「プール育苗 水管理のポイント」コーナーより
底上げした場所に実験用の苗を載せる澤村さん 水面の高さで草丈はどれだけ変わるか?
岩手県滝沢市・澤村勉さん
真っ平らな床で底面給水
「プール育苗の床のデコボコは、あまり神経質にならなくていい」という福島の藤田忠内さん(131ページ)に対して、岩手の澤村勉さんは高低差5mm以内にビシッと均平を整える(前号267ページ)。おかげで、平置き出芽が終わって反射シートを外したあとも、手かん水はなし。真っ平らなプールの底から2cmの高さまで水を入れて、底面給水していくのだ。それもこれも神経を使ってキッチリと床の均平をとったからなせるワザだが、澤村さんにとっては「このほうがあとあとラク」「下手な手かん水で出ていた生育ムラがなくなった」のだとか。その後1・5葉期になると、箱上およそ1〜2cmまで水位を上げて、立枯病などを予防する。
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とはいえ、藤田さんのようにもっと低い水位にしたら、苗はどうなるだろう? ということで、澤村さんに協力してもらって実験を試みた。結果は上の写真のとおり。底面給水のほうが、腰も低い苗に仕上がった。「こっちのほうが田植えまで余裕が持てそう」「(2017年は)病気の心配がなくなった時点で、水位を下げてイタズラしてみようかな」。あれこれ考え始めた澤村さんであった。
実験 プールの水位を変えてみると……
1.5葉で、底面給水から箱上1Bの水位に切り替える。このとき1箱だけ、底が水に浸かるくらい(底面給水)の高さに底上げしてもらった 草丈に明らかな差がついた。昨年は育苗後半に真夏日が続いたせいでプールの水温が上昇したため、水位の高いほうの草丈が伸びた(根張りはどちらも良好) 2016年の育苗管理
苗箱数:190箱、播種量:催芽モミ120g/箱
AとBの苗を5本ずつ抜き取って平均をとった数字。1葉の葉鞘高(腰の高さ)の差はほとんどないが、2葉、3葉の葉鞘高はBのほうが約0.7B低い。実験開始後の生育で差がついた格好だ
この記事の掲載号『現代農業 2017年4月号』特集:春の地温アップ大作戦
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