現代農業 特別号
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2006年12月別冊 購入する
農家が教える どぶろくのつくり方

どぶろくの農文協がお届けする、どぶろく、ワイン、ビール、焼酎など、秋の稔りをさらに楽しく彩る自家醸造のすべて!麹づくり、もとつくり、仕込みの技のいろいろ、酒粕の活用法までを集大成。月刊『現代農業』をベースに、「聞き書 日本の食生活全集」、「食品加工総覧」から選りすぐりの記事を収録。

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別冊2006年12月号

「にごり酒」は百薬の長

 人の腸内には、五〇〇種類、一〇〇兆個以上(重さで一・五kg)もの腸内細菌が生息している。それらは、一種の生態系(腸内細菌叢)を形成し、人が消化しにくい食物を分解して吸収しやすくしたり、病原細菌が腸内で増殖するのを防いで、宿主である人と共生している。生まれたばかりの赤ん坊は無菌の状態だが、母親の乳首や皮膚に付着していた微生物が、新生児の腸内に入り、腸内細菌叢をつくり上げる。そして、腸内細菌からの刺激によって、免疫系が発達していくと考えられている。近年の研究では、腸内細菌は、消化器系のみならず、癌、心臓病、脳血管疾患、アレルギー、アルツハイマーなど多くの病気と関係していることが明らかになりつつある。

 「どぶろくを(適量)晩酌するようになってから、体の調子がよくなった」という話を聞く。どぶろくづくりに欠かせない麹は、でんぷんやたんぱく質を分解する酵素の力が強い。この酵素は、消化剤として市販されている。いっぽう、酒を醸しだす酵母は、もろみの栄養分を細胞内に濃縮して、アミノ酸、ミネラル、ビタミン類などが豊富なため、健康食品として人気が高い。また、酵母の細胞壁には、抗アレルギー作用や免疫機能を高める作用があるとの研究もある。酒が古来より、「百薬の長」といわれてきたのは、麹や酵母に人を健康にする力がそなわっていることを、経験的に知っていたからではないだろうか。ただし、現在市販されている酒類からは、これらの微生物は完全に殺菌もしくは取り除かれている。微生物がわずかでも存在していると、商品の品質を長期に保つことができないからだ。自分でつくる「濁り酒」や「濁りビール」なら、酵母や酵素をそっくり飲むことができる。

 日本は、自家醸造を法律で禁じている、世界でもめずらしい国である(宗教上の理由で、酒そのものを禁じている国はかなりある)。「どぶろく裁判」で、故前田俊彦氏が、「自家醸造は基本的人権」であり「酒税法は憲法違反」と主張して国と争ったが、最高裁は、「自分で飲むための酒づくりであっても、これを放任すれば酒税の徴収確保に支障を生ずることが予想される」という理由で、前田氏の主張を退けた。

 政治家、官僚など為政者諸氏に進言申し上げる。自家醸造を禁止ではなく、逆に奨励してみたまえ。日本中の家庭で、どぶろくや手造りビールがつくられ、麹や酵母を人々が愛用するようになれば、医療費の減少によって、国庫は潤うこと間違いない。酒税は国庫歳入の二%にすぎないが、医療費は歳出の四〇%弱を占めているのだから。

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 農家が教える どぶろくのつくり方

「どぶろくの農文協」がお届けする、どぶろく、ワイン、ビール、焼酎など、秋の稔りをさらに楽しく彩る自家醸造のすべて!麹づくり、もとつくり、仕込みの技のいろいろ、酒粕の活用法までを集大成。月刊『現代農業』をベースに、「聞き書 日本の食生活全集」、「食品加工総覧」から選りすぐりの記事を収録。 [本を詳しく見る]

田舎の本屋さん 

目次

カラーページ

どぶろくの麹をつくる 撮影 …… 小倉隆人

どぶろくで田植えを乗り切る …… 撮影 千葉 寛/岩下 守

多彩などぶろく料理 撮影 千葉 寛/Yosise.Osamu

ピヤパトノト(ひえ酒)づくり …… 撮影 中川 潤

飛騨白川のどぶろく祭り …… 撮影 小倉隆人

山ぶどうで手造りワイン …… 写真・協力/文 永田勝也

酵母が生きる濁りビール …… 馬場 勇 撮影 橋本紘二

麹も自分でつくる …… 写真・協力 永田勝也/好井久雄/照屋比呂子/小倉かよ

ピヤパ(ひえ) …… 撮影 中川 潤

序 「にごり酒」は百薬の長

Part 1

どぶろくをつくろう

どぶろく復権で発酵文化を取り戻す
ワイン風、ウイスキー風、発酵肥料‥
自在にどぶろくづくり …… 宮城四郎

土着菌でつくるどぶろく …… 群馬太郎

木こりのじいさんに教わったナラの木、花もと …… 福島次郎

どぶろく特区なら販売もできる …… 若井明夫

酒粕でつくる甘酒も楽しみ …… 富山花子

図解 山里で出会った「あたりまえのドブロク」 …… 貝原 浩(えと文)

