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食農教育 No.34 2004年5月号より 母親を学習にいざなう法
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左)汲田喜代子先生:1967生。2年前から本格的に食農教育をはじめ、保護者会にも工夫をこらす。 右)石川加代子先生:1973生。5年前に学級崩壊を経験し、保護者との関係の大切さを痛感。 | |
「保護者」というと、無意識のうちに「できるだけ遠ざけておきたい相手」というイメージをもっていないだろうか。しかし、お母さんを「お客さん」にせずに、いっしょに学び、いっしょに子育てする仲間にしてしまえば、学習も、学級経営もうまくいく。
食べる、育てる、地域を調べるといった活動のなかから、母親、父親、地域の人とつきあい、ともに学んでいく知恵を集めてみた。
食べものや農業をテーマに学習をするには、教師だけでなく、保護者や祖父母、さらには地域の人にかかわってもらうことがとっても大事。なかでもお母さんと仲良くなることは、学級経営をうまく回すコツでもあるよう。だから、新年度の保護者会を、新しいクラスでの学習をうまくスタートさせるきっかけにしたい。
以前、高知市内の同じ小学校に勤めていた二人の先生に、保護者会を成功させるヒケツを語り合ってもらった。
石川 懇談会(保護者会)で戸惑うのは、まず参加人数が少ないときですよね。地域によってちがうけど、多くて10人、5〜6人でふつう。授業参観には出るけど、そのあとにPTAの役員選出なんかがあるときには少ない、っていうときがありますよね。
汲田 上級生はとくに少ないよね。だから、その場にいておもしろいな、と思わせるものがないとダメだな、と思う。たとえば、4年前に6年生をもったときに、懇談会で修学旅行のビデオを見ます、とやった。このときは教室いっぱい来たよ。「これが震災のときのメモリアルパークです」「これが宿泊したホテルです」とか言いながら40分くらい。お母さんたちも「これ聞きました!」「いやー、うちの子ばっか映っちゅー、どうしよう」とかギャーギャー言いながら見ていた(笑)。自分の子なのに知らない世界があって、それがすごくおもしろかったようで、そのとき、「あー、こういう情報を欲しがってるんだなー」と思った。
目に見えるものがあると、話しやすくなるし、すごくいい。私はいつもデジカメをぶらさげてて、なにかあるとすぐ写真に撮るんだけど、それをスライドショーして見てもらってもすごく喜ばれる。活動のようすが成果物。言葉で説明するより、子どもの表情なんかは写真で見せたほうがよっぽど伝わるよ。
石川 なるほどー。
汲田 三年前に自分の子が小学校に入学してはじめて保護者の立場になったんだけど、「なんてかたくるしいんだろう」って思った。「お家のようすは?」「なんか困っていることはありませんか?」とか。
石川 そうそう。懇談会って、そんなもんだと思ってた。それで、話題に詰まってお互いに困っちゃうんです。
汲田 「こりゃ、どうしても参加しなきゃいけないとは思えないなー」と、そのとき思ったのよね。お客さんでいなきゃならないのが、すごくしんどかった。
それで、2年前からは1年生を担任したこともあって、授業も懇談も日常の生活もすべてボーダレスにするように心がけた。いまの時期に生活科でしていることを、懇談会でももう一度するように。たとえば、2学期はポップコーンづくりとか。
石川 えー、そんなことまでやっているんですか?
汲田 そう。廊下の窓の上に、生活科で育てて乾燥させたトウモロコシを吊しておくのよ。それで、授業参観が終わったら「お母さんたち、今日はおもしろいことしますんで」と言って残ってもらう。懇談会がはじまるやいなや、いきなりトウモロコシをはいでもらって、そのあいだに私はホットプレートを温める。バターをぬって、トウモロコシを入れていくだけ。コーンが跳ね出したら透明のフタをする。ピョンピョンと中のようすがわかっておもしろいんよ。途中でおもむろにフタをとる演出なんかをしてやると、ワーワー盛り上がってねー」(笑)。
石川 それは雰囲気なごみますねー。
汲田 やっぱり、面と向かって話し合おうとすると黙り込むしかないけど、いっしょに作業しながらだと、自然と関係ができちゃうよね。
あと、話題づくりに廊下に張りものとかもする。カレンダーの裏に実がなる前のトウモロコシの絵を描いておいて、「どこになるでしょう?」って子どもたちに質問する。思ったところに自分の名前を書いたシールを貼ったものを掲示しておくと、「うわー、うちの子こんなとこに貼ってるわー」、とかね。トウモロコシは上になると思った子が多かったなー。あと、ラッカセイも。ちょうど花の咲いたときの姿を描いておいて、なにげに土も描いておく。さすがに正解を当てた子はいなかったわねー。
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