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食育活動
No.2 2006

7

地方発!「食育推進計画」をこう立てたい
妊産婦と子育て期の食育

 

■巻頭言 保育所を地域の食育の発信拠点に
          日本保育協会岩手県支部女性部長・若葉保育園園長 中村美喜子………4 
 
          
特集T 地方発!「食育推進計画」をこう立てたい  
        
■地域の実情に応じた「食育推進計画」の策定を――食育推進基本計画のポイント
                   内閣府食育推進室 参事官補佐 小野寺慎司………8
 ◆豊かな資源と人材を結ぶ協働指針づくり――いきいき!健やか!岩手の食っ子プラン
      岩手県環境生活部 食の安全安心・消費生活担当 主任主査 白岩利恵子………15
 ◆元気もりもり道産子食育プラン
     ――北海道の四季と海の大地から・・・健康で長生き、豊かな生活の実現
   北海道農政部食の安全推進局 食品政策課販路拡大グループ 主査 大久保昌子………20
 ◆戦略性をもった食育推進計画づくりを           恵庭市長 中島興世………24
 ◆食育は地域のネットワークづくりから      上越市農林水産部長 野口和広………26
 ◆米文化の継承を通じて健康長寿の町づくり 鶴田町教育委員会教育次長 竹浪正顕………28

特集U 妊産婦と子育て期の食育■「妊産婦のための食生活指針」のねらいと考え方
             厚生労働省雇用均等・児童家庭局 母子保健課 河野美穂………32
■食を通じて子育ち・子育てを応援する――地域拠点としての保育所の役割    
                  東京家政学院大学家政学部助教授  酒井治子………38
■親から子への食文化の継承は離乳食から 
                     京都大学大学院農学研究科教授 伏木亨………44 
                     
■日本の伝統の味を子どもたちに届けたい――米飯・和食!保育園の給食で子どもの味覚を育む
             きのみ保育園園長・きのみむすび保育園園長 坂下喜佐久………48                        
連載    ■実践から学ぶここが決め手! 食育最前線の取組みから
 ◆地域密着型学校給食が地域の「食の架け橋」を創る――南国市の食育10年の歩み
                            南国市教育長 西森善郎………52
 ◆子どもが主人公!地域で創る食農保育の実践
             NPO法人 親と教員の会こどものその 理事 金丸晴美………60
■食育の仕掛け人!
 食体験は誰も代わってあげられない――子どもの自立・発見を支える台所育児のすすめ       
                          食育・料理研究家 坂本廣子………66
■シリーズ:世界の食から――韓国
  映画「おばあちゃんの家」にみる韓国の子たちの食事情
              農林水産省消費・安全局 消費者情報官補佐 勝野美江………72
■食育の使えるツール箱 
  野菜人形劇団「ベジタブル」――野菜をそのまま人形に
                        西日本新聞社 編集委員 佐藤弘………84
■地域に根ざした食文化ルネサンス
  伝統食・伝統食材の掘り起しから地域づくりへ
   ――「食」を多面的にとらえる「群馬の食文化研究会」の取組み
          群馬の食文化研究会代表幹事 志田俊子/事務局長 一ノ瀬忠雄………80
■食育の情報コーナー「食事バランスガイド」を地域型に…………………………………………84
■食育活動NEWS    …………………………………………………………………………………87

巻頭言 保育所を地域の食育の発信拠点に

◆日本保育協会岩手県支部女性部長 若葉保育園園長 中村美喜子

若葉保育園園長 中村美喜子 日差しの優しさに応えて花壇や畑の緑がいっせいに輝き始めました。食物を栽培する者にとっては、新しい生命の息吹に一年中でもっとも胸躍らせるときです。保育園の小さな菜園でも、子どもたちがあれこれ迷って蒔いた野菜の種が可愛らしい芽を出し始めました。

 ほんの五〇年前は、家庭の一回の食事をつくるために、今とは比べものにならないほど、多くの手間と時間が費やされました。 

 ご飯を炊くためには「薪」の準備から始めて、炊きあがるまで微妙な火力調節が必要なことから、竈のそばを離れるわけにはいきません。ですから、その間にお味噌汁と大きなおかず(お魚や根菜の煮物)と小さなおかず(炒め物やお浸し)をつくり、常備の佃煮や漬け物を準備するのです。

 家庭の主婦は、そうした食事を、集った家族が「美味しい」と食べてくれるのが楽しみでした。それはまさしく家事の一部だったのです。

 日頃は慎ましい食事も、時節の行事には「ハレ」のご馳走がつくられ、食生活にも変化がありました。「食べる楽しみ」や「母の味」は日常の食事から生まれたのでしょう。その頃の多世代同居の暮らしのなかで、高齢者は食に関する躾の部分を受け持っていました。

 好き嫌いせず食べ物を大切にすることや食事のマナーなど、人として生きていく基本を、子どもたちに体験させながら教えていました。こうした家庭での食の営みは、高度経済成長のなかで急速な核家族化と女性の家庭外就労とともに、そのほとんどが失われました。

 私たちは、子どもたちが一日の大半を過ごす保育園で、かつての心と体に優しかった食生活や食習慣を取り戻したいと考えてきました。

 そこで、家庭の食事の実態を把握しながら、保育園が供給すべき栄養量を踏まえたうえで、子どもたちが自ら育てた野菜を、収穫し調理して食べる体験をさせたり、季節や行事にちなんだ日本の伝統的な食事を味わわせることで、こどもたちが望ましい食生活を営むための基礎を培ってあげたいとさまざまな取組みをしています。

 和食が見直されるなか、保育園の調理室では、まさに食生活の原点に立ち返っての食事づくりが展開されています。保護者も巻き込みながらのこうした取組みは、子どもたちに日本の食文化を伝えていくことでもあると思います。

 子どもたちはままごとが大好きです。見ていて微笑ましいくらい調理の様子を細やかに模倣します。食材を刻む様子、鍋をかき回したり、お茶碗を洗う様子、家庭の台所でお母さんのすることを憧れの目で見ているのです。この時期にお手伝いをさせながら、上手に出来たことをたくさん誉めてあげると、子どもたちは将来、食事づくりが苦ではなく、楽しめる人になれると思うのです。

 食育のチャンスは日常生活のなかにたくさんあります。どの子も心身共に健康で幸せな人生を謳歌できるよう、保育所を地域の食育の発信拠点に据えて、みんなで心を込めて、食べることの楽しさや大切さを子どもたちに伝えていきましょう。