本全集(各県版+索引巻、全50巻)は、全国300地点、5000人の話者から「聞き書き」してできあがった世界最大の食文化データベースです(収録料理数5万2000点)。

雪納豆 (岩手)

 話者は、昭和初期(1930年頃)、川も海も空気もきれいだった時代に、農村や都会で台所をあずかり、一家のいのちをはぐくんでいた女性たち。
 その土地の自然とともに生きる技、すなわち人々はなにを食べ、どう保存・加工・調理し、子どもを育て、暮らしを作り上げてきたかの全体像を表現したものです。これは、今残しておかなければ永久に失われてしまう貴重な記録です。
写真左:雪納豆 (岩手)

全50巻セット

日本の食生活全集 全50巻

ISBNコード:9784540840524
発行日: 1993/02  出版:農文協

おばあさんからの聞き書きで、各県の風土と暮らしから生まれた食生活の英知、消え去ろうとする日本の食の源を記録し、各地域の固有の食文化を集大成する。救荒食、病人食、妊婦食、通過儀礼の食、冠婚葬祭の食事等。

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各巻紹介

食生活全集全国早わかり地図 アイヌ
日本の食事事典I 北海道
日本の食事事典II  
青森
秋田 岩手
山形 宮城
石川 新潟 福島
山口 島根 鳥取 福井 富山 長野 群馬 栃木
広島 岡山 兵庫 京都 滋賀 岐阜 山梨 埼玉 茨城
佐賀 福岡 大分 大阪 奈良 三重 愛知 静岡 東京 千葉
長崎 熊本 宮崎 愛媛 香川 和歌山 神奈川
鹿児島 高知 徳島
沖縄

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刊行にあたって

 今、やっておかなければならないことがある。今、やっておかなければ、永久に失われてしまうことがある。日本人がつくり上げた食事。それは、今、それを記録しておかなければ、永久に失われてしまう。

 建築物・構造物・書画・骨董・民具等、形あるものは残る。しかし、日本人の伝統的食事の総体は、それをつくった人々がいなくなれば永久に失われる。

 大正から昭和初期にかけて、食事をつくった人人、今、80歳前後の主婦達は、日本の食事を伝承した最後の人々であろう。この人々が、この世から去れば、その人々とともに日本の食事は永久に失われてしまう。

 この主婦たちの食事つくりは、地域地域の自然の生み出した四季折々の素材を、調理し、加工し、貯蔵したものであった。

 それは北と南では違い、西と東では違っていた。地域ごとに異なる自然の個性が、そこに住む人間の手によって表現された食事であった。当時の食事には、今日、われわれが失ってしまった地域的な、個性的な、人間的な自然がある。食事がそれを表現している。

 食事に表現されている自然は、決して自然科学的自然ではない。人間の手が加わった人間的自然である。個性的自然である。日本の食事の総体を残すということは、今、失われている人間的自然を、個性的自然を、残すということなのである。

 日本の食事には地域的自然があっただけではない。春夏秋冬、四季があった。今失われている季節が表現されている。その四季は自然的四季と人間の労働(農耕)が織りなした人間的四季である。日本の食事は、今、失われている人間的四季を表現している。

 日本の食事は「はれ」と「け」を表現している。自然的四季と人間の労働は「祭り」を生む。そして食事は「祭り」を表現する。日本の食事には、今、失われている「祭り」が表現されている。

 われわれの祖先の数千年にわたる営々たるいとなみが日本の食事に表現されている。それは伝承によってしか保存することが出来ない。しかし、その伝承は「高度経済成長」によって断ち切られた。今、記録を残す以外に道はない。

私どもは、日本全土、津々浦々に足を運び、日本の食事を日々つくった人々の口から聞き出し、実際に食事を再現してもらい、それを記録にとどめる。それをつくった人々の「想い」とともに記録にとどめる。

 そして、この日本の食事を記録にとどめる運動が、記録としてとどめられるだけでなく、伝承復活の契機になることを期待したい。

 今、やらなければならぬことがある。どうしてもそのことをやりとげたいのである。

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テーマガイド 索引巻を使うとテーマ別にご利用いただけます

季節の食事 雑煮めぐり

お正月は、雑煮。その土地土地での違いが特に際だつ料理です。 つくり方・食べ方で「もち:雑煮」を検索すると、全国のお雑煮が引き出せます。 そのうえ、データベースでは「素材」などでもしぼり込めます。 あなたの家の雑煮はどんな雑煮ですか?雑煮からあなたのルーツを探ってみませんか?

