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生物科学
Volume.67,No.2 2016

Mar.

目次

特集:味覚研究の最前線―生理学から進化学,味覚センサ開発まで―

巻頭言:『生物科学』の書評欄―原稿用紙四枚の格闘技(浅川満彦)……65

尾崎まみこ・前田徹・保美和子:昆虫の味覚研究から食行動を考える……66
  昆虫を使った味覚の神経科学的研究は,古くは1940年代に始まり,昆虫-昆虫間や植物-昆虫間の個体間行動,個体行動,神経経路,神経細胞,機能分子,遺伝子の各レベルの研究へと発展してきた.昆虫の研究というと昨今はショウジョウバエ一辺倒の印象があるが,本稿では味覚と摂食行動の先駆け的研究に多大な寄与をしているクロキンバエに光を当てて,毛状味覚感覚子,いわゆる味覚毛のセンサーユニット構造に根差した基本味の考え方を説明したあと,一部,ゴキブリやアリやシジミチョウを登場させて苦味とうま味に関する生物学的意味を深める最近のトピックスを,さらに,味覚・嗅覚情報統合機構と食嗜好変化の神経機構に迫る挑戦的な研究を紹介する.
キーワード:基本味,味覚相乗効果,味覚・嗅覚情報統合,食嗜好

今井啓雄・西栄美子:味覚受容体タンパク質の進化と多様性……75
 脊椎動物の味覚受容体はGPCR型,channel型に分類され,それぞれ甘味(TAS1R2/TAS1R3)・旨味(TAS1R1/TAS1R3)・苦味(TAS2Rs)と酸味(PKD2L1)・塩味(ENaC)を受容する.これらの受容体は動物の生息環境に応じて食物が異なることに対応してか,種ごと・個体群ごとに進化し,感度や受容する物質の多様性を示すことがわかってきた.とくに味を感じないことがメリットになるような進化もあることが示唆された.
キーワード:味覚,受容体,機能解析

日下部裕子:味覚受容と情報伝達機構およびその応用……85
 今世紀に入って,味を受け取る分子である味覚受容体が次々と明らかにされた.味覚受容器である味蕾は多くの細胞から構成されているが,味覚受容体の同定によりその役割分担が解明されつつある.また,味覚受容のシグナルを伝達する分子の同定により,シナプス伝達系だけでは説明がつかなかった味覚情報の伝達の仕組みも明らかにされつつある.これらの仕組みは,食品の品質設計への手がかりとなることが期待される.
キーワード:味覚受容体,味蕾,味細胞,情報伝達

井田隆徳:モデル生物を利用した新規摂食調節ペプチドの探索……94
 近年,食欲調節・脂肪代謝制御メカニズムの解明において生理活性ペプチドの役割が重要視されている.生体内にはこれらのメカニズムに関係する未知の生理活性ペプチドがまだ数多く存在すると考えられており,世界中の研究機関において新しい生理活性ペプチドの探索が行われている.にも関わらず最近,新規生理活性ペプチドの発見は減少している.そこで対象をモデル生物であるショウジョウバエに変え,その情報を元に哺乳類での新規生理活性ペプチドの発見につなげていくことを考えた.
キーワード:新規生理活性ペプチド,オーファンGPCR,モデル生物,摂食行動

小早川達:一般食品における香りによる味質の増強……104
 風邪をひいて鼻がつまっているとき,慣れ親しんだ食品の「味」がいつもと違って感じられる,という経験をしたことはないだろうか.日常生活の中で使われる「味」という言葉は,味覚,嗅覚,触覚などからの情報が融合された複合感覚をさしている.鼻がつまると,嗅覚情報を利用することができないため,「味」が変化する.本稿では,一般食品の「味」を構成する重要な要素である嗅覚と味覚の相互作用に焦点をあて,官能評価および脳機能計測の観点から,香りによる味質の増強について紹介する.
キーワード:一般食品,香り,味質,感覚強度,増強

都甲潔:生体を模倣した味覚センサの開発……116
 味覚は,哺乳類では口腔の舌などにある味蕾の味細胞の膜で化学物質を受容して生じる感覚であり,その受容体は複数の化学物質を受容することが知られている.つまり,味覚受容体は,生体内でみられる抗原抗体反応のように基質と受容体が1対1で結合するといった高い選択性を有しない.そこで,この味覚受容体の特性を模倣した機能膜を開発した.この機能膜を利用した味覚センサはすでに実用化され全世界で使われ,「味を目で見ることのできる世界」を私たちに提供し,食文化に大きく貢献するものである.
キーワード:生体模倣,工学的な味覚センサ,広域選択性,味の地図,味のものさし

書評―『海の保全生態学』『栽培植物の自然史U東アジア原産有用植物と照葉樹林帯の民族文化』『理科好きな子に育つ ふしぎのお話365 見てみよう,やってみよう,さわってみよう体験型読み聞かせブック』『ホッキョクグマ 生態と行動の完全ガイド』


English_conents

Asakawa Mitsuhiko : Recommendation on contributing to Biological Science (Tokyo) in book review (65)
Special feature : The cutting-edge of the taste research-physiology, evolutionary biology, and development of taste sensor
 Ozaki Mamiko, Maeda Toru & Tamotsu Miwako : Sense of taste and feeding behavior in insects (66)
 Imai Hiroo, Nishi Emiko:Evolution and diversity of taste receptor proteins (75)
 Kusakabe Yuko : The mechanisms of taste reception and signal transduction, and its applications (85)
 Ida Takanori : Searching for novel feeding modulation peptides using by model organism (94)
 Kobayakawa Tatsu : Aroma-induced taste quality enhancement in common foods (104)
 Toko Kiyoshi : Development of biomimetic taste sensor (116)
Book review (125)


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