現代農業 特別号
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2005年9月別冊 購入する
鳥害・獣害こうして防ぐ 弱点をつく対策から、共存への環境づくりまで

鳥獣ごとに,その生態と弱点の科学的追跡,全国の農家の手で試された防ぎ方の知恵を,豊富な写真とともに集大成!

はじめに目次編集後記

別冊2005年9月号

野生鳥獣の防ぎ方

 人間が農耕を始めたのは、1万年以上前と考えられている。栄養価が高く、安定的に生産される農作物は、野生動物たちにとっても、きわめて魅力的な食物であったにちがいない。

 スズメやカラス、ネズミやイノシシなど、農作物に被害を与える代表的な鳥獣たちは、人間に近い里の環境に適応して生き残ってきた動物である。しかし、作物の収穫時期は限られているので、彼らとて農作物だけに依存しているわけではない。ふだんは草木の葉や果実・種子、昆虫や小動物などを食べている。人間の側から見ても、いつも農作物を荒らされているばかりではなく、ときどきはこれら鳥獣を食料としたり、農作物に被害を与える害虫や雑草の種を食べてもらったりしてきた。

 人間と野生動物とのかかわりは、きわめて多面的な側面を持っており、被害の面だけをとらえて手荒な対処をすると、あとで手痛いしっぺ返しを食らう。今まで永い「つきあい」をしてきたのと同様、今後も永いつきあいを続けるという認識をもつことが、何より大切な点である。

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「田舎の本屋さん」のおすすめ本

 鳥害・獣害 こうして防ぐ(別冊現代農業)

鳥獣ごとに,その生態と弱点の科学的追跡,全国の農家の手で試された防ぎ方の知恵を,豊富な写真とともに集大成!カラス、スズメ、ヒヨドリ、ハト、カモ、ムクドリ、イノシシ、シカ、サル、クマ、タヌキ、ハクビシン、ネズミ、モグラを収録。 [本を詳しく見る]

田舎の本屋さん 

目次

カラーページ

野生鳥獣図鑑

鳥獣から守りやすい畑

進化し続ける防止柵

電気牧柵の使い方いろいろ

アイヌの文化


野生鳥獣の防ぎ方

Part 1

鳥害

カラス │ 烏

かしこいカラスに立ち向かうには?

 弱点は人間の工夫 …… 杉田昭栄

 ちえくらべ カラス

テグスで5年間被害なし/かしこいカラスにはかしこい撃退法/敬子さん、せいがでるね〜と人もだまされます/種をまいた土の上から杉葉でおおうだけ/身をよじらせるヘビのおどしで撃退!/段違いテグスでカラス退散/カラスは黒マルチを怖がった?/すいかにストッキングをかぶせる/CDで撃退/髪の毛が効く/カラスはヨトウムシの天敵?/カラスが益鳥になった

スズメ │ 雀

ほんとうに害鳥?

 知られざるスズメの食性 …… 大田眞也

 ちえくらべ スズメ

スズメは稲よりひまわりが好き/どうだ!秋の田んぼに鯉のぼり/田んぼに糸をはる方法/百人力のにんにくスズメにも効果/じゃがいもを棒に刺して立てるだけ/黒マルチ利用の簡単案山子/シュロでつくる本物そっくりのタカ/ひまわりでスズメの害がなくなった/スズメよけに硫黄が効く/スーパーの買いもの袋でつくったスズメよけ

ヒヨドリ │ 鵯

 野菜の鳥害防止 一番効果があったのは …… 田村信雄

 ちえくらべ

手鏡を一反に六個つるす/防鳥網のコツはたるませずにかけること/ヒヨドリよけに木酢

ハト │ 鳩

 ちえくらべ

深まきでふせぐ/木酢で大豆の種子処理/ふんわり覆土で/しつこいハトも灰で退散/油でにおいをつける/ハトよけにビールビン/バラのにおいが嫌い?/一升ビン+白糸/日にあてて青くする

 大豆をハトから守るポイント(かこみ)

