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農文協増刊現代農業>21世紀は江戸時代_編集後記

21世紀は江戸時代 開府400年 まち・むら・自然の再結合

現代農業2003年8月増刊

【編集後記】

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 今回の企画に思いをめぐらしている最中、農文協から一冊の写真集が発行された。本誌でもその数点を掲載している『昭和三〇年代農山村の暮らし』(武藤盈・写真、須藤功・文)である。頁をめくるうち、「日曜の朝、中学生たちはこれから山へ行く」という一枚があった。腰に鉈をさし、背には背負子を負った四人が座っている。その表情を見たとき、ちょうど昭和30年生まれの私の記憶もよみがえった。九州山地の山奥での子どものころ、確かに日曜、近所の仲間と連れ立って、風呂やかまどの焚きつけ用のスギの葉を拾い集めに行っていた。家の手伝いという意識は多少あったかもしれないが、子どもの集める量などたかが知れている。何より同年代の仲間と語らいが楽しかった。ちょうど行って帰って半日のその山は、家畜の飼料や茅葺き屋根のための茅場、つまり入会の山だった。茅葺きといえば、一度だけ親戚の家の屋根の葺き替えにも遭遇したが、おとなたちの煤だらけの顔は誰も生き生きとしていた。おそらく集落最後の葺き替えであり、結いではなかったかと思うが、それまでは江戸時代から連綿とくり返されてきたことだろう。

 「神事祭礼の休日は、村あるいは村々が、休日の国家統制が強められるなかで最後まで生きのびさせていたものであった。戦前にもじりじりと変質していたとはいえ、祭礼休日と農休日のありようが決定的に変わってしまったのは、戦後の高度経済成長期であろうと思われる」(古川貞雄『村の遊び日』)。

 遊び日・休み日に限らず、入会、地割・割替制度など、江戸期村むらで受け継がれ、明治維新にも戦後改革にも耐えてきた自治の慣行=日本的コモンズは、近代化の総仕上げであった高度成長によって決定的に根絶やしになったかに見えた。しかし「近代」の限界が誰の目にも明らかないま、本誌110頁からの事例のように、全国各地で、その土地独自の自然に根ざし、その土地独自の自治のありようをつくり出す動きが新たにはじまっている。「21世紀は江戸時代」なのだ。

(甲斐良治)

ふるさと回帰支援センターモデル事業・里山帰農塾

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