ぶり雑煮

ぶり雑煮 長野(安曇平地方)

東日本は鮭(さけ)、西日本は鰤(ぶり) を正月魚として使います。東西の分岐点は大井川といわれています。

→長野の食事より

豆腐の雑煮

豆腐の雑煮 徳島(祖谷山地方)

さといもと豆腐を入れた雑煮です。おもちは入れない雑煮です。

→徳島の食事より

味噌雑煮

味噌雑煮 京都(京都市近郊)

右下が丸もちを使った味噌仕立の雑煮です。このタイプの雑煮は、山口、鳥取にもあります。 福井の若狭の雑煮はこれに黒砂糖を2切れのせます。

→京都の食事より

季節の食事 正月のおすし

冬のおすしは格別です。 乳酸菌を利用した雪深い日本海側のいずし。一方、温暖な黒潮寄せる太平洋側のまぜずし。 おすしは魚と風土がミックスされた豊かな食事です。素材の魚の名前から検索することもできます。 春の節句を迎えれば、ちらしずしや祭りずしなど色鮮やかなおすしが登場します。

はたはたずし

はたはたずし 秋田(男鹿半島)

冬、雷が鳴ると浜に打ち寄せるはたはたでつくります。 お米の保存食といってよいほどたくさんのお米を使った、米どころのおすしです。

→秋田の食事より

さんまずし

さんまずし 三重(紀伊山間)

熊野灘沖でとれる脂ののった10月のさんまでつくります。それに、こぶ巻きずし、 揚げずし、のり巻きずしを加えて、4種類のすしを正月に揃えます。

→三重の食事より

ふなずし

ふなずし 滋賀(琵琶湖沖島)

卵をはらんだ3〜4月のふなを漬けこみ、土用の頃からごはんに本漬けします。 正月頃から出し始めるごちそうです。疲れたときや風邪のときなど、 お茶につけて食べると口当たりもよく、体が温まります。

→滋賀の食事より

季節の食事 お寺の食事・お供え

あなたは、どこに初詣に行きますか? 神社やお寺ではお正月にどんなものを食べているんでしょうか?なかなか知ることができない神社やお寺の食事やお供え。そんな宗教と食事の関わりも食生活全集では紹介しています。

	横浜中華街:春節

横浜中華街:春節 神奈川(横浜市)

新暦(チェンチェ)の大晦日の夜食は、ライサホートンユイという黒糖のあんを上新粉の皮でくるんだ点心を決まってつくります。中華街の正月は、旧暦の1月で、「春節」といい、「白切鶏」「焼肉」「羅白糯」など最高のごちそうを食べます。

→神奈川の食事より

比叡山延暦寺:定心房

比叡山延暦寺:定心房 滋賀(大津)

稲わらで漬けた大根漬けです。正月3日の「元三会」に新樽を開封します。

→滋賀の食事より

素材と料理 日本の納豆

同じ納豆でも作る場所は風土を生かして実に様々。 雪の中で寝る納豆、土の中で寝る納豆、桶の中で寝る納豆、もみがらの中で寝る納豆、などなど。 また、納豆の産地と馬の産地が重なっているように思えませんか? 「わら」「豆」「馬」(それに鉄?)が風土と暮らしの中で結びついていたからでしょうか? そんな自分なりの仮説を持って「日本の食生活全集」では検索することもできます。

雪納豆

雪納豆 岩手

雪の中に寝かせます。雪の中は、暖かいのです。竹で空気穴をつくります。 わらづとの中には朴の葉を敷きます。

→岩手の食事より

土納豆

土納豆 宮城

畑のすみに掘った穴を稲わらを焚いてあたため、その中で寝かせます。わらづとの中にはわらでつくった「皿結び」を入れます。

→宮城の食事より

ねば納豆

ねば納豆 熊本

つちの中に寝かせます。西日本では納豆は食べないといわれますが、熊本では昔から納豆を食べているのです。

→熊本の食事より

塩納豆 

塩納豆  高知

すりぬかの中へ埋めて寝かせます。できた納豆には塩とぬかを混ぜ、鉄鍋で煎ります。 ねばらない納豆のできあがりです。

→高知の食事より

素材と料理 日本の豆腐

大豆の利用では納豆、豆腐が代表です。 「味噌」「醤油」「たまり」「もろみ」「ひしお」 「呉」「豆乳」「凍み豆腐」「焼き豆腐」「油揚げ」など。 「大豆」を素材にした料理を「日本の食生活全集」で検索することができます。

固豆腐

固豆腐 石川(白山麓)

石にぶつけても壊れないほど固い?といわれる豆腐です。わらで十字にしばって持ち歩けます。にがりを多く使い、重石もきつくしてつくります。

→石川の食事より

つと豆腐

つと豆腐 茨城(県央)

豆腐を砕いて「つと」に入れ、わらで巻いて大釜でゆでます。それを煮物にして食べます。熊本ではこれを「すぼ豆腐」、岡山では「すまき豆腐」といいます。

→茨城の食事より

糸満豆腐

糸満豆腐 沖縄

海水で固めた豆腐です。潮が引いたときに沖に出て海水をくみ、これをにがりにして固めます。6月の大潮の日にとれる小魚の塩漬け「すくがらす」をのせたりします。

→沖縄の食事より

素材と料理 日本のパン

私たちは風土を生かした技術で麦を多様に加工してきました。 「日本の食生活全集」では、「焼きもの:パン」や「焼きもの:流しやき」、 「焼きもの:おやき・焼きもち類」などのつくり方で検索できます。 日本風のパンはふっくらやわらかではないけれど、おなかのもちがいい、香ばしいパンです。

