季刊「食育活動」

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食育活動
No.1 (創刊号) 2006

3

食育バランスガイド―考え方から活用法まで

 

はじめに……………………………………………………………………………………………2
■巻頭言 「食育」を大いに進めましょう
                  社団法人 日本栄養士会会長 中村丁次………4 
■インタビュー「食事バランスガイド」を楽しく使おう
      独立行政法人 国立健康・栄養研究所研究企画評価主幹 吉池信男………6
■Q&Aで読み解く!「食事バランスガイド」活用術
               県立福岡女子大学人間環境学部教授 早渕仁美………10
■「食事バランスガイド」活用の基本視点
 ◆増える生活習慣病にどう取り組むのか――「食事バランスガイド」の活用事例から
       厚生労働省健康局生活習慣病対策室 栄養・食育指導官 古畑公………22
 ◆食品企業との協力で「食事バランスガイド」活用を進める
    農林水産省消費・安全局消費者情報官補佐 食育推進班担当 勝野美江………28
【速報!地域に根ざした食育コンクール2005受賞ダイジェスト】………………………34...連載    ■実践から学ぶここが決め手! 食育最前線の取組みから
 ◆「食育文化都市」御食国若狭おばまの生涯教育
   ――食のまちづくりが育むライフステージに対応した食育   
      小浜市食のまちづくり課 御食国若狭おばま食文化館館長 高島賢………50
 ◆「ぐんま型食育」で総合的・横断的な食育活動をめざす
   ――子どもに楽しく・わかりやすく食育をすすめる手法
     群馬県食品安全会議事務局 食品安全課 食育推進チーム 福田順子………58
■食育の仕掛け人!
  私の体験的食育論         
                     医学博士・管理栄養士 本多京子………66
■シリーズ:世界の食から――アメリカ
  世直しの食卓をめざすある女性の挑戦
                    ノンフィクション作家 本間千枝子………72
■食育の使えるツール箱 
  「手ばかりパンフレット」で食事バランスをお手軽チェック
                      甲州市塩山保健福祉センター ………78
■地域に根ざした食文化ルネサンス
  桜島大根――火の島に生まれた鹿児島の伝統食材を絶やすな!
                   かごしまの食を語る会顧問 八幡正則………80
■食育の情報コーナー ……………………………………………………………………………84
■食育活動NEWS    ……………………………………………………………………………86

巻頭言 食をめぐる問題を一言で表現した「食育」
「食育」を大いに進めましょう

◆社団法人 日本栄養士会会長 神奈川県立保健福祉大学教授 中村丁次

神奈川県立保健福祉大学教授 中村丁次 かつて、インドの山奥で狼に育てられた子どもが発見されました。その子どもは、狼と同じように四つんばいになり、生肉をむさぶるように食べたのです。ほかの動物と異なり、人間だけは、人間が適正に育てないと、人間としての食事ができません。

 では、人間としてどのような食事をすべきなのでしょうか。

 現在、健康、栄養、医療、調理、農業、加工、流通、文化、価値観等から多くの意見が出ています。箸がもてない、料理ができない、家庭で食べない、感謝しない、弁当ばかり、欠食・個食・不規則である、拒食してやせる、過食して肥満する、生活習慣病になる、食物が安心できない、安全でない、自給できない、無駄に使うなど、上げれば限りがないくらい、多様な内容が指摘されています。

 しかし、大切なことは、個々に発生した問題点を単に憂えるだけではなく、これらの点と点を結び、統合化した概念と政策、さらに教育により、総合的に解決すべき道を探ることです。

 幸いなことに、わが国にはこれらを統合化し、一言で表現できる言葉がありました。それが「食育」だと思います。

 「食育」という言葉は、明治三十一(一八九八)年石塚左玄が『通俗食物養生法』という本のなかで、「今日、学童を持つ人は、体育も智育も才育もすべて食育にあると認識すべき」と記したことに始まるとされています。

 国は、「食育基本法」を作り、食育活動を国民運動として盛り上げようとしています。

 食育基本法には、すべての国民が心身の健康を確保し、生涯にわたって生き生きと暮らすことができ、豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身につけていくためには、何よりも食事が重要であることから、改めて、食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置づけています。

 社会経済情勢がめまぐるしく変化し、日々忙しい生活を送るなかで、私たちは、毎日の食事の大切さを忘れがちになります。しかし、私たちの体は間違いなく、食物から摂取した栄養素の組み合わせからできているのであり、私たちのすべての活動は食物からのエネルギーによって営まれています。どのように食事に無知で、食事を無視したとしても、私たちが生きている限り食事の影響から逃れることはできないのです。

 一日に約二kg、一年間で約七三〇kg、八〇歳まで生きたとして、人間は一生に約六〇tの物を体内に入れます。

 安心し、安全で、健康によく、おいしい物を確実に食べられる環境作りも大切です。

 このように、広くて深い意味を持つ食育活動をみんなの手で進めていこうではありませんか。

 そして、将来、あの時、あの食育活動があったから、このように健康で、豊かで、安心した生活が送れると言ってもらえる時がくることを信じています。