●じゃがいもの花

 日本一の畑作地帯である十勝へ7月に訪れると、 5ha区画に整然と整地された広大な圃場一面に咲く農林1号の白い花、メークイーンの紫色の花の美しさに目を奪われます。いくつかの町村では「じゃがいものお花見会」が開催されるそうです。フランスの宮殿では鑑賞用として栽培され、マリーアントワネットが髪飾りにしたといわれています。


花の色

品 種

農林1号、紅丸、トヨシロ、とうや
マチルダ

赤 紫

キタアカリ、ベニアカリ
サクラフブキ、ホッカイコガネ

淡赤紫

男爵薯、コナフブキ、ムサマル

メークイン、ワセシロ


●優良な種いもの条件

病理的条件

無病であること、つまり種いもの内外に病害虫のないこと

遺伝的条件

その品種固有の特性を備えていて均一であること

生理的条件

植える時に休眠があけていて充実し、内部異常もなく、強い発芽力を持っていること

形態的条件

規格内(40〜190g)の 大きさで粒そろいが良いこと

(1)じゃがいもは栄養体で増えるために増殖率が低く、しかもウイルス病にかかると収量、品質ともに大きく低下するという難点を抱えています。

(2)このため、厳しく管理された特別なほ場で種いもは栽培され植物防疫法という法律に基づいて、植物防疫官が厳密な検査を行っています。

(3)種いもは50g程度に切って使うのが普通ですが、30g程度の小芋でも十分に浴光育芽を施せば生育に全く差はありません。むしろ、全粒植の方がメリットが多いのです。



●浴光育芽

 じゃがいも栽培において最も重要なのは植付け時です。ここでの最大のポイントが「浴光育芽」です。3〜4週間程度かけて植付時の芽長が約5mmとなるよう、低温と強光条件下で強い芽を育て、機械にかけても落ちない範囲で出芽促進効果を最大限に発揮させるものです。  この処理により、出芽が10日以上促進される、株の生育がそろう、欠株がなくなる、いもの規格歩留が上がる等の大きな効果が得られるのです。


●農家の作り方

1.種いも準備

 まず、検査に合格した健全な種いもを準備します。種いもの貯蔵
は3℃の一定温で施設貯蔵し、浴光育芽を開始する10日〜2週間
前頃から10℃まで徐々に昇温し、出庫時に1〜2mmの芽長として
おきます。その後、3〜4週間程度かけて植付時の芽長が約5mm
となるよう、20℃以下の低温と強光条件下で強い芽を育てます。
これが、じゃがいも栽培の最大のポイントといえます。
種いもは一般に50g程度に切りますが、十分に浴光育芽を施せば
30gまでは生育に差はなく、小粒を全粒植として利用する方が切断
の労力や病害伝播の危険もなく有利です。

2.植付け

 じゃがいもは冷涼な気候を好むため、春作では晩霜害という制
約要因はありますが、可能な限り早植えすべきです。地温が10℃
になり、圃場が乾いて耕起できれば植付すべきで、ソメイヨシノ
が咲くときには、出芽しているタイミングが必要です。また、植
付の深さは、出芽が遅れないよう、3〜5cmの浅植えが有利です。
畦幅は、70〜75cm、株間は約30cmで、10aあたり4500〜
4800株を基本とします。畦幅や株間が短いと小粒化して規格歩留
が低下し、広すぎると、巨大粒や変形・中心空洞などの問題を生じ
るのです。

3.施肥  

 標準的な地力の圃場では、10aあたり窒素、りん酸、カリの投入量は、それぞれ7kg、11kg、
9kgを標準とし、作型や地域によって調整します。西南暖地の雨の多い地域では流亡するので多
めに施用します。

4.培土

 出芽後2週間のいも肥大開始期(茎長は20cm程度)に、培土を行い
ます。これにより、いもの肥大に適切な地温の維持によるいもの肥大
促進、いもの緑化防止などの効果が得られます。少なくともいもに
10cmの土が被るようにし、断面がカマボコ型で山と谷の差が25cm
になるようにします。
遅すぎるとストロンを傷つけ、茎葉を折損して軟腐病や疫病を伝播さ
せます。畦間の土を柔らかくするため、カルチベーターをかけるか1
週間前に半培土をしておくなどの工夫が必要なのです。


5.防除

  馬鈴しょの最大の病害は、疫病です。多肥によって生育が軟弱になっていると、急速に蔓延す
るケースが多いので、初発を見逃さずに適期を行うことが必要です。このほかに菌類病として黒
あざ病、粉状そうか病、乾腐病、菌核病、灰色かび病、半身萎凋病、細菌病として軟腐病、そう
か病、黒脚病、青枯病などがありますが、無病種いもの使用、消毒の徹底、適正な輪作の実施に
より大きな被害は回避できます。

6.収穫

 収穫は、いもの表面に土の付着しないような土壌条件で、曇天の日
が最適です。多くは専用のポテトハーベスターで収穫しますが、用途
によってタイプが異なります。特に青果用や加工食品用では、いもが
傷つかないようにコンベヤの揺れを調整し、土がクッションとして働
くようにします。また、打撲傷は10℃以下で発生しやすいため、収穫
作業は10℃以上の条件で行うことが必要です。一方、暖地の秋作では
降雨後に収穫すると、いもの内部の膨圧が高くなっているので、少し
の衝撃でもいもに亀裂ができ易くなります。


7.貯蔵

  大型施設貯蔵の場合、選別やキュアリング(傷の治療)が不十分だと入庫後、2ヶ月頃からの
腐敗が問題になります。このため、腐敗の起こらない栽培、傷のつかない収穫と取扱い、腐敗い
もの除去とキュアリングを徹底します。種子用と青果用はそれぞれ3℃、5℃で貯蔵されるため
6ヶ月の長期貯蔵でも発芽(萌芽)しませんが、油加工(ポテトチップスなど)用は糖化を避け
るために7〜13℃で貯蔵されます。

8.土作りと輪作体系

 全ての作物に共通しますが、やはりじゃがいも栽培の基本を支えるものは土作りです。堆肥
を毎年、10a当たり1〜1.5t程度、長期間継続して投入するのが基本ですが、場合によっては
イネ科や豆科作物の緑肥をすき込みます。
 土作りと並んで大切なのが輪作体系の維持です。馬鈴しょは連作障害が生じるので、4〜5年
サイクルの作付け体系を組む必要があるのです。

  例1:麦 → じゃがいも → とうもろこし(青刈り) → てん菜 → 豆類
  例2:じゃがいも → 麦類 → てん菜 → スイートコーン・デントコーン→ 豆類


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