流しやき 

流しやき  岡山

6月1日にはかならず作ります。小麦粉を水でとき、すこし砂糖を入れて甘みをつけ、ほうろくで焼きます。

→岡山の食事より

蒸しパン

蒸しパン 岐阜(美濃)

うどん粉に炭酸を混ぜ、せいろなどで蒸しあげます。

→岐阜の食事より

おやき

おやき 長野

野菜あんをなるべくたくさん入れた薄い皮のおやきが上手だといわれます。おやきはまずほうろくで焼き、つぎに灰の中にいれ、豆木を燃やしたおくり(おき)を上からかけて蒸し焼きにします。

→長野の食事より

素材と料理 日本の茶

日本の食事と茶は切っても切れない関係です。 最近では茶の殺菌効果も注目されています。もともと茶は中国のお坊さんが日本にもたらした「薬」だったともいわれています。「日本の食生活全集」では、茶の木の栽培から製茶、楽しみ方まで紹介されています。

茶がゆ

茶がゆ 奈良

 奈良葛城では、一年中、朝食は茶がゆと漬物です。毎朝ほうじ茶の香りが家中に広がります。

→奈良の食事より

ぼてぼて茶

ぼてぼて茶 島根

白い泡を盛り上げた茶に少量のごはんとお菜を入れます。富山のばたばた茶、沖縄のぶくぶく茶もこのタイプです。

→島根の食事より

碁石茶

碁石茶 高知

乳酸発酵させたお茶です。朝鮮の銭団茶、中国東代の団茶、ビルマの碁石茶、徳島の阿波番茶の仲間です。塩水によく合うので漁師さんに好まれます。

→高知の食事より

旅と暮らし 山の暮らし

山で暮らす人がいて山は守られます。山の人々は雑穀といもと野菜で長寿を保ちます。取材地の「立地区分」から「山地」を選べば、山の四季折々の暮らしを訪ねることもできます。炭焼き、焼畑、狩猟、木地仕事、育林など山の暮らしと食事をご紹介します。

檮原

檮原 高知

西日本一の高さを誇る石槌山につながる山々に囲まれて、千枚田は、耕して天に至ります。

→高知の食事より

勝山

勝山 福井

山深い奥越では、村全体がすっぽりと雪の中に埋もれます。夜なべに石臼でひえをひきます。

→福井の食事より

西米良

西米良 宮崎

焼き畑(こば)への火入れです。ここにそばをまきつけます。

→宮崎の食事より

旅と暮らし 湖の暮らし

淡水湖の豊かな魚貝を利用した暮らし。 湖を守り、湖に生かされてきた暮らしの中には、現代人が忘れがちな自然とつきあう知恵があります。「立地区分」から「湖沼」を選べば、全国の湖の暮らしを訪ねることができます。そこでは、四季それぞれの食をめぐる労働や楽しみが「聞き書き」で語られています。

霞ヶ浦

霞ヶ浦 茨城

わかさぎの帆引き漁です。風の力で帆船と水中のふくろ網を引っ張ります。

→茨城の食事より

琵琶湖

琵琶湖 滋賀

船上での昼食の様子です。船のうしろにはかまどがあり、釣り上げた魚を焼いて、おかずにします。

→滋賀の食事より

宍道湖

宍道湖 島根・鳥取

晩秋、あまさぎ(わかさぎ)の初ものの頃につくる「あまさぎの照焼き」です。1ぴきずつ炭火で焼き、これに醤油、砂糖、みりん、しょうがで作ったたれをつけて照焼きにします。

→島根の食事より

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関連書籍

伝え継ぐ日本の家庭料理 全16冊
農文協 編
発行日:2017/11  出版:農文協 今だからこそ伝えたい、日本各地の家庭の味 『日本の家庭料理』ついに刊行!

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聞き書
ふるさとの家庭料理 全21巻(含む別巻1)
農文協 編
ISBNコード:9784540041495
発行日:2004/04  出版:農文協

昭和初期、村々の台所で季節の巡りに合わせて作られ、食べられていた「地産地消」の食事を全国三百ヵ所で聞いてオールカラーで再現したおばあちゃんの自慢料理の数々。別巻に「祭りと行事のごちそう」を収録。

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伝承写真館
日本の食文化 全12巻
農文協 編
ISBNコード:9784540062230
発行日:2006/07  出版:農文協

この本は郷土料理の写真集ではありません。自分で耕し、自分で食事を作り出していた全国のおばあさん、おじいさんたちの暮らしを「食」を通じて思い出す写真館です。本書は「日本の食生活全集」全50巻の口絵・本文・月報などの一部を再編成したダイジェスト版です。日本人の食文化の原点を網羅した聞き書きの全容をお読みになりたい方には「日本の食生活全集」と併せてのご利用をおすすめします。

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