『農村文化運動』 187号 2008年1月

農地・水・環境の保全向上に女性の力を!


[目次]

はじめに

I 農地・水・環境保全向上対策は女性の出番

農地・水・環境保全向上対策に女性の力を活かし、土地改良区に女性の役員を

女性の力で、地域の生活文化に根ざした土地改良事業の創造を!

農地・水・環境保全向上対策における女性への期待 〜女性の活躍が地域を活性化する〜

II 各地の取組みに女性パワーをみる

景観づくりや自給運動に女性の力は欠かせない

「水を使うものが水を守る」意識を地域のみんなに

地球環境が悪化しても生き残れる地域に!
栃木県・水土里ネット那須野ヶ原 星野恵美子…44

アジサイ一万本の景観だけでなく、「農村料理バイキング」もどうぞ!

「夢描き」からはじまった豆腐料理の店「えーのー夢茶屋」

III 農村女性がもつ力に期待する

農村女性から見た「農地・水・環境保全向上対策」

山口県土連では、なぜ女性理事が輩出されたか

女性が土地改良区の運営に参画する意義─「ぐんま水土里保全整備プラン」作成の経過から─

農地・水・環境保全向上対策の取組みで、女性の力の発揮を!

学生に驚きをもたらし目を開かせてくれた農村女性の力


はじめに

 二〇〇七度より、国の事業で「農地・水・環境保全向上対策」が始まった。農村の混住化・高齢化がすすむなか、先達の築いた農地・水・環境を集落ぐるみで次世代に引き継ぐための事業である。具体的には、用排水路の維持管理や景観形成といったいわゆる一階部分の共同活動のうえに、二階部分としての環境にやさしい営農活動が想定されている。つまり、農地・水・環境といった地域資源を守りつつ、それを生かした地域振興につなげる、一種の地域づくり運動といえるのである。

 そこでつくられる活動組織には、農家だけでなく、学校・PTA・自治会・NPO・土地改良区、さらには関係する都市住民も含められる。農業の基盤を守るのは、もはや土地を所有する農家だけでなく、都市の生活者を含めた国民全体であるという認識が、この事業の底流にある。

 その活動でネットワークを築き、新しい地域づくりへと深化・発展させるには、生活視点にたって地域を考える農村女性の力が不可欠だということから、本特集は企画された。

 農村の女性起業を研究してきた宮城道子氏(三頁)は本特集で、「女性は、仕事づくりと地域づくりと自分づくりを統一的に把握し、」「あまり大きな望みはいだかず、〈等身大の現実感覚〉をもって、身近な小さな問題を日常生活のなかで小さく解決していく」と述べている。

 立場の異なる人々の本音と建て前を〈等身大の現実感覚〉でつなぎ、みんなが同じ方向をむくような場づくりを女性たちはじつに上手に行なう。実際、いま農村で巻き起こっている朝市・産直、農産加工、グリーンツーリズムといった動きの背景には、必ずといっていいほど女性たちの夢の実現がある。

 土地改良は大きな経費を要するため、どうしても地権者である男性を中心に行なわれてきたが、こういった農村女性の活躍を背景に、水土里ネット山口での女性理事が誕生したり(一三頁、七六頁)、群馬県で水土里ネット役員に女性の登用が計画される(七八頁)など、土地改良事業にも風穴が開きつつある。

 全国一七〇〇〇ヵ所で始まった農地・水・環境保全向上対策での女性の活躍をとおして、水土里ネットの意思決定の場に、女性が参画する機運をぜひ盛りあげたい。

農文協文化部


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