日本と中国を結ぶアイガモ農法

2000年春から中国江蘇省にて鎮江市科学技術委員会が中心となって日本の合鴨水稲同時作の試験栽培が始まりました。

中国は改革開放政策の開始以来大きな発展をとげましたが、農業分野もまた例外ではありません。しかし、その発展とともに化学肥料の多投、農薬の乱用など、かつて日本農業も経験してきた問題が発生しています。

これに対して鎮江市科学技術委員会の瀋暁昆さんは日本のさまざまな農業技術を取り入れて解決していこうと努力しています。

合鴨水稲同時作技術はその一つとして採用され、試験栽培が始まりました。彼の呼びかけに応えて、日本側専門家や実践農家が現地に赴き指導を行っています。


合鴨水稲同時作とは

初夏、田植えをして1〜2週間の田んぼに、生後1〜2週間のかわいい合鴨のヒナを放します。犬やキツネやイタチなどからヒナを守り、脱出を防ぐため、田んぼの周囲を網や電気柵で囲みます。放飼羽数は10a当り20〜30羽。稲の穂が出るまでの3ヶ月間、合鴨は田んぼの中で昼も夜も暮らします。

初めての水田に放された合鴨は嬉しくてたまりません。グループで泳ぎながら、首を伸ばして害虫を食べ、稲の株元をつつき、雑草や稲を食べ、泥水をかき回し大賑わいです。田んぼの風景が楽しくなります。

合鴨が稲に与える効果は多様です。雑草防除、害虫防除、養分の供給、中耕渇水効果、ジャンボ防除、刺激効果……。

なにしろこのシステムでは従来「厄介者」と捉えられていた雑草や害虫が有難い資源用合鴨のエサになり、糞になり、ついに稲の養分になってしまうのですから愉快です。

これは、雑草や害虫は固定的なものではなく、技術の在りようによっては「有用な資源」に変わることを示しています。

合鴨の田んぼでは無農薬の米とヘルシーな鴨肉がとれます。田んぼでご飯とおかずができるのです。以上が合鴨水稲同時作の概要です。

現在、日本発の合鴨水稲同時作が、日本、韓国、ベトナム、フィリピン、ラオス、カンボジア、タイ、バングラディシュ、イランなどで広がり始めています。

(合鴨農法実践農家 古野隆雄)