哲郎さんは「水俣は、海、川、山のある流域生態系の町」と書いているが、何本にも枝分かれした水俣川の支流の水源はすべて水俣市に属する山中。今回は鹿児島の方から峠を越えて水俣に入り、タクシーで石積みの棚田が並ぶ川沿いの道を下った。その途中、石坂川地区に住んでいるという運転手さんに「石坂川は生ゴミリサイクルのモデル地区でしたね」と言うと、わざわざ寄り道をして地区の生ゴミ集積所に案内してくれた。その集積所には、区長でもある丸田清隆さんという農家がつくったボカシ肥の1kg入りの袋がいくつも置いてあった。

 そのボカシと生ゴミを混ぜて自分でもボカシをつくる。そのために、他地区では週2回の可燃ゴミ回収が、ここでは週1回。ボカシから出る水分は、排水管や川を浄化してくれるので流しに流している――運転手さんはそんな説明の後、再び乗った車の中で、「やっぱ自分たちが川をきれいにすれば、海もきれいになるち、思てですなぁ」と、自分に語りかけるように言った。

 翌日、海辺では、杉本栄子さんに「周囲にたくさんの山があるおかげで今も海に水がたくさん湧き出ている」「水俣が好きだから、水俣の土になりたい。そのために健康な体で死んでいきたい」というお話を聞くことができた。「共生共死」の意味が、少しだけわかったような気がした。(甲斐)

 

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