カモ │ 鴨

 ちえくらべ

田んぼのカモ害対策に茶色の一升びん/パトライトによる撃退法/無代かきにすればカモがよらない

 土中播種と落水出芽で表面を硬くする(かこみ) …… 高城哲男

ムクドリ │ 椋鳥

 ちえくらべ

鳥害対策は動く案山子でバッチリ/防鳥網ですっぽりおおう/ぶどうをねらうスズメやムクドリに木酢

Part 2

獣害

イノシシ │ 猪

 慎重に安全を確認するイノシシ

  鼻で感電させればあぜ波板で防げる …… 若槻義宏

 イノシシの生態を知って防ぐ

 奥行きのある障害物は苦手 …… 江口祐輔

 イノシシを箱檻で捕獲 警戒心をとりのぞく工夫 …… 須永重夫

 ちえくらべ イノシシ

ゆれるろうそくの炎にイノシシ退散/風鈴の音でイノシシ撃退/蚊取り線香でイノシシを寄せつけない/これなら慣れない?イノシシ撃退爆音器/イノシシは、丸いドラム缶にくやしがる/いやなにおいでイノシシを撃退/イノシシが寄りつかない竹林の秘密は人糞?/タイヤをおいたらイノシシ退散

 イノシシを防ぐ柵の工夫(かこみ)

 イノシシの生態 …… 中野栄

 イノシシと人間の歴史から見えるもの …… 本田進一郎

シカ │ 鹿

 シカは足元の網が苦手 …… 安岡平夫/足立年一

 シカの生態 …… 丹治藤治

 ペットボトルを利用して電気柵を安く …… 小林一郎

 ちえくらべ シカ

髪の毛利用法、三つのこだわり/シカの食害対策にクレオソート/新聞紙に木酢をかけて、トウモロコシのつけ根にはさむ/シカやイノシシよけにタイヤ柵

サル │ 猿

 進化する防止柵猿落君 …… 井上雅央/トミタ・イチロー

 山からサルが下りてきた

 生態を知って防ぐ …… 室山泰之

 鳥獣を防ぎやすい果樹の仕立て方 井上雅央 99

 サル・シカ・イノシシ用電気柵

  工夫しだいで安くなる

 サル・シカ・イノシシ用防除フェンス(かこみ)…… 荒蒔敏夫

 ちえくらべ サル

サル退治は七面鳥におまかせ/油ボトルが大の苦手/七面鳥の高笑いがサルを撃退/自家菜園のサルよけは、防鳥網で安上がりに/蝿取り紙でサルの毛抜き作戦/大型犬によるサル撃退法

クマ │ 熊

 クマの習性と防除法 …… 米田一彦

 ちえくらべ

クマの防止に石灰窒素のにおい

タヌキ │ 狸

 ちえくらべ

タヌキ対策 新聞紙でトウモロコシをくるむ/うねに古新聞をはりつける/木酢でタヌキよけ大成功/なぜ効く?タヌキが恐れる白いポリ袋/木酢ひもでタヌキよけバリア/ペパーミントでタヌキよけ/石灰窒素のにおいでタヌキに嫌がらせ/竹酢でみかん園をタヌキから守る/タヌキをラジオでだますのだ/案山子でタヌキとの知恵比べには勝ったが/使い古した長靴・地下足袋でタヌキも退散/タヌキ撃退の武器は犬小屋(犬を飼わなくても効果あり)

ハクビシン │ 白鼻芯

 棚上電気柵でハクビシンを撃退 …… 新井一仁

 ちえくらべ ハクビシン

メロンを100円ショップの鉄製カゴではさめば、ほぼ完璧/畑の困り者、ハクビシンは髪の毛で退治/ネットと蝿取り紙でハクビシンから梨を守る

ネズミ │ 鼠

 ちえくらべ

根まわりにんにくでネズミ撃退/ガムテープでネズミをがんじがらめ/スノコと雪踏みでリンゴの樹皮を守る/秋にあぜを補修すればネズミをシャットアウト/かぼちゃの季節には、落とし穴でネズミをとる/紙の筒でネズミがどんどん捕れる/クレオソートに浸した割りばしをさすだけ/杉の葉でネズミを防ぐ/なぜかネズミはわらびが嫌い/ネズミはしその葉が嫌い?/ネズミ退治はヘビにお任せ/金網で苗木の根をおおう/ガムの効果はネズミにも?/水ガメ式捕獲法/木酢の火事のにおいにネズミも退散