【図解どぶろく宝典】ムックリ、サコロベ、刺繍、薬草、伝統食…伝えることが山ほどある …… 北海道 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】カメ瓶エブリボディ 遊び心で酒ゴコロ …… 北海道 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】でんぷんと発芽小麦(もやし)でつくるスッキリ味の北のどぶろく …… 北海道 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】竈変われど、どんべ好きは変わらず …… 青森県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】鍋を囲んでの濁酒は、燗でよしひやでよし極楽極楽 …… 青森県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】向う三軒両隣りドブ自慢の集まれり …… 岩手県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】二〇年かけて頭痛の原因イースト臭をとり除いたぞ …… 宮城県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】開拓五十五年、生命を支えてくれたキビで酒をつくる …… 宮城県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】ハウスの中で湯あがりに一盃とは極楽極楽 …… 秋田県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】山を駈ける婆様、御年九十三歳 …… 秋田県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】毎夕一杯の水割りで疲れ知らずの日々 …… 山形県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】百姓こそ天職。栽培から機械改良から…楽しみの尽きることがない …… 福島県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】毎日一合半欠かさず飲む。一回の仕込み五升。年間で二〇回はつくります …… 栃木県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】入植して五十余年、楽しみは、これからだ …… 栃木県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】水の力か、米の力か、夏を越した濁酒旨し …… 群馬県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】工夫ひとつでいくらでも面白く暮らせる百姓こそ天職 …… 群馬県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】センセイ、陶芸家、百姓プラス自家醸造家 …… 埼玉県 絵・貝原 浩

発芽玄米の糖化力を利用する …… 穂田波男

【図解どぶろく宝典】蔵人が愉しみ、つくる、呑む中世の酒菩提もと仕込み 千葉県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】惚れた亭主のためなら、飲めない酒でもつくってしまう …… 新潟県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】三日かけてしぼった三段仕込みの酒は類い希な澄み酒だ …… 新潟県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】菓子づくりの仕事場は酒づくりの条件がそろっている …… 岐阜県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】森の奥では御神酒片手に山の神と交信中 …… 奈良県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】南の島のミキ求め神も頻繁まかりこす …… 奄美大島 絵・貝原 浩

田植え、行事、祭り、どぶろく 日本の食生活全集より

田植えには、飲み放題の焼酎と五回の食事(宮城県小野田町)/山仕事と食事(宮城県小野田町)/にしん、納豆、酒っこが働く力に(秋田県大館市)/行事につきもののどぶろく(秋田県田沢湖町)/種おろし、田起こしと、忙しさが進む(長野県堀金村)/伝統ある白川のどぶろく祭り(岐阜県白川村)/麦の甘酒、どぶ酒(香川県塩江町)/宇賀神社のどぶろく祭り(香川県豊中町)/田植えは二〇人にごちそうを出す(宮崎県西米良村)

飲むほどに健康 どぶろくは生命に満ちあふれた酒 …… 穂積忠彦

プロが教える どぶろくの三段仕込み 新屋楽山

酢づくりに挑戦 …… 編集部

麦麹でつくる マッコルリを楽しもう …… 鄭 大聲

絶品 どぶろく料理 …… 藤田秀司

Part 2

ワイン、果実酒を楽しむ

【図解どぶろく宝典】ワイン変じての酢の評判上々 …… 長野県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】御自慢のブルーベリーはいうに及ばず、キウイ、柿、イチゴ、リンゴ、果ては松葉まで酒にして楽しんでいる …… 長野県 絵・貝原 浩

