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農文協増刊現代農業>いま、米と田んぼが面白い_編集後記

いま、米と田んぼが面白い 「消費者」から「当事者」へ

現代農業2007年8月増刊

【編集後記】

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『日本の食と農 危機の本質』(神門善久氏、NTT出版)という本を読んでいたら、著者ご本人が「ビスマルクが世界に先んじて年金制度を導入したような社会的発明」と自賛する「社会保険料の食生活連動制」なる「提言」があった。どんな社会的発明か、著者との架空の対話形式でご紹介しよう(「 」内引用文)。

「子供の食生活を正すためには、まず大人(親)が食生活を正さなくてはならない」

――ごもっともですね。本誌でも、『おとなのための食育入門』を特集しましたし、各地で「食の文化祭」や「おとなのための食育セミナー」が開催されるなどの動きが広がっています。

「食育などでいくら情報を提供したとしても、食生活の改善は期待できない」

――えっ、じゃあ、どんな方法が……?

「現実的な対応としては、社会保険料に食生活を連動させることを提唱したい。自治体ごとに、連動用の予算枠を設け、食生活のよい家庭の保険料の全部ないし一部を肩代わりするのである。場合によっては全額以上、つまり報奨金を払ってもよい。食生活がよければ健康を害する危険性が減るわけだし、将来世代への恩恵にもなるから、この発想は理にかなっているだろう」

――各家庭の食生活を、誰が、どうやって把握するんですか? 

「幸い、現代はインターネットやデジタル・カメラなど記録用の技術はずいぶんよくなっている。虚偽をしないよう、抜き打ち的な監視を行政が担当し、通常の記録は消費者に負担させる。証明責任を分担しない消費者には、高い保険料を払ってもらう」

 こんな「提言」に驚いてはいけない。健康保険組合別にメタボリック症候群改善率で医療費の拠出金が加減される「健康保険メタボ連動制」がすでに実施の予定なのだという。メタボ関連市場規模は予防、診断だけで一兆円を超え、改善・治療を含めると七兆円を超えるという試算もある。私たちの食や身体は、国や企業の思うがままにその利益の源泉にされてはならない

(甲斐良治)

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