●巻頭特集 発芽バッチリ 病気に強くなる 至極の育苗培土
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そろそろ育苗の季節。
最近は苗を買うという人も増えているが、
農家ならやっぱり育苗技術を身につけたい。
育苗でとても重要なのが培土だ。
市販培土の選び方や使いこなし術、
病気に強くなる培土、手作り培土まで、
至極を追究!「自家配合で至極の育苗培土」より
タネの性格を考えて、発芽しやすいように育苗培土を自家配合する筆者 タネの性格に合わせて培土を作る
三重・青木恒男
育苗培土を自作すれば、機能性の向上もねらえるし、市販品よりも安くできる。直売所名人の青木恒男さんは、作物ごとに適した培土を自作している。まずはそのやり方を振り返ってみたい。
2013年3月号、DVD「直売所名人が教える野菜づくりのコツと裏ワザ」より
砂、有機物、粘土の3種類を配合
タネは発芽適温、水、酸素の3つが揃えば間違いなく生えるはずなのですが、実際には培土中の充分な水分と充分な酸素というのは相反する条件でもあります。播種・育苗用の培土は多くのメーカーから市販されていますが、どうも「帯に短しタスキに長し」で多品目の野菜に万能のものは見つかりません。私はコスト面と野菜それぞれの発芽に適した条件を考えて、培土は自分で作るようにしています。
基本になる資材は、排水性と通気性を受け持つ「砂」と、保水性を受け持つ繊維質の「有機物」の2つ。砂は裏山から出る山砂、有機物はヤシガラ堆肥(ココナツピート)を容量比1:1〜1:2の割合で混合し、必要に応じて肥料を保持する役目の「粘土質多めの市販培土」を混ぜて使います。
インゲンの播種培土は肥料気のない山砂主体。肥料が入っていると腐ってしまう 有機物としては、ピートモスやバーク堆肥も使えます。ただし、ピートモスにはpHの低いものや過湿になりやすいものがあったり、バーク堆肥には分解用のチッソや海水に由来するECの高いものがあったりするので、注意が必要です。
次ページの図はそれぞれのタネの性格に適した培土の混合割合をイメージ化したものです。
トウモロコシやマメ科
排水性がよく肥料分を含まない砂が主
トウモロコシやマメ科のタネは大きくて、定植まで苗が生長するために必要な栄養分はデンプンや脂肪の形で充分に蓄えています。培土に下手にチッソや過剰な水分があると邪魔、かえってカビや腐敗の原因になります。したがって排水性がよくて肥料分を含まない砂と、通気性と保水性がある有機物だけの混合でOK。特に肥料気を嫌うマメ科は砂のみに近い培土にしています。
なお、砂と有機物の混合は他の野菜も含め覆土にも使います。
ウリ科、ナス科、オクラなど
重くて肥料・水分を保つ粘土が主
ウリ科やナス科の野菜、オクラなどのタネは、比較的大きくて硬い種皮に包まれている「嫌光性種子」のグループです。うまくこの種皮を脱ぎ捨てて発芽させるために「重し」役の粘土の混合比率を多くし、やや深めに播種します。
特にカボチャやスイカなど平たく大きなタネは、トウモロコシのようにとがっているほうを下にして縦に播くと、帽子が脱げず発芽率が悪くなるので「平播き」します。また、これらの作物は共通して育苗期間が長いので、長期間安定して肥料と水分を保持してくれる粘土分が多く必要です。
レタスなどの好光性種子
光を通しやすい有機物が主
レタスなどの光が好きな野菜は、粘土とは対極にある軽くて光を通しやすい有機物の混合比率を多くし、浅めに播種します。
ハクサイなどのアブラナ科
粘土、砂、有機物を等分に
ハクサイ、キャベツ、ブロッコリーなどアブラナ科野菜のタネは、通気性、保水性ともによくないと発芽率が低いという共通項を持っています。また、丸くて小さなタネは子葉を展開させるまでの間の養分しか持っていないので、本葉3枚程度の定植苗になるまでの肥料分を持った培土が必要です。これらの野菜の播種には粘土、砂、有機物それぞれを等分に含んだ培土を使います。
青木さんの培土使いこなしの裏ワザ
培土を入れたら「トレイをトントン」
培土を入れたら、鎮圧代わりにセルトレイを地面や箱などの上でトントンして土を落ち着かせる。土が沈み込むセル穴がいくつか出てくるので、そこに土を入れて均す。これをしないでかん水すると、乾くセルはどんどん乾き、湿るセルはいつまでも湿るので発芽ムラの原因になる。
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穴あけは小指で
小指で穴をあけ、人差し指と親指を使ってタネをひねりながら落としていく。人差し指と親指はいつも乾いた状態を保てるので播きやすい。
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DVD
詳しくはDVD「直売所名人が教える 野菜づくりのコツと裏ワザ」(全2巻 1万6200円)をご覧ください。ご注文は巻末ハガキか電話(TEL03-3585-1146)で
(三重県松阪市)
この記事の掲載号『現代農業 2017年3月号』特集:至極の育苗培土
自家配合で至極の育苗培土/モミガラで軽い培土/病気に強くなる培土/酸化鉄コーティング直播/温度管理にメリハリをつけろ/せん定を教えるノウハウ/農家の税金対策2017 ほか。 [本を詳しく見る]『青木流 野菜のシンプル栽培 ムダを省いて手取りが増える』 所得10倍のブロッコリー・カリフラワー、7倍のキャベツ・ハクサイ、2倍のスイートコーンなど、 小さな経営で手取りを増やす着眼点、発想転換で稼ぐ野菜作り。 [本を詳しく見る]
『DVD 野菜づくりのコツと裏ワザ1 直売所農法コツのコツ編』 所得10倍のブロッコリー・カリフラワー、7倍のキャベツ・ハクサイ、2倍のスイートコーンなど、 小さな経営で手取りを増やす着眼点、発想転換で稼ぐ野菜作り。 [本を詳しく見る]
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