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農文協増刊現代農業>耕作放棄地活用ガイド 考え方・生かし方・防ぎ方_編集後記

耕作放棄地活用ガイド 考え方・生かし方・防ぎ方

現代農業2009年11月増刊

【編集後記】

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●「耕作放棄地の再生は雑草とのたたかい」という記事が多いなか、桐山三智子さんは「遊休して年月がたっているほど、むしろ自然農には適している」と書いている。そしてレタスなど外葉からちぎって収穫し続けるサラダミックスでは最後はトウが立ち、花が咲いて種がこぼれ、秋に芽生えたこぼれ種からの小さな苗が雪の下で元気に生きていて、ほかに収穫のない春に行商に行けると喜んでいる(六頁)。
 また長野県塩尻市の「山麓亭」に出すソバをつくっている小松すえみさんは「ソバはきれいに種をまきさえすれば草が出ないのでうんと楽。まわりだけちょこちょこジョレンで掻いてやればいい」と話している(四〇頁)。
 さらに嶺田拓也氏は「土壌中の埋土種子集団(シードバンク)は、数年から数十年以上の寿命がある」と述べている(七二頁)。そのせいか耕さない自然農を五、六年続けると、あまり草が生えなくなると聞いたことがある。
 あえて耕作放棄を「問題」とのみとらえなければ、農業と種と草との面白い関係も見えてきそうだ。(甲斐良治)

●「シリーズ地域の再生」発刊記念企画として、三人の執筆者に東京本郷の旅館に集まっていただいた。上野村で仕事と暮らしを問い続ける哲学者の内山節さん。減農薬稲作運動や田んぼの生きもの調査の提唱者である宇根豊さん。この在野の猛者二人に、東大農学部准教授で、むらをよく歩いている安藤光義さんがからむ鼎談だ(二〇四頁)。面白かったのは、この三人が異句同音に、今回の総選挙の底流に「これまでの農村の意思決定のメカニズムを変えたい」という意思が働いていたと指摘したこと。そこには根深い「飽き飽きした気分」があったという。日米FTAの推進をマニフェストに掲げるような民主党農政にさして期待はできないが、この「飽きの気分」は中央から地域を統制するというこれまでのあり方を変える、ひとつのきっかけになるのではないか。(阿部道彦)

●八月十二日、愛知県常滑市の後藤良光さんといっしょに、集落の耕作放棄地を見て歩いた(二〇頁)。今年は梅雨が長すぎて、もう明けないんじゃないかと思ったりもしたが、この日は夏のギラギラした太陽が戻っていた。焼けつく日ざしの下、喉をカラカラにしながら半日も歩き回ったのは、どれだけぶりのことだろう。年がら年中、虫や魚を追いかけ回していた少年時代の感覚がよみがえった。お盆に岐阜の実家に帰り、あらためて家の周辺を見回してみると、耕作されずに草ぼうぼう、あるいは廃車置き場、土砂置き場になった田畑など、ずいぶん増えていた。子どもの頃、田んぼや川で会うと昔の様子を聞かせてくれたWさんが亡くなって、その田んぼに草が生い茂っているのを見たときは、なんともさびしい思いがした。一人でこれだけのものを守っていたんだね、Wさん。(馬場裕一)

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