「合理的農業の原理」アルブレヒト・テーア著 全3巻 揃価36,000円 予約フォームへ

初源の近代がもっていた豊かな可能性
アダム・スミス『国富論』に比肩する歴史的名著
初の日本語訳(全訳)なる!

●アルブレヒト・テーアとは

 1752〜1828年。近代農学の始祖と言われる。自らの農場経営の実践のもと、18世紀後半から19世紀前半のドイツにあって農業生産を飛躍的に増大させる輪栽式を指導し、また農業生産の向上のためには経済行為としての自由な農業が必要として封建的な身分・土地所有関係の改革の端緒を開いた。もと医師であり、自らの農場や大学で多くの後進を育てた教育者でもあった。

●ゲーテが賞賛した「農学のアダム・スミス」

 イギリスで産業革命が起きていたころに生まれた。当時ヨーロッパではマルサスが『人口論』を著して食料問題への警鐘を鳴らし、ケネーは重農主義で絶対王政を維持しようとしていたが、テーアが結婚した年にはフランス革命が起きるという政治・経済・社会・思想上の大動乱期に過ごした。
 当時ドイツは40余の領邦国家に分かれた状態だったが、フンボルトの地理学やランケの歴史学など実証的な科学が続々と生まれたドイツ自然哲学の最盛期でもあった。デカルトやニュートンの機械論的自然観とは一線を画す、ライプニッツ以来のドイツ自然哲学の潮流の中で、農業という人間の労働を含んだ自然の統一的なあり方を体系化したテーアの業績は、同時代人であるゲーテも高く評価し、テーアを賞賛する詩を贈ったほどである。

●明治のお雇い外国人にも絶大な影響

 テーアの代表的著作である本書『合理的農業の原理』は当時、ヨーロッパ各国で翻訳されベストセラーとなった。また19世紀後半になって近代国家の仲間入りを果たした日本の明治政府が招聘したドイツの農学者たちもテーア農学をもって日本を指導した。

●幻の本を50年に及ぶ研究でついに翻訳

 しかしながら本書の日本語訳はこれまでなされておらず、国内で確認されている原著もわずか2組(九州大学、農林水産省農林水産政策研究所)で、その全貌はこれまで明らかではなかった。この度、茨城大学名誉教授の相川哲夫博士の50年に及ぶテーア研究の集大成として初の日本語訳を刊行する。

 

本書の5大特徴

「持続可能な農業」への転換に向けて、現代の課題に応える

「持続可能な農業」の実現には、地力維持を基本にした循環型農業への転換が必要。また、減農薬、有機栽培は輪作なくしては成り立たない。土地利用と輪作、畜産と堆厩肥の確保など、経営、技術の両面から総合的に応える。

耕種−畜産の連携の基礎を実践的に示す

耕種と畜産の連携した循環型農業の実現には、土(地力)を中心に作物−家畜をどう組み合わせるかが課題。飼料作物や残渣類の栄養価、家畜の種類・頭数、飼育方式と糞尿・堆厩肥の養分と量、その組み合わせや施用、輪作による地力の増減など、組み合わせるための基礎を緻密な調査・研究による数値で具体的に示す。

経験に裏打ちされた経営論・農業者論に学べる

経営者であったテーアは、瘠せた条件の悪い農場を、農業恐慌のなかで苦闘しながら軌道にのせてきた。その経験と理論を結合して、実践的経営論、農業者論をつくり上げる。安定経営の考え方や心がまえについて、本書で多くの示唆が得られる。

農業教育の方向を示唆

優秀な農業者は「青春期の初期に実習をゆるがせにしないで農業者教育を受けたもの」であり、その教育は農場経営においてこそ実現できると、自ら実践した農家実習と科学的な学習を結合した農業教育の方法を提案。

中世から近世へ、「農業革命」による  経営・生産の実態がつかめる一級の資料

イギリスから始まる「農業革命」。それに学び、農学を科学として体系化し、ドイツを中心にヨーロッパ農業を変えたのがテーア。「農業革命」でどんな農業が展開され、生産力を飛躍的に上げてきたのか、近世ヨーロッパ農業の実際がリアルに表現されている。テーアはドイツの「シュタインの農業改革」にも中心的役割をはたした。

 

テーアの仕事

1.「近代農学の始祖」として世界的に評価されている

農業を経済活動として初めて位置づけ、それを基本に農業経済、土壌・施肥、土地改良、作物栽培、畜産の農業全体を体系化し、農学を独立の科学として確立した。そのため、農学のアダム・スミスとも評価されている。

2.「輪作の原理」を初めて明らかにする

三圃式→穀草式→輪栽式(ノーフォーク式)の輪作(農法)の発展段階を明らかにする。輪栽式が地力再生産、生産力を飛躍的に高めることを示す。

3.有機栄養説を確立、「フムス(腐植)理論」を提唱

植物の栄養はフムス(腐植)=有機物であることを提唱し、腐植を地力の目安に輪作や、有機物の施用(=施肥)の原理を組み立てる。その後、リービッヒの「ミネラル理論」に取って代わられる。

4.耕耘や土地改良(農業工学)の意味を明確に位置付ける

地力向上には「力学的農業」、すなわち耕耘(深耕と中耕)や土地改良が決定的要因であることを明らかにし、近代農業工学を基礎づける。

5.今日につながる畜産の基礎をつくる

乾草を「標準飼料」に、「維持飼料」と「生産飼料」を区別、交配による品種改良など今日につながる技術を開発。「牧羊マイスター」の称号も得る。

6.経営者として、実践のなかで理論を形成

自ら購入した約300haの農場で、自分の理論を実践で確かめ発展させてきた、実践的研究者でもある。

7.「理論と実践を結合」した教育・研究の原型をつくる

理論と実践を結合した、農業単科大学での研究・教育の原型をつくる。