モグラ │ 土竜

 ちえくらべ

カタカタゆれる空缶でモグラもネズミも退散/買い物袋がバタバタ、これでモグラは来ない/臭いで退散モグラよけに正露丸/ドクダミでモグラ退散/ガムを食わせてモグラ退治/ミミズが多いとモグラに困るというが…/溝を切ってボカシを入れる/鯖頭でモグラを防ぐ/モグラよけに牛の爪が効く

Part 3

野生鳥獣と食

狩猟と採集の民 アイヌの食 …… 萩中美枝/藤村久和/村木美幸

ぼたんなべとしし汁 鳥獣、小家畜の利用法

しし肉料理 イノシシは当地方いちばんの美味肉 …… 瀬上精一

夏だって食べようイノシシ肉

しし肉の安全性 …… 久家美奈

Part 4

共存へむけた環境づくり

里山・里地放牧 里で牛を放牧して野生獣を防止 …… 千田雅之

里地放牧でイノシシ被害が激減 …… 上田栄一

クマと共存するには …… 米田一彦

野生動物と人 悲しみの背景 …… 本田進一郎

蜜源の森を守る …… 安藤竜二

荒れた畑地に広葉樹の林を育てる …… 中本清治

暮らしを豊かにしてくれる雑木林 …… 本田弘

利用するからこそ森は豊かになった …… 中川重年

法律・制度

鳥獣害防止の捕獲には、狩猟免許はどこまで必要? …… 馬奈木昭雄

知っておきたい法律・制度 …… 本田進一郎

廃物利用による電気柵の製作 …… 土合靖

編集後記

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編集後記

◆鳥獣害というと、ついつい「退治する」「駆除する」ということになりがちだ。作物を荒らされた農家にしてみれば、憎い敵という気持ちになるのは当然である。しかし、生物種の絶滅がかつてないスピードで進む現在では、有害鳥獣といえども短絡的な対処では済まなくなっている。

 モグラは代表的な有害獣とされているが、富山大学の横畑泰志氏によると、モグラは糖類消化酵素の一部を持たず、純粋な肉食動物であるという(胃の中身を調べると、夏場の乾燥する時期にまれに植物質がみられ、水分補給のためにそれらをかじるらしい)。田畑ではその穴で作物を枯らしたり、野ねずみが穴を利用したりするが、野原や森に暮らすときは土壌の保全に貢献している。これは、スズメやムクドリなどでも同じことで、あるときは作物に被害を及ぼすが、種子を拡散し生物種の多様性を維持する上では重要な役割を果たしている。対応が複雑になる所以である。

 さらに、人間に「利益」をもたらす場面ではほとんどすべての人類の生存に貢献しているが、「害」が現われる場面では一部の農家ばかりに負担が強いられる。このような不公平がいつまでも放置されてよいはずがない。(本田進一郎)

◆常には『農業技術大系』や『農業総覧病害虫編』というお堅い本の担当をしていて、このような雑誌を担当したのは初めてである。

 この冬から東京の奥多摩で森林ボランティアに月に2回程度出かけている。そこも猿やシカ、イノシシ、熊が出没して被害を及ぼしている。郷里の広島の安芸高田市もイノシシやシカはもちろんのこと、昨年はとうとう熊も出没するようになって、ネットや電柵が張りめぐらされている。困ったものだ。

 さて、今回の雑誌のコーナーに「共存へ向けた環境づくり」を作った理由を説明をしておきたい。これまで自然を破壊尽くしてきた人間は、自然の中に住む野生動物とは決して共生できないのではないかと思うようになったのである。そうではないにしても、「共生の場」として人と野生動物との「境」を作り上げていく作業、努力をしていかなければならいのではないか。その「境」の代表的なものは雑木林で、村や農地と隣接するこの場所が、多様な動植物が生息できると共に、人間も活用できるような場所、環境にしていかなければならないと思う。各地で雑木林の再生の活動をされている方々が多くなっているが、これからも頑張っていただきたい。

 今回はこれまでの各誌の著者の方々はもちろん、東京都水道局の方々にも、郷里の私の父親にも協力願った。お礼いたします。(松本学)

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