【図解どぶろく宝典】ぶどうの絞りカスから蒸留してつくる酒バガッソ …… ポルトガル 絵・貝原 浩

ぶどうはワインになるために生まれた …… 穂積忠彦

美味なるワインができる 山ぶどうの栽培 …… 永田勝也

Part 3

手造りビールは美味

【図解どぶろく宝典】こだわる以上はトコトンきわめねば気がすまないビールづくり …… 長野県 絵・貝原 浩

町の小さな地ビール醸造所麦雑穀工房マイクロブルワリー …… 馬場 勇

笹野流 濁りビールのつくり方 …… 笹野好太郎

図解 麦芽づくり・水あめづくり …… 編集部

地ビール製造の基礎知識 …… 高橋定孝

あっちの話こっちの話
 どぶろくのサイダー割り/麹があれば、みりんづくりは簡単

Part 4

蒸留酒に挑戦

【図解どぶろく宝典】大忙しの秋。取り入れの仕上げはプラムからつくる七〇度の酒だ …… ポーランド 絵・貝原 浩

米、芋、そば、黒糖で 趣味の焼酎づくり …… 高千穂太郎

焼酎づくりの原理 …… 蟹江松雄

Part 5

家庭でできる麹づくり

衣装ケースや段ボールで 極上の麹をつくる …… 永田勝也

失敗しない麹づくり …… 石野十郎

泡盛黒麹で黒酢をつくる …… 永田勝也

中古冷蔵庫で麹製造器ができる …… 角田利夫

簡易こうじ発酵器 …… 中山浪子/益田清子

付録 材料の入手先

編集後記

■いろんな原料

(うるち米はほとんどの酒に利用されているので,ここではうるち米以外の原料を収録しました)

米ぬか/発芽玄米/発芽小麦/パン/リンゴ(濁りシードル)/リンゴ(スパークリング・シードル)/蜂蜜/牛乳/野生ブドウ・山ブドウ/そば/黒糖/小麦(マッコルリ)/キビ・モロコシ/ひえ/じゃがいもデンプン/もち米/サツマイモ(芋焼酎)/サツマイモ(奄美のミキ)

■麹・酵母・種酢のつくり方

米麹/麦麹/酵母/酒酵母づくり/市販の酒粕でもとをつくる/種酢つくり/種麹の入手

■仕込み方のいろいろ

土着菌/花もと・淡もと/花もぐら(ホップ)のもと/ササもと/くされもと/もと/三段仕込み/菩提もと/四季醸造法/浮蟻酒(プイジュ)/七日酒

■道具のいろいろ

米ぬかどぶろく攪拌機/四季醸造装置/蒸留装置/ベビーバス利用の保温器/麹製造器(中古冷蔵庫利用)/簡易こうじ発酵器

■かこみ

どぶろく特区/プロから麹づくりにアドバイス

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編集後記

◆明治時代の「殖産興業」以来、日本社会では産業が重んじられてきた。もちろんそれは大切なことであるが、逆に弊害もある。自家醸造の禁止などは、その最たるものである。

 現在、どぶろくづくりは農村からほとんど消え失せている。しかしそれは、法律で取り締まったからではなく、「酒税法が密造の名のもとに躍起になって抹殺しようとしてもできなかったことを、農業基本法がいともあっさりとやってのけた(穂積忠彦氏)」からだ。すなわち、庶民の購買力が上がって、自由に酒を買えるようになったからだ。

 今、自家醸造をめぐって直接投票をすれば、自由化に反対する人などほとんどいないであろう。じっさい、前田俊彦氏のどぶろく裁判以来、自家醸造の罪でつかまったという話は聞いたことがなく、堂々と手造りキットやレシピが販売されている。誰もが時代にそぐわないとわかっているにもかかわらず、政治家はごく少数の趣味家の機嫌をとるよりも、酒造メーカーからの献金が減ることを嫌い、役人は天下り先が減ることを恐れる。マスコミにとって、メーカーは大スポンサーである。国税も、庶民のささやかな楽しみを摘発して、藪から蛇を追い出すようなことはしない。彼らはみな、「灰色」にしておくほうが得なのだ。

 ちょうど、日本では軍隊は違憲なのに、世界屈指の軍事力を有する自衛隊が存在するように、自家醸造は違法だが、実質的にはすでに「自由」なのである。(本田進一郎)

◆かつて『現代農業』誌でどぶろくの取材に走り回っていた頃、それぞれの土地のどぶろくに巡り会える幸せはもちろんだが、それにもましてもっと楽しみなことがあった。それは、名人たちは実に美しい動きでどぶろくを仕込み、しぼった酒粕をみごとな料理に変身させる技。父ちゃんはいい表情でそのおいしさを自慢し、そばに座った母ちゃんには優しい笑顔があった。酒税法という無粋な法律の網のもとで、そんな暮らしをあたりまえのように続けている各地のどぶろく名人たちはとても魅力的だった。

 一九八一年(昭和五十六年)に故前田俊彦氏による『ドブロクをつくろう』、翌八二年には笹野好太郎(実は穂積忠彦)氏による『趣味の酒つくり』、その後『現代農業』では特集を含めてドブロクを追求し続け、八六年一月号からは、二〇年にわたる長期連載となった貝原浩氏の絵による「ドブロク宝典」が始まった。

 本書はこれまでの『現代農業』の記事を中心に、暮らしのなかのどぶろくを丹念に記録した『聞き書 日本の食生活全集』、さらには農村での加工展開を願う「食品加工総覧」などから選りすぐった記事を集大成した。数多くのどぶろくにかかわる単行本もあります。どうぞこの機会に手に取ってみてください。

 今年の冬、皆様のご家庭にどぶろくと家族の笑顔が溢れるように。(西森